世界文学のフロンティア (3) (世界文学のフロンティア 3)

  • 岩波書店 (1997年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784000261432

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

幻想的で美しい作品が集められたこのアンソロジーは、主に旧社会主義国出身の作家たちによるもので、暗い背景の中に潜む夢の欠片を描いています。収録された作品は、現実の厳しさを反映しつつも、内面的な探求を促す...

感想・レビュー・書評

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  • <翻訳文学試食会>で取り上げられた本。
    https://creators.spotify.com/pod/show/honyaku-shishoku/episodes/114-e2v7c0e
    【イスマイル・カダレ(アルバニア語)『厄災を運ぶ男』】
    オスマン・トルコ帝国の皇帝スルタンにより、トルコ帝国の支配下であるギリシャ、アルバニア、キプロス、ルーマニア、セルビア、ブルガリア、ボスニア、マケドニア、モンテネグロ、ポーランド、クリミア、オーストリア、ハンガリーに至るまで、女性にはチャドル(イスラム教徒の女性がつけるヴェール)の着用の勅令を公布した。
    それらの国々にチャドルを運ぶ隊商の体調はトルコ人のハジ・ミレト。膨大なチャドルを行く先々でその土地の執行官に渡すのだ。
    だが最初に立ち寄ったオルマン・ツィフリクの井戸で女たちの姿に驚く。顔を覆っていない女がいるだなんて!目だ!女の目だ!男を怖れない女たち!あの目をチャドルで覆うだなんて!
    旅を続け、チャドルを渡すハジ・ミレトだが、心が落ち込んでゆく。あの目を隠すだなんて。ついイスラムの掟を批判するようなことを口走ってしまう。夜も眠れない。皇帝の勅令を疑うことなんてないのに。自分はチャドルを配るただの配達人だというのに。
    首都に近づくハジ・ミレトは、帝国の命令で逮捕される。容疑は「お前が不安な様子になったという報告を受けて見張っていた。夜はまともに眠れずうなされていたではないか。一体どんな陰謀に加担しているんだ!?」

    監視怖い…(-_-;)
    広大なオスマン帝国にイスラムの習慣を発布して従わせようとする。オスマン帝国そのものである男でも、自分が知らない他の宗教習慣に触れて心が揺らいでしまう。


    その他のお話。
    【ダニロ・キシュ(セルビア語)『使者の百科事典(生涯のすべて)』】
    スウェーデンでは友人に勧められた図書館に行きました。するとそこには、かの「使者の百科事典」が納められていたのです。私は最近亡くなった父の本を手に取りました。
    そこには一人の人間の生涯が記載されているのです。そう、全てです。父の幼少時代、父が学んだこと、母と出会い私達が生まれたこと、戦争中のこと。
    父は晩年植物を植え、花の絵を描きました。百科事典に残された花の絵は、それまで父が書いたものではありませんでした。しかしそれは、父を蝕んだ病気を表していたのです。

    【ガブリエル・ガルシア=マルケス『海岸のテクスト』】
    んんん?「こんな小説の案があります」って感じの短編だったな。

    『悪夢』
    何も持たなくなった男が新聞社に自分の悪夢を売る込みにゆく。「私は悪夢の専門家ですよ。こんな悪夢がありましてね。」すると編集長は「それなら私が見た悪夢を話してあげようか。こっちのほうが一枚上手だろう。」
    『悪夢のプロ』『ナサニエルの最後』
    ナサニエルは悪夢のプロで、幾重にも連なった悪夢の奥へ行きまた戻ろうとしている。しかしその夜は途中で起こされてしまった。果たしてここは何層目かの夢なのか。

    【ステーファノ・ベンニ(イタリア語)『最後の涙』】
    『悪い生徒』
    なんだか寓話的…。

    国の将来が集結する中学校。国の芸術史(プロパガンダ授業?)や、テレビ放送内容を暗証させられる。でも問題児ゼッフェリーニは予習復習をしないし、テレビの演説も覚えない。女教師は怒る。そんなことだと再教育寮に放り込まなければいけませんよ!

    『新しい書店主』
    取り壊しを免れた書店の前の持ち主は錬金術師だと言っていたらしい。本を可愛がりすぎて売ることすらしなかった!新しい書店主が店を調べると、とんでもなく価値のある書物があるではないか。売ってやる!だが前の書店主が「私は物たちに魂を吹き込むことができる」と言っていた本たちは、生きているかのごとく新しい書店主に襲いかかってくる!

    【スタニスワフ・レム(ポーランド語)『一分間』】
    全人類が同時に一分の間になにをしているのかが書かれている本があるのだ。
    では人類の経験する一分間とは?

    なんか観念的でよくわからん…(-_-;)

    【ヴィスワヴァ・シンボルスカ(ポーランド語)『ユートピア/奇跡の市』】
    詩が二編。『ユートピア』、『奇跡の市』

    【ヴォルフガング・ビルビッヒ(ドイツ語)『ゆるぎない土地』】
    電車に遅れた男はレストランに入るが何もかもうまく行かない。(本人には深刻だけど、ほぼコント(^_^;)
    この土地には出ることのできない土地。全てを諦めて留まることにした。

    【ボフミル・フラバル(チェコ語)『魔法のフルート』】
    フラバルがプラハで過ごしたある”無為の”一日。表題は、広場のほうから聞こえてきた音色で、何ということもない思案を漂っていたフラバルがその音色に明るさを感じる。音色が聞こえなくなっても、かつてこの毎tで開かれていた文学サロンに思いを寄せたりする。この世の統治が、神から人間にそして神に戻る心地になる。

    【残雪(漢語)『かつて書かれたことのない境地』】
    道端の小屋に夢の記述者がいた。人々が訪れ夢を語る。記述者にはある境地を自分の奥に感じていた。だがそれを直接書くことはできない。誰かが夢に見て、自分に語らなければいけない。
    次第に記述者の記述は虚ろになり、やがてなにも書かなくなる。人々は訪れなくなり、ここが何の小屋かも忘れられてゆく。だがときたま訪れる人々は却って安心して彼に夢を語る。
    さらに時が経ち、記述者は時間の概念さえ忘れて崩れた小屋で一日を過ごした。ただ頭の中でだけなお境地に辿り着こうとしている。外からは見えないが、きっとそうなのだろう。

    【アナトーリイ・キム(ロシア語)『コサック・ダヴレート』】
    ダヴレートという名前で人を殺していたコサックの男が、放浪生活を送るたびに殺されているよ運気がするっていう話?サンクト・ペテルブルグでは児童作家になり、ニューヨークの暴力沙汰で放浪生活を送り…までは「わたし」の一人語りなんだけど、途中で「わたし」が変わった??人生のすれ違いを語り手の変換で表しているのか…?

    【エステルハージ・ペーテル(ハンガリー語)『ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし ー見えない都市』】
    ブタペストについて、旅人が依頼人への報告書を送る。しかし依頼人は、旅人が言っていることはよくわからないし信頼できないし比喩が多いし…。
    自国文学者が語るブタペストってこと?

    【アブラム・テルツ(ロシア語)『金色のひも』】
    ロシア語について考えたり、言葉遊びというか詩というか。

  • 主に東欧やロシア界隈の旧社会主義国出身の作家をセレクト(マルケスだけが異質)したアンソロジー。体制からはみ出てしまった夢の欠片が暗黒の背景にひと粒の光を投じながら、現実には方向をつかめず内界に沈みこんでしまった感覚が残る。収録作の殆どが幻想的で美しくありながら悲しげだ。このようにテーマを絞ったアンソロジーは全体でひとつの作品として読めてしまうので、後になって作家と作品が噛み合わなくて困る。単に私の記憶力の欠如によるものかもしれないが。そんな私でも間違いなく記憶に残るカダレの「災厄を運ぶ男」が素晴らしい。

    《収録作家》ダニロ・キシュ/G・マルシア=マルケス/ステファノ・ベンニ/スタニスワフ・レム/イスマイル・カダレ/ヴィスワヴァ・シンボルスカ/ヴォルフガング・ヒルビッヒ/ボフミル・フラバル/残雪/アナトリイ・キム/エステルハージ・ペーテル/アブラハム・テルツ

  • 「世界文学のフロンティア3 夢のかけら」読んだ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/6/0261430.html … Gマルケスの悪夢の話、「最後の授業」と「一九八四年」を混ぜたような「最後の涙」がいい。出身地と作品世界の関連を傾向分析したら面白そう。レムはここでも架空本書評(つづく


    イスラム圏、ソ連圏、あと侵攻と侵略とで国のアイデンティティが不定な国、そして複雑なナショナリティをバックグラウンドに持つ作家、母国語とは異なる言語で書く作家。時間の観念や現実の定義を再設定したり、主客体の揺らぎを扱う作品が多いのには何か関係があるのかな(おわり

    ##
    そして、残雪の「かつて描かれたことのない境地」を読もうとしたら図書館からこのアンソロジ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/6/0261430.html … が来たのでいま読んでいるのだけど、ある短編で、新聞の編集長が「知的な人は新聞なんか読まない」と言っていて笑ってしまった

  • 「世界文学のフロンティア3 夢のかけら」読んだ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/6/0261430.html … Gマルケスの悪夢の話、「最後の授業」と「一九八四年」を混ぜたような「最後の涙」がいい。出身地と作品世界の関連を傾向分析したら面白そう。レムはここでも架空本書評(つづく

    イスラム圏、ソ連圏、あと侵攻と侵略とで国のアイデンティティが不定な国、そして複雑なナショナリティをバックグラウンドに持つ作家、母国語とは異なる言語で書く作家。時間の観念や現実の定義を再設定したり、主客体の揺らぎを扱う作品が多いのには何か関係があるのかな(おわり

    ##
    そして、残雪の「かつて描かれたことのない境地」を読もうとしたら図書館からこのアンソロジ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/6/0261430.html … が来たのでいま読んでいるのだけど、ある短編で、新聞の編集長が「知的な人は新聞なんか読まない」と言っていて笑ってしまった

  • この本に収録されたアナトーリイ・キム『コサック・ダヴレート』は今まで読んだ文学作品の中でも最も奇妙なものだった。最初「わたし」という一人称で語っているのは元コサックのダヴレートなのに、いつの間にか「わたし」として発話している人物がダヴレートを殴殺する黒人青年に、ダヴレートとテレパシー?で会話するオーストラリア人女性記者に、そして終いには著者本人でもある朝鮮系ロシア人作家にすり替わっている。「わたし」がダヴレートから黒人青年に最初にすり替わった時は自分の目がおかしいのかと思って何度も前後の段落を読み直したけど、同じような変化が重なるにつれて、これは作品中で一人称を用いる登場人物を一人に限定せず、全ての登場人物にその権利を与えている、かなり変わった趣向の作品なのだなとやっと気づいた。しかしその方が現実世界の様相には近いのかもしれない。現実世界では誰もが一人称で自分の考えを語っている。自分だけが一人称で語って、他の人にはそうすることを許さない、なんて社会は肝が冷えるし、自分の考えを一人称以外で語るのは文法構造状無理なのだから。

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