女王ロアーナ、神秘の炎 下

  • 岩波書店 (2018年1月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784000259316

感想・レビュー・書評

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  • エーコの幼年から青年期の読書目録を、エーコな世界の物語に落とし込んで楽しませてくれる。文章は横書きで文字が小さいので、老眼スタートおじさんには読みづらいことこの上ないけど、途中途中に入るカラーの図版(主人公が読んだ本の挿絵や当時のポスターなど)がふんだんに入っていて、それを見るだけでも楽しめるだろう。エーコの新作はもう読むことができないわけで、ファンとして読んでも損はない一冊と言えるでしょう。

  • ※上下巻合わせての感想です。
    読み始めはまさかこんな展開と思わなんだ!記憶喪失の主人公と一緒に"霧"の中を歩み、たどり着くのはああここなの?!と下巻の、最後の20ページで脳内がスパークした。

    付け焼き刃だが、分裂気味な主人公。20世紀の文学の王道のスタイルそのままですね。でも、人はみんな分裂気味かも、あらゆるところであらゆる自分がいるものだから。

    上巻p82
    "僕は記憶を失っただけではなく、偽りの記憶に生きているのかもしれない。グラタローロに指摘されたことだが、ぼくのようなケースでは、とりあえず思い出すと言う感覚をもとうとして、かつて生きたことなどない過去の断片をでっちあげる者もいると言うことだった。"

    脳汁の出る、知的体験ができるしミステリー小説的な面もあり、面白い…。
    読書人生のマイフェイバリット10に入ってしまうかも。

    ----かなりネタバレ----
    読書好きには、ニヤリとする引用(不勉強なので全部はわからん)、第二次大戦のイタリアの田舎の少年としての生々しい記憶、性の目覚め…と思っていたら、子供の言葉で語られる、神と悪についての洞察。
    神と悪について、特に私はどきっとしたので、下記にて引用したい。

    下巻p151-152
    "「<神>は邪悪ということさ。なぜ神父は<神>が善良だと言うのか?<神>が僕らを創ったからだ。ところがこれぞまさに<神>が邪悪である証しだ。<神>は僕らが頭がいたいように邪悪なのではない。<神>は<悪>なんだ。<神>が永遠であることからすれば、おそらく大昔は邪悪じゃなかったのだろう。<神>は、子供が夏に退屈して蝉の羽をむしり取り始めるように邪悪になった。<神>が邪悪だと考えれば、<悪>についての問題がこの上なく明確になる」
    「みんな邪悪ということは、イエスも?」
    「それはちがう!イエスは僕ら人間が善良だと知っている唯一の証だ。包み隠さず言えば、僕はイエスが<神>の子供だという確証がない。とてもひどい父親からなぜ善良な人物が生まれるのか理論立てできない。イエスが本当に存在したことも僕は確信がない。おそらく僕らが考え出したんだろうが、僕らにそんな素晴らしい考えが浮かんだことこそが奇跡だ。あるいはイエスは存在して、存在した全ての人の中で善良だったから、<神>が善良だと僕らに納得させるために、善良だったイエスが、<神>の子と言ったのかも知れない(中略)」"

  • 上下巻纏めて。
    数年前に岩波から出ると言われていたが、いつの間にか新刊案内から消えていて、正直、すっかり忘れていたが、とうとう刊行された。本当に良かった……。
    本文が横書きで、随所に挿入されている図版が美しい。最初、横書きの長文を読むのに戸惑うが、すぐに慣れた。

  • 早く文庫にならないかな(おいおい)

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    エーコの赤裸々な妄想と姿態が晒される衝撃の超・小説.著者初の自伝的語りと展開は幾通りにも読み解きを促す.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b341713.html

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著者プロフィール

1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。
トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。

「2022年 『中世の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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