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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784000259880
感想・レビュー・書評
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浄土真宗大谷派の僧侶であり、仏教の近代化に取り組んだ思想家である近角常観の生涯と、彼の影響を受けた人びとについて論じている本です。
西洋との出会いを経て、伝統的な仏教のありかたを革新する運動が起こり、清沢満之などがその担い手となりました。本書でとりあげられている常観も、そうした思想家の一人ですが、長く忘却されていた清沢と同様に、常観の名前も人びとの記憶から抜け落ちています。しかし著者は、常観が近代日本の思想史ないし精神史において幅広い影響力をおよぼしていると主張し、その影響のひろがりを紹介しています。
前半では常観の生涯が簡潔に解説され、後半では彼の影響を受けた古沢平作、嘉村礒多、宮沢賢治、三木清などがとりあげられます。フロイトのもとで精神分析を学んだ古沢は、常観の議論に依拠して「阿闍世コンプレックス」を提唱しました。古沢の弟子の小此木啓吾によってこの考えが継承されましたが、そのさいに宗教的な背景が切り捨てられたことを著者は指摘しています。
嘉村の私小説である『業苦』や『崖の下』には、「G師」として常観が登場します。彼は自己の罪を自覚する信仰が倫理につながることを説きましたが、嘉村はそうした常観の示す道を離れて、罪の自覚から文学へとつながる道をえらんだと著者は論じています。
三木清は、マルクスの思想から影響を受けつつ、社会哲学への関心を示す一方で、若いころから宗教への関心をいだきつづけており、遺稿「親鸞」を執筆しました。従来の研究では、彼の宗教哲学の位置づけが不明確なままでしたが、著者は彼の親鸞解釈が宗教哲学者の武内義範の『教行信証の哲学』を踏まえたものだということを指摘するとともに、両者が常観の影響のもとにあったと論じています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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