夢と生きる バンドマンの社会学

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  • 岩波書店 (2023年12月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (334ページ) / ISBN・EAN: 9784000254342

作品紹介・あらすじ

人生を賭ける夢に出会えたことの幸福と困難――。いつの時代にも少数派ながら「卒業したら就職する」という、普通とされる生き方を選ばない者がいる。夢は諦めに終わるのか、形を変えて続くのか? 数年にわたる二十代から三十代のバンドマンへの貴重なインタビュー調査をもとに現代の「夢追い」のリアルな実態を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 仲間と良い音楽を作るため時には過酷なスケジュールとギリギリの生計の中で生きるバンドマンの言葉を収集しライフスタイルを分析した本。バンド活動の最中でどのような葛藤や心境の変化が現れるのか。非常に興味深い研究でした。夢とは何かを考える人におすすめ。

    夢を追うきっかけ、ライフイベント、周囲の声、夢を諦めるタイミング、節目ごとに読む事ができます。

    バンドマンの多くが活動のためフリーターとして生活をする。やがて生活に限界が来るメンバー、結婚のためバンドを離れる話、音楽事務所へ所属を決めたものの生活への不安、自分たちの音楽が作れないという悩み、など知らない話が多く楽しめました。BCリーグなど下部組織のスポーツ夢追いも読みたい。

  • テーマに興味があったので読んだが、かなり精密にバンドマンを分析している。しかし、大前提で人間を、それも若者で、かつバンドマンという芸術分野を志す者たちに一貫性はなく、流れの中に常にいるので、推し量れないのでは?と思った。真摯な取材と分析には脱帽。ただ、そういうことじゃねえんだよと思ってしまった。

  • 私自身がバンド好きであり、バンドマンの生き方、特にバンドで食うことを決意した者と、道半ばで諦めた者のことが気になり、本書を手に取った。

    結論として述べられている、「世間が、若い頃は「夢を追いなさい」と言っているのに、実際に夢を追う若者を世間は支えてくれない」との評は、なるほどと思った。
    若者の人生の選択肢が増えた現代だからこそ、その選択をすることによる将来への影響(リスク)もきちんと理解したうえで選択することが大事であり、大人がこのことを若者にしっかり伝えることが大人の責任であると思った。
    ここでいう選択肢とは、バンドに限らず、音楽、美術、スポーツ、文学もそうだし、それこそブルーカラーやホワイトカラーにも当てはまる。

    書評としては、上記の結論を、著者のフィールドワークを通じて述べている点は価値があると思う。一方、結論以前の各章の分析の深度が浅いように感じられたのと、全体的な読みにくさ(引用元の表示、インタビューをする著者の言葉遣い)が目についた。

  • 若い時にライブハウスによく行っていたが、あの時見ていたバンドのメンバーの顔を思い出し切なくなった

    見る側も、年齢を重ねるごとに見ることを続けていられなくなる あの時は楽しかったし後悔はないけどね

  • 大きなお世話である。
    社会学、民俗誌(エスノグラフィー)に対しては対象を観察する失礼さ卑しさがあるなと常々思っているが、この著書に対しては読了後に大きなお世話だ!と感じた。

    バンドマンの何年かを縦断的参与観察をしバンドマンが夢を追い、諦めるまでを段階的に研究するのが目的だそうでバンドマンの実態を知るのとはまた別物。

    一括りにバンドマンといっても多岐に渡る音楽ジャンルがあり、それによっても文化も特徴は変わってくる。

    例えばガールズバンドであれば一般的なバンドの事情に加えオジサン相手にしなければいけない気苦労や自身の進退を考えるのが男性よりも早かったりする。(これについては著者もバンドマンのジェンダーについても検討したいと終章で書いてあった。)

    V系バンドであればホストのような営業方法で客を引っ張ったりという場合も存在する。

    他にも制作費、機材費などの名目でバンドマンに借金をさせ無給で働かせて拘束する事務所の存在など。

    そういった柵から抜ける事で今後のバンドの活動スタイルを自分たちのやりたい方向に持っていけるか重要な鍵となる。

    著書の中ではサラッと精神的に病んでライブ当日に飛んでしまうバンドマンもいるようだと書かれていたが、バンドマン自身の元々の感性の鋭さに加え集客や金銭の問題がシビアに重なり、内部・外部からのプレッシャーから自◎を選択するくらい追い詰められることも少なくはない。
    また地下バンド界隈では人格障害の様な性格をしている者も多くいるので、傍目には前向きで健気にやっているように見えても裏ではかなり歪んだ考えを持ち、バンド内で歪みを撒き散らすなんて事も多々ある。


    上手くやっているバンドは経営的な思考と行動が必要となりマルチタスクが可能でコミュニケーション能力の高い人が多い。
    上手くいってないバンドはメンバーの一部にコミュニケーション・連絡伝達が非常に難しい人がいる確率が多い。
    バンドでの活動の密度が高くなるになるにつれ、そういった傾向のある人間が活動を停滞させ、やがては破綻させていく。
    また、こういった人間がいるバンドはいくらやる気や情熱を前面に出していても空回りし破綻する。
    冷静な頭と先を見通す力がバンド継続には必要となってくる。

    バンド運営的な思考がなく、場数を踏めば曲を作れば売れると思っている人たちを単に「夢追い」として括って良い者なのかどうか甚だ疑問である。

    バンドで食べていくのは現実的かつ具体的な行動が必要であって、バンドを継続し定期的にステージに立つ事や創作を続けていく事とでは大きく違う。(こちらもバンドとして成功した人のことも検討したいと著者は終章で書いていた。)

    よって、そこをひとまとめに「夢追いの人」と見てしまうところが、バンド活動を一つの青春あるいは若いうちの情熱や一瞬の煌めきのような限定的なものとしてしまうような書き方が非常に大きなお世話なのである。

  • ふむ

  • 音楽を生活の中心に据えて、練習時間が欲しくて転職したりする人が多いなと感じて読んでみた。
    よく考えると、サッカーや野球などのスポーツ、イラスト制作や執筆なども同じだと思えた。

    やりがい、お金、余暇の考え方ははその時の状況によって変わるし、やりたいことも飽きてしまうこともあるし、続けられるかという不安に苛まれることもある。やりたいことよりも、裁量の大きさなどがやりがいにつながることもあるし。
    ただ、職種と業種のどちらかは興味のあるものがいいと感じる。

    バンドマンから広がってしまったが、働き方などいろいろと考えさせられてしまった。

  • ロックバンドとは全くの無縁であった社会学者である著者が、若者の”夢追い”という営為を理解するために、ロックバンドで自身の夢を追っている/追っていた数十人にインタビューをしながら記された論文がベースとなった研究書。

    私自身も若干のインターバルはあれど、18歳からもう20年以上、ロックバンドでの活動を続けており、あまりにも対象との距離が近すぎることから、本書の内容を客観的に評するのが率直に難しい。

    それでも、個人的に感銘を受けたのは「なぜバンドは音楽性の違いで解散をするのか?」という点への考察である。

    もちろん、音楽性の違い、というのが単なる表面的なジャーゴンに過ぎず、その実態は千差万別である・・・というのは言わずもがなであるものの、本書の指摘は「メンバーの個々人が描く”こうなりたいという自身の姿”と、”バンドの将来像”に乖離が生まれた瞬間、それが”音楽性の違い”という理由での解散に結びつく」というものである。

    バンドというのは数名の生身の人間から構成される集団であり、個々人レベルでの理想的な自身の将来像が全員綺麗に一致するということはあり得ない。例えば、ひたすらに売れたいという思いを持つメンバーもいれば、ミュージシャンとして自身の技量を高めたいというメンバーがいたりする。それでも、バンド自身の将来像が、各人の理想の将来像の実現に部分的にでも貢献できると信じられるのであればバンドは続いていくものである。しかし、いったんそこに綻びが出てしまうと、バンドとしての将来像に対して自身をコミットさせることは極めて難しくなり、それが解散につながってゆく。

    そういう点で、バンドという生身の存在を改めて考えさせてくれた一冊であった。

  • 夢追いの社会学に向けて:若者文化と進路形成 夢追いの戦後史:書由来の夢を跡付ける 夢追いor安定 現代の夢追いの特徴 来歴と条件:適応ー離脱モデル フリーターか正社員か:正社員バンドマン 夢の中身と語り方:夢の変化・背景 夢の調整と破綻:集団で夢を追う方法 批判と抵抗:標準的ライフコース 反動的に維持 準拠集団 挫折か納得か:身体的・精神的問題 将来への不安 夢追いの先へ 夢追いバンドマンのライフヒストリ:選択から維持へ 夢追いの幕引き 夢追いからみる現代社会:4領域モデル 「正しく生きる」とは何か

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