世界文学のフロンティア 5

著者 : 今福竜太

• 岩波書店 (1997年2月10日発売)

感想・レビュー・書評

[hitomimimimimiさんの感想 · 2014年4月3日]

収録作家のうちペソア、トニ・モリソン、アレナス以外は初めて目にする。帰属する場所を持たないことがアイデンティティを剥奪するのではなく、寧ろ幾つもの無数の自己を産み出す。複数の自己が出会い擦れ違い彷徨いながら終にはルーツを希求する過程に身を裂くほどの軋みが生じえよう。言葉と言葉の隙間から漏れ落ちる悲しみを阻めない。真の居場所のない11人の作家がそれぞれの場所で文学に出会えた必然、文学に託すことでしか自分を掬い出せなかったその軌跡を思うと胸が熱くなる。最後の最後まで、ああアレナス、私は悲しくてたまらない。

《収録作家》フェルナンド・ペソア／アルトゥーロ・イスラス／ジミー・サンティアゴ・バカ／ギャレット・ホンゴー／カレン・テイ・ヤマシタ／オードリー・ロード／トニ・モリスン／アナ・カスティーリョ／ムハンマド・ショクリー／アンドレイ・コドレスク／レイナルド・アレーナス