我、涙してうずくまり

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 62
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000257794

作品紹介・あらすじ

存在の悲しみに膝を屈し孤絶と諦念に生きる中年の「私」。その静かすぎる日常に不思議な裂け目となって襲いかかるさまざまな死。死を生きるかのような「私」と死してなお響く彼らの声。生者と死者の交錯の果てに待ち受けていた奇跡は「私」を再生へと導くか-。独自の小説世界を疾走する作家が満を持して放つ書き下ろし中篇連作。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公の「存在の悲しみに膝を屈し孤独と諦念に生きる中年の『私』」(表紙裏の本紹介文より)が、延々と独白を続ける。思考の過程をいちいち言葉にして吐き出している。これが饒舌だわくどいわ大げさだわ。最初は息が詰まるって思ったけど、これが不思議と重くなく、むしろ軽い。軽妙な文章だった。

    語弊があるかもしれないけれど、四十男の「私」がとにかく滑稽。おかしくて愛おしい。どうせ俺なんか、とひねくれ、凹み、かと思えば「!」と何かを思いつき、ワクワクしはじめ、つまづいて「ぬおー!」って怒ってまた凹む…を4章にわたり繰り返す。各章とも不思議と最後は肯定的な考えにたどり着き、ラストは…。途中、御本人はすんごい悩んでいるのに、おかしくて、くすくす笑ってしまった。最終章はトトロ出てくるかと思った。

    その生い立ちには同情するけれども、この人むしろハッピーなのでは…?作者の意図と違ったら大変失礼だけど、人生って喜劇なのかもなーと思う。おかしくも愛おしいもの。大上段に振りかぶって「人生とはかくある!」と言われるより「何この人ちょっとウケるんですけど!でもなんか一生懸命だな…」って方が真実味がある気がする。

  • 新緑、森、川の流れ。とりまく自然の美しさに心動かされながら、しかしまた自我にとらわれ、心は揺れ動き続ける。そして出会う様々な死。心は千々に乱れ、希望と絶望を循環し続ける。4つの中編はそれぞれに詩的で美しく、なおかつ読みやすい。著者の言葉は冴え渡り、文学を堪能できる。ただ、322頁以降の展開は必要だったのか。そこに少しひっかかっている。

  • すばらしい。同時代に読むことができてよかった。

  • 詩篇のような・・・、吟遊詩人を思わせるような・・・、膨大な数の形容がひとつの対象を埋もれさせながら、的確に表出してくる・・・・。
    なんて・・・・おもしろい。
    なんと・・・・魅力的な小説だろう。
    大江を・・・三島を・・・ふと思い起こす。
    「鳩は死せり」を耐え忍べば・・・、一気に読み通すこともでき、読み通さなければ収まらない気持ちにさせてくれる。

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著者プロフィール

1943年、長野県飯山市に生れる。国立仙台電波高等学校(現在の国立仙台電波工業高等専門学校の前身)卒業後、東京の商社に勤務。66年『夏の流れ』で第23回文學界新人賞を受賞。同年、同作で芥川賞を受賞し作家活動に入る。68年に郷里の長野県に移住後、文壇とは一線を画した独自の創作活動を続ける。また、趣味で始めた作庭を自らの手による写真と文で構成した独自の表現世界も展開している。近年の作品に長編小説『我ら亡きあとに津波よ来たれ』(上・下)。『夢の夜から口笛の朝まで』『おはぐろとんぼ夜話』(全3巻)、エッセイ『人生なんてくそくらえ』、『生きることは闘うことだ』などがある。

「2020年 『ラウンド・ミッドナイト 風の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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