検証 官邸のイラク戦争――元防衛官僚による批判と自省

著者 : 柳澤協二
  • 岩波書店 (2013年3月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258838

作品紹介・あらすじ

開戦から10年、首相官邸で自衛隊イラク派遣の実務責任者を務めた著者が、アメリカの武力行使を支持した政府判断、自衛隊派遣のプロセスを正面から検証する。深い自省を込めて忌憚なき批判を行い、現在に至るまで安全保障政策の拠り所とされている「日米同盟」を、根幹から問う。

検証 官邸のイラク戦争――元防衛官僚による批判と自省の感想・レビュー・書評

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  • 「ちょっと~、イラクが大量破壊兵器を隠してるんですけど~。これ
    は懲らしめなきゃいけないと思うの~」

    アメリカがこんなことを言って2003年におっぱじめたイラク戦争である。
    アメリカの尻馬に乗って、その尻を叩いたのはイギリス。しかし、イギ
    リスはイラク戦争から14年の年月が経ってからだったが、この戦争の
    検証をした。

    日本の時の首相・小泉純一郎はいち早くアメリカ支持を打ち出した。
    「アメリカ様がそうおっしゃるのなら、その通りでございます」。太鼓持ち
    か、我が国は。

    結局、イラクが大量破壊兵器を保有しているなんてのはガセだった。
    でも、イラク特別措置法まで作って自衛隊を派遣したのに日本はこの
    戦争の検証も総括もしていない。当事者であるアメリカは検証してる
    はずなんだが。

    していないどころか、2014年の国会答弁で安倍晋三は「累次にわたる
    国連決議に違反したのはイラクであり、大量破壊兵器がないと証明で
    きるチャンスがあるにも関わらず、それを証明できなかったのはイラク
    であったということは申し上げておきたい」と言っていた。

    政府が検証しないから、イラク戦争当時に首相官邸で自衛隊派遣の
    実務責任者であった元防衛官僚だった著者が検証している。

    内幕話ではない。日本がどのようにしてアメリカを支持し、戦後イラク
    の復興支援の為に自衛隊を派遣するまでのプロセスをつまびらかに
    している。

    「アメリカ様は間違ったことをしない」。それが間違いなんだよね。
    アメリカの武力行使に反対したフランスとはかなり違う。あの時の
    フランスは、間違いは間違いだと正論を展開してイラク戦争に反対
    したもの。

    でも、日本は出来なかった。国際協調よりも日米同盟を優先したから
    だ。そして、もうひとつ大きな問題だったと思うのは日本が独自の情報
    ソースを持っていないことだと思う。

    アメリカからの情報を鵜呑みにして、アメリカのやることにはもろ手を
    上げて賛成するのだもの。

    イラク戦争から10年以上が経過して、独自の情報ソースを持たないと
    いう日本の弱点は解消されたかと言えばそうではない。

    2015年にISに拘束されていた邦人2人の身代金を要求する映像が公開
    された時、日本政府が現地対策本部を置いたのは人質交渉に実績の
    あったトルコではなく、ヨルダンだった。

    これはヨルダン情報部とアメリカのCIAが密接なつながりがあるからに
    他ならない。

    本書では著者がアメリカ追随ではい方法があったのではないかと自省
    を込めて当時の状況を振り返っている。これは元官僚ひとりが負うべき
    ことではないと思う。

    日本の安全保障や外交を担う政治家をはじめとした人たちこそが、きちん
    と検証すべき事柄なのだと思う。でも、きっとしないよね。アメリカ様は正義
    なのだから。

    でも、そのアメリカは裁かれないだけで間違ったことをいっぱいしている
    のだけれどね。

    間違ったことを認めたくないんだろうな。でも、間違いを間違いと認めない
    と成長は望めないんだけどな。

  •  2002年8月~2004年3月まで防衛庁防衛研究所長、2004年4月~2009年7月末まで安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補として、小泉・安倍(第一次)・福田・麻生の4つの内閣で勤務した著者によって、イラク戦争参加にかかる「検証」と反省とが記される。
     私は筆者と必ずしも立場を同じくしないし、思考の道筋には違和感を覚えるところもあった。しかし、“良心的”な国家官僚がどのような発想で、どんな準備をするかはそれなりに理解できたような気がする。

     2015年安保の際、しばしば「法的安定性」という概念が問題となった。いろいろ定義や説明はできるのだろうけれど、国家官僚からすれば、要するに(たとえ屁理屈であっても)理屈がつけられて、それが過去の政府判断とも一応整合し、未来の政府判断にも一定の限定を与えられているかどうか、ということなのだろう。そして、おそらく第一次・第二次安倍政権の特徴(問題性)とはその点にあるのであって、一回的な説明・場当たり的な切り抜けしかできない理屈でこの政権は押し通し、おそらくは自衛隊の被る〈被害〉を根拠に「国民」の情緒に訴えることで、強引な現状変更を目論んでいるのだろう。この政権の「一線を超えた」感覚の淵源は、目的のためなら手段を選ばない、政府の論理的な説明さえ放棄してしまう、という点に求められるのではないか?

     著者は、イラク戦争以降、「日米同盟」という手段が目的に転化してしまっている、と警鐘を鳴らしている。軍事的・政治的・経済的・社会的に対米従属という〈この道しかない〉と思わせたがっているのは、ほんとうにはいったい誰なのだろうか? かれらはそのことによって、いったいどのような利益を獲得することができるのだろうか?

  • 防衛官僚によるイラク戦争の検証。当時はまだ知識とかなくなんだか大きな事が起きている程度の認識だったけど、今これを読んでみて何が問題とされていたのか、何が今までと大きく変わりうる話なのかってのが整理できた。アメリカがなぜイラク戦争を選択したのか、日本はなぜアメリカを支持したのか、その辺を丁寧に追っていて勉強になった。

  • ある程度前提知識がある人向けか。筆者は実際にイラクで活動した自衛隊員には温かい目を、日米の政策には厳しい目を向けている。以下の引用に主張がよく表れている。
    ・イラク戦争の真の政策目的は「アメリカの力の優位性による平和」であり、「敵対しても無駄なことを悟らせる」という政策目標があったということだ。(13頁)
    ・イラクの自衛隊は、日本が国家として達成しなければならない目標や防衛研究所で検討していたような「国益」のためではなく、「アメリカとのお付き合い」のために派遣されていたことになる。(115頁)
    ・歴代政権は、政策論を回避するために内閣法制局見解を利用してきたにすぎない。制度としてできないのではなく、政策としてしないことが日本にとって好ましいかどうか議論が必要であるのに、内閣法制局にすべての「責任」を押し付けていた。政策を論じるなら、なぜそれが必要か、どこで何をしたいのか、日本にその能力があるのか、周辺諸国との関係上得策かどうか、といった現実的な議論をしなければならない。(141頁)
    ・今日に至るまで、日本政府は一貫して日米同盟にのみこだわり続け、自衛隊は武器使用にこだわり続けている。そこには、自衛隊の海外任務によって何を達成したいのかという政治のビジョンもなく、プロである自衛隊の知見も生かされていない。(158頁)
    ・イラク戦争支持を決断した最大の動機が日米同盟の維持であり…安全保障の手段であるべき同盟は、それ自体が目的に転化する。(169頁)・問題は、日本が血を流せばアメリカも流してくれるのか、ということだ。同盟は、慈善事業ではない。それは、血を流すに値する大義・利益があるかどうかによって左右される冷徹な国益の手段である。(175頁)
    ・周辺諸国との自己認知をめぐる対立においては、「アメリカの同盟国である日本」というアイデンティティー以外の自己認知を持たないことが決定的なハンディキャップとなる…日米同盟だけに頼らない戦略的思考軸と、その前提となる日本の国家像が必要な所以である。(179頁)

  • 柳澤協二『検証 官邸のイラク戦争』岩波書店、読了。イラク戦争から十年。自衛隊派遣時、内閣官房副長官補を務めた著者が自衛隊を派遣した政府の判断を検証する。安全保障と国際協調に関して、アメリカ一辺倒という歪さが浮かび上がる。本書は70年に入省した元防衛官僚の手による批判と自省の一冊。

    柳澤協二『検証 官邸のイラク戦争』岩波書店 

    http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-025883-8

     「日本はイラク戦争を通じて『アメリカの真の同盟国』となる一方,それ以外のアイデンティティーを失い,自己認知の漂流を続けている.その漂流ぶりは,今やアメリカ自身にとっても最大のリスク要因」。


    「丁寧な議論を促すためにエンジンブレーキの役割を果たしたい。執筆を通じて、政策決定プロセスの中に身を置いていた人間ならではの役割はこれだ、と気持ちが固まりました」と著者。本と人:『検証 官邸のイラク戦争』 著者・柳澤協二さん:毎日新聞

    http://mainichi.jp/feature/news/20130505ddm015070008000c.html

  • 問題は国や政治指導者は何を間違えたために無駄な戦争をしたのか、ということ。個々の情報や戦術の誤りも重要だが、情報や戦術において完璧な戦争は存在しない。それらの誤りがあっても無駄でない戦争もあり得る。戦争に勝者はいないと言われる。戦争は力による現状の変更である。勝ったとしても多大な被害をもたらし変更した現状を維持するためにより多くを失うからだ。
    テロリストは守るべき国土や国民を持たないため、国土の破壊や国民に被害を与える報復によって抑止することができない。冷戦時代に米ソいずれかの同盟国への攻撃がやがて核の応酬によってエスカレートする相互確証破壊のような国家間の抑止の枠組みが働かない。

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