「解説」する文学

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 41
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258241

作品紹介・あらすじ

作家の実人生とその時代精神とが交錯、反響し、ひとつになる場所で、文学は生まれる-そのようなものとして読み解くとき、作家も作品もこれまでとは違った相貌を現わしはじめ、その読み解き自身もまた、歴史と現在とを切り結ぶひとつの文学となる。四半世紀を越える時のなかで、著者が執筆した百冊以上の文庫解説のなかから、二十四編を精選して贈る「文学」への誘い。

感想・レビュー・書評

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  •  関川夏央氏は当代きっての名文家の一人であり、私も若いころ、氏の著作をくり返し読み込んだ。初期のエッセイ集『水のように笑う』や『貧民夜想会』あたりの文章は、いま読み返してもカッコイイ。

     ただ、氏の著述活動が「明治もの」中心に変わってからは、「私とは無縁の世界に行ってしまった」という気がして、読まなくなった。氏の著作を読むのは久々である。

     本書は、これまで関川氏が書いた100を超える文庫解説の中から、24編を精選したもの。前半に「明治もの」と司馬遼太郎関連の解説が集められ、後半は現代作家中心の解説群となっている。

     さすがの名文揃い。そして、それぞれ一作についての解説であると同時に、的確な作家論にもなっている。

     たとえば、山田風太郎、宮部みゆき、藤沢周平、須賀敦子、山田太一らの作品に寄せた解説の、なんと見事なこと。それぞれ、短い紙数の中でその作家の「核」が鮮やかな一閃で切り取られているのだ。

     圧巻は、文庫版で全10巻に及ぶ『司馬遼太郎対話選集』の各巻解説として書かれた「司馬遼太郎と戦後知識人群像」。これだけで150ページに及ぶ長大な解説で、もう少しふくらませば優に一冊の本になり得る内容。

     国民作家・司馬遼太郎についての評論はすでに汗牛充棟の観があるが、ここで関川氏が行った試みは他に類を見ないものだ。司馬が行った対談の歴史から彼の作家像を浮き彫りにするという、かつてない角度からのアプローチなのである。

     対談相手の人間像や業績についても過不足ない解説・素描がなされ、司馬を取り囲んでいた「戦後知識人群像」が鮮やかに浮かび上がる。そして、彼らとかわした対談の言葉を光源に、関川氏は司馬遼太郎という作家の「核」に肉薄していく。

     文庫解説という、「ただのヨイショ」に陥りがちな特殊な舞台でも、その気になればこれほどの「作品」が作れるのだ。

  • 本来作品の位置づけを為すべきはずの解説が駄文化・感想文化することを憂い、本道を目指して書いてきたという解説の数々。
    これは解説の域を超えるのではと思うのは間違いで、昨今の礼賛だけのような解説が誤っているのだろう。
    元になる作品を読んでいないものがあり、この解説から作品に誘われたくなる。まさに著者、編者の思う壺か。だが、それがいい。

  • 私は本を読むとき、後ろの方、つまり解説やあとがきから読むことが多いです。
    最近単行本を本屋で見ていると(もちろん後ろの方から捲る→冒頭の文をみる)著者のあとがきがない本が多くて、寂しいな。最後のページを捲ったら奥付、なんて・・
    関川さんの解説は、本体よりも文学らしい、と言われているくらい切り口の鋭いもの揃い。
    司馬遼太郎の章は、圧巻。

  • 本を一冊読み終えたときのたのしみが、最後の「解説」や「あとがき」であるので、しかもそれが関川氏のものであるならば、と読み始めた。
    が、…やはり、巻末のそれを読む愉しさは読み終えたときの高揚感があり、この気持ちを誰かと分かち合いたいと願っているからこそなのだった。

    ここに「解説」された本は私はどれも読んだことがなく、それゆえ読み進めるのはなかなかに時間を要した…が、放り出すこともなかった。なぜなら、読んだことのない本なのに、それぞれの「解説」がやっぱり面白かったからである。これは本家を読まねばなるまい。
    司馬遼太郎の一章はひとつの論文となっている。すごかった。

  • 関川夏央さんが
    「解説」を書いてきた
    文庫は
    あらためて
    信頼できるんだ

    強く思う

    この本に紹介されている
    未読の「文庫」ならず
    既読の「文庫」も
    今一度
    紐解こう!
    と 強く思った

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