岩波茂雄――リベラル・ナショナリストの肖像

著者 :
  • 岩波書店
3.22
  • (1)
  • (2)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 37
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000259187

作品紹介・あらすじ

自筆原稿・百名を超える関係者による追憶文・往復書簡など、膨大な伝記関係史料を使って、岩波書店創業者・岩波茂雄のリベラル・ナショナリストとしての生涯と、近代日本の出版文化の基礎を築いた出版人としての事績をたどる。吉田松陰を敬愛し河上肇訳『資本論』を公刊した岩波には、煩悶と愛国が同居していた。ナショナリストにしてリベラリスト、リベラリストにしてアジア主義者というある明治人による広角度の出版活動を、分裂ではなく統合の位相で捉える、書き下ろし評伝。岩波とその時代の風貌が鮮やかに甦る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  岩波書店の創業者岩波茂雄の評伝。1957年刊行の安倍能成『岩波茂雄伝』でも用いられた岩波書店所蔵の史資料に拠っており、新知見と言えるほどのものはない。岩波におけるナショナリズムとリベラリズムの接合を重視し、戦後の「岩波文化」を投影した「左」イメージを払拭して、戦前のナショナリズムの「健全」な「可能性」を発掘しようとしているが、前提となる著者のナショナリズム観や近代思想史理解には疑問も多い。なお蓑田胸喜の岩波攻撃が、まさに現在進行している右翼政治家・メディア・ネット右翼による朝日新聞バッシングと論法・文体が相似しており、それらを相対化するための素材として本書は利用できる価値がある。

  • 岩波書店の創設者の評伝。中村屋のボースを著された著者が評伝を書くのは中村屋の創業者と岩波茂雄の関係からか。リベラルな印象の強い書店であるが、創業者の岩波茂雄は、明治天皇の5か条の御誓文を考えの基本に置きながら、吉田松陰全集とマルクス主義関連の書籍を出版するという、本来なら結びつかないものを結びつける、その思想を「リベラル・ナショナリスト」と呼ぶ。戦争間際に岩波文庫、岩波新書を創刊し、これが戦中の思想的闘いであったことなど、知られざる一面を知り、現在の岩波書店に生きる思想を垣間見た。

  • 岩波書店がご贔屓なので、読んでみました。リベラル・ナショナリストか、なるほど。興味深い本でした。

  • 2014/11/13

  • 岩波書店創業者・岩波茂雄の生涯を、岩波書店が有する豊富な資料、書簡をもとに鮮やかに描いている。マルクスの資本論を発刊し、京大滝川事件では文部省を批判、天皇機関説の美濃部達吉を支援したリベラリストの岩波が、西郷隆盛、吉田松陰を熱愛し、明治天皇宣布の五箇条の御誓文を心酔する愛国者でも在ったことに驚く。幼少から一貫して真摯に悩みぬいて、言論の自由のために、愛する自国のために、友人のために、同胞アジアの人達のために戦ってゆく生き方に感銘を受ける。一方、蓑田胸喜との論争では、論じ争う人たちが意を尽くして論じてもなかなか通じ合えない実態に、常の世の現実であると感じた。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1975年大阪府生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。京都大学人文科学研究所研修員、ハーバード大学南アジア研究所研究員、北海道大学公共政策大学院准教授を経て、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『ナショナリズムと宗教』『インドの時代』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『親鸞と日本主義』『保守と立憲』などがある。『報道ステーション』のコメンテーター等、メディアへの出演も多数。

「2018年 『保守のヒント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島岳志の作品

岩波茂雄――リベラル・ナショナリストの肖像に関連するまとめ

ツイートする