世界文学のフロンティア (2) (世界文学のフロンティア 2)

  • 岩波書店 (1996年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784000261425

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

愛の多様性を探求する本作は、さまざまな視点から「愛のかたち」を描き出します。前作の「旅のはざま」が狭義のテーマに焦点を当てていたのに対し、今回は広義で観念的なアプローチが特徴です。読者は、愛の定義が難...

感想・レビュー・書評

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  • <翻訳文学試食会>で取り上げられたので。

    冒頭では編纂者による「小説における愛」について書かれている。
    こちらは様々な「愛」の小説が収録されているが、わざわざ「愛」を選ぶのだから「出会って結婚して幸せに暮らしました」みたいなものがあるはずがない 笑

    【『波と暮らして』オクタビオ・パス(メキシコ/スペイン語)】
    詳しいことは他の本のレビューは書いているのでここでは割愛。
    波をわがままな女に見立てて、男女の愛の残酷さを書いている。

    【『これは愛じゃない』セルゲイ・ドヴラートフ(旧ソ連/ロシア語)】
    ロシアにいた頃、いつの間にかレーナという女性が妻のようになっていた。あれから20年、ロシアは安泰ではなく、レーナは娘のカーチャを連れて国を出た。自分も同行するべきだったが、国を出てレーナとカーチャに再会したのは何年かあとだ。
    籍をいれる気はないし、愛したこともない。私は20年もレーナに腹を立てているが彼女は冷静すぎる。それが余計に腹立たしい。

    【『幻影』アイザック・バシェヴィス・シンガー(ポーランドのユダヤ人/イディッシュ語)】
    ユダヤ人には「縁談を破談にするより、離婚するほうが罪が軽い」というそうだ。
    ジルカという娘がいた。資産家の息子に見初められて婚約したが、他の女に目が移り破談にされた。ジルカの家族は名誉のために違約金を受け取らなかった。
    その後真面目な神学生と結婚したのだが、二人の間には破談した男の影がまとわりついて初夜を過ごすことすらできなかった。
    破談と離婚を経験したジルカはユダヤ教を捨ててカトリックの尼僧になったのだ。

    うーん、お気の毒…

    【『君の登場人物を貸してくれ』ドゥブラフカ・ウグレシッチ(旧ユーゴスラビア/クロアチア語)】
    私の小説のヒロインを貸してくれって言われたの。まあいっかと思って了解したけれど、彼の小説を読んでびっくりした。こんなのポルノじゃない!
    でも彼といると彼の小説の二人のことが浮かぶようになり、その通りのことをしたの。それなのに彼はエロ書きは辞めるだなんていって。始まる前に終わったみたい・

    【『ねずみ』ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ(ポーランド/ポーランド語)】
    この地域にはフーリガンという兇徒がいた。酒好き豪快乱暴者の人殺し。道ですれ違った相手が気に入らなかったら叩き殺すようなやつ。しかし悪漢ほど地域に人気がある。
    元判事のスコラプコフスキ老人は治安を乱すフーリガンを懲らしめなければ気がすまなかった。ある日罠をかけてフーリガンを捕らえた。ただ殺すだけではダメだ。今までの行いと同等の屈辱を味合わせねば。
    地下室に閉じ込めてフーリガンを痛めつけてみて分かった。なんと彼はねずみが苦手なのだ!スコラプコフスキはフーリガンにねずみをしかけていたぶり続ける、こうして過ぎた年月がなんと十一年!
    ある日脱出したフーリガンは、外に出たが自分をいたぶり続けたねずみがもはや身の一部のようになってしまって…。

    【『野外の一日』ジェイン・ボウルズ(ユダヤ系アメリカ人/英語)】
    娼婦のジュリアとイネスはパトロンのセニョール・ラミレスに誘い出されてピクニックに行く。だがジュリアが転んで怪我をするとラミレスはすぐにその場を離れる。
    いつだってこんな不幸が起きるんだ。

    【『愛1944』『なんてすてき』タデウシュ・ルジェヴィッチ(ポーランド)】
    二篇の詩。
    無防備な愛の詩、恋人と共にいて心が動く詩。

    【『私がイエス様とポーチに座っていると風が吹いてキモノの胸元が開き、イエス様が私の乳房を御覧になった日のこと』グロリア・サワイ(カナダ人。おそらく夫が日系人らしい)】
    <翻訳文学試食会>のテーマ短編
    https://podcasters.spotify.com/pod/show/honyaku-shishoku

    その日も家事に追われていた。すると野原の向こうからイエス様が歩いてくるのが見えた。神様だってすぐに分かったわ。書かれているそのものだもの。私はキモノを着ていて、イエス様は私の前にいたわ。イエス様は「ステキですね」なんて書き取りテストだったらとてもじゃないけど合格点をもらえないような言葉を使うの。会話に困ったときに風が吹いてキモノも胸元が開き、イエス様は私の乳房をご覧になったのよ。こんなときなんと言えばいいのと思っていると、イエス様は「ステキな胸ですね」なんて言って。だから私は言ってしまったの。昔見て嫌だった乳房とその持ち主のことを。なんということ。せっかく神様に出会ったのに乳房のことを話題にしてまうなんて。
    イエス様を見ると、鳥たちがイエス様に吸い込まれるように見えたわ。すると私も中に浮かんで、イエス様に吸い込まれるような気がしたの。
    これが私がこの年に起きた一番の出来事。

    …新約聖書の挿話だとか欧米作家の小説で「イエス様に会った」テーマはありますよね。神様というのはさり気なく歩いて、でも神様とわかる、というのはキリスト教徒前提なのかな。しかしこの短編ではわざわざやって来てくださったイエス様の言葉は全然冴えないし、そのイエス様に会った自分も変なことを口走っちゃう。
    それならこの「イエス様」は、語り手の知っている男性を象徴として書いたのかな。(全く知らない「自称神様」ではないと思う。)誰かがやってきた。なんだか冴えない会話をした。でもその時間が良かった。

    【『色陽』李昻(中国/標準中国語)】
    題名の色陽は年配の元娼妓の名前で、発音は「サーヤン」だそうだ。

    資産家の王本(ワンペン)に身請けされたけど、長い年月でその資産はもう食い潰していた。今は色陽が小物を作って日銭を稼いでいる。
    王本は毎日夕方に何処かに出かける。ついに爆発した色陽は王本が毎日野良犬に餌を投げてぼんやり過ごすことを言いあてる。
    王本は言われて初めて自分が長い長い年月をただ無駄にしたことを自覚する。気にしなければ無駄に過ごすことこそ送りたい人生だったのに。

    【『愛』ウラジーミル・ソローキン(ロシア)】
    ソローキンに興味を持って『青い脂』を手に取ったが、最初の3行読んで「読むのは辞めて記記憶から消すか、何が何でも読み終えて人生唯一のソローキンにするかどうしよう」と真剣に考えた。私は基本的に自分が手に取った本は最後まで読むのですが、ソローキンは自力で理解できないと分かったんですよ。そこで翻訳者の解説や、ネット検索した紹介文章を頼りながら読み終わった。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4309206018#comment
    それを人生唯一のソローキンにしようと思っていたのだが、短編で再会いたしました。
    想像通り、まったくわけがわからないし気持ち悪いです。しかし短編だとかえってこの分からなさ、気持ち悪さが潔いですね 笑 
    長さは4ページしかありません。最初の1.5ページはフツーの小説っぽいです。突然ワープして(そうとしか言いようがない)え、ここどこ?ぐちゃぐちゃスプラッタなの?これが真の愛なの?
    気持ち悪い描写も訳わからなすぎると想像のしようがないというか、案外楽しいなソローキンの短編。

    【『男たちの街』ベス・ヌジェント(アメリカ)】
    バイセクシャル女性に拾われた女性のレズビアンというかバイセクシャル生活?
    男を求め、でもそれは女の元に戻るために必要だから。
    彼女は母であり、恋人であり、束縛者であり。

    【 『詩としてのセックス』ジャネット・ウィンターソン(イギリス)】
    「ピカソ」と呼ぶ女性画家と、「サッフォー」と呼ぶ女性作家の同性愛生活??
    お互いを人間の関係の全てとして愛し合った。絵のように、ページのように求めあった。今はいない相手。

  • 世界文学のフロンティア第2巻のテーマは「愛のかたち」。1巻の「旅のはざま」は狭義的なテーマに絞られていたのに対し、こちらは広義的で不定形で観念的。愛の定義など不可能であるとばかりに多様な「愛のかたち」を提示してくるアンビバレント。初ソローキンは僅か4ページにして全く理解不能で自分の堅物さを懸念してしまう。狐につままれたような、そういう意味で印象的。オクタビオ・パスの「波と暮らして」、ゴンブロヴィッチ「ねずみ」がとてもよかった。イマジネーションの激流を耽溺。


    【収録作家】オクタビオ・パス、セルゲイ・ドヴラートフ、アイザック・バシェヴィス・シンガー、ドゥブラフカ・ウグレシッチ、ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ、ジェイン・ボウルズ、タデウシュ・ルジェヴィッチ、グロリア・サワイ、李昂、ウラジーミル・ソローキン、ベス・ヌジェント、ジャネット・ウィンターソン

    多様な言語からの翻訳であるのは1巻と同様である。

  • 沼野先生がNHKラジオ講座でやっていたドヴラートフの『これは愛じゃない』も、その本に収録されていたんだっけ。
    後に『わが家の人びと』
    https://booklog.jp/item/1/4915730204
    として刊行される短編連作集の、妻との馴れ初め部分。そして妻が娘を連れて亡命し、ドヴラートフもソ連を追い出される経緯(事実そのものではないと思われる)。
    とにかく、ドヴラートフという作家がとてもおもしろいと感じた作品だった。

    冒頭の『波と暮らして』も印象深い。

  • 2013/05/27-2013/05/31
    星3

    東大駒場図書館KOMEDコーナーにあった本。
    (なぜGENKI BOOKSじゃないのか疑問……。まあ先生が推薦なさったから、だろうけど)

    「愛」というテーマに関しての短編小説(及び、1つだけ詩)を収録した本。
    第一章は編者の一人が書いた説明文で、そこから作品が12編続く。説明文を除いて全て洋物の翻訳なわけだが、その原語がスペイン語、ロシア語、イディッシュ語、クロアチア語、ポーランド語、英語、標準中国語、とさすが「世界文学のフロンティア」と言うだけはある。

    これは僕の好みなのだが、いかにも"純文学"ぶってる中に唐突に生々しい性描写を加えてみたり、あるいは全体的に性描写にしてみたりするのは、僕は好かない。
    だから、この12編のうちのほとんどがそういうものであったことに落胆した。僕にはまだどうも、「何かを表現するための性描写」の必要性が理解できない。

    あと、第一章の内容がこの本の中で一番納得できなかった。仮定というか、推測が多すぎて飲み込めなかった。
    節々はグッときた作品もあったので、少し残念。



    以下目次。
    『愛から出発するために』 沼野充義
    『波と暮らして』 オクタビオ・パス
    『これは愛じゃない』 セルゲイ・ドヴラートフ
    『幻影』 アイザック・バシェヴィス・シンガー
    『君の登場人物を貸してくれ』 ドゥブラフカ・ウグレシッチ
    『ねずみ』 ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ
    『野外の一日』 ジェイン・ボウルズ
    『愛 1944/なんてすてき』 タデウシュ・ルジェヴィッチ
    『私がイエス様とポーチに座っていると風が吹いてキモノの胸元が開き、イエス様が私の乳房を御覧になった日のこと』 グロリア・サワイ
    『色陽』 李昂
    『愛』 ウラジーミル・ソローキン
    『男たちの街』 ベス・ヌジェント
    『詩としてのセックス』 ジャネット・ウィンターソン


    引用したのは『男たちの街』内の一節。
    気に入った作品は『波と暮らして』『これは愛じゃない』の2作。

  • 「これは愛じゃない」がいい。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000132077

  • これは愛じゃない。
    妻を知っている=愛している ではない。

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