現代日本経済政策論 (シリーズ現代の経済)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000262682

作品紹介・あらすじ

二一世紀に入っても立ち直りの契機を見いだせぬまま、ますます混迷の度を深める日本経済。何が問題で、いかにしたら立ち直ることができるのか。本書は、バブルの絶頂期に誰よりも早く日本経済の崩壊を予見し、その後も不況の長期化と深刻化に警鐘を鳴らし続けてきた著者による本格的な経済政策論。金融政策、財政構造問題、年金制度、税制、分権化、労働市場、新産業の育成、規制緩和、政策決定メカニズムなど、根幹的な個々の課題を緻密なデータ分析に基づいて論じつつ、経済再生の条件をトータルに究明し、バラバラの対症療法ではない全体として首尾一貫した分析と対策を提示する。変化する経済現象を洞察するための理論的基礎を提供し、取るべき選択を示唆した傾聴すべき労作。

感想・レビュー・書評

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  • この本や『金利・為替・株価の政治経済学』(岩波書店1992年)で、混迷・暴走する資本主義の守護神たる破綻したケインズ経済学を救済しようとする試みに果敢に挑戦する植草一秀には、少しばかり注目していましたが、2004年・2006年と続くまさかの陰謀的な痴漢行為もとい迷惑防止条例違反で実刑判決まで出るに至って唖然・呆然としていました。

    小沢一郎の例にもあるように、強く政府に批判的だったり優勢対抗勢力だったりすると政界・検察・警察ぐるみで潰しにかかっている昨今ですから、国策逮捕ということもあったのかもしれませんが、だったらなおさら油断は禁物です。

    それはともかく、その彼が今回の選挙結果について興味深い総括をしています。夢々変態(失礼!)の戯言などとはけっして思わずこの至言に耳を傾けてみてください。
               ◆  ◆  ◆  ◆  ◆
    第46回衆議院議員総選挙が実施され、自民党が圧勝した。

    マスメディアの流布した情報が現実化した。
    今回の選挙結果を生み出した要因は以下の三点である。
     第一は、政権与党の民主党が主権者国民から総スカンを喰らったこと。 菅直人首相、野田佳彦首相の行動実績を見れば、この民主党が主権者国民の信頼をことごとく失うことは当然のことである。

     第二の要因は、民主、自民に対抗する、いわゆる第三極陣営が、マスメディアの偏向情報操作によって攪乱されたこと。 本来は、民主党内で主権者国民との約束を守ろうとして民主党を離党して新党を結成した勢力が、民自に対抗する第二極、あるいは第三極の中核に位置すべきであった。 しかし、これをマスメディアが徹底的に妨害した。 妨害の方法は、小沢一郎氏を貶める報道を全開の状態にしたことと、橋下徹氏を誇大宣伝し続けたことである。 橋下新党を大宣伝し続ける一方で、小沢新党については完全に報道を封殺した。 いわゆる第三極はメディアの偏向報道によって断され、反民自勢力の伸長が阻止された。

     第三の要因は、自民党の前回落選者が多数存在したために、いわゆる「次点バネ」が強く効いたことである。 「次点バネ」は政権与党が失態を晒す局面で、より強く威力を発揮する。政権与党が主権者国民の信頼に応える政権運営をしたなら、「次点バネ」の威力は低下するが、政権与党が大失態を演じれば、「次点バネ」の威力は最大に発揮される。
    そして、今回の選挙結果をもたらした最大の原動力はメディアの情報操作にあった。
    メディアは次の情報操作を展開した。

     第一は、自民党圧勝予測を流布することによって、「勝ち馬に乗る」有権者の行動を引き出したことだ。いわゆる「バンドワゴン効果」が強く表れた。

     第二は、選挙結果が確定的であるとのイメージを植え付け、投票率の上昇抑制が誘導されたこと。 今回総選挙での小選挙区投票率は59%前後となり、戦後衆院選で最低投票率を記録した1996年の59.65%を下回る可能性が浮上している。 投票率が高まると、原発即時ゼロや消費税増税撤回を公約に掲げる勢力に投票が流れる可能性が高まると見られていた。 原発や消費税増税推進勢力は、投票率をできるだけ低位に抑制することを目論んでいた。この目的に合わせてマスメディアが徹底した情報操作を行ったと見られる
     今回総選挙の最重要争点である原発・消費税増税・TPPを陰に隠し、成長戦略や憲法問題などを争点に位置付けるなどの工作も展開され、主権者国民の選挙への関心が人為的に引き下げられた

     第三は、小沢新党に関する報道を徹底的に封殺したことだ。これに先立ってメディアは、2009年以来、3年以上の長期にわたって、小沢一郎氏に対する「人物破壊工作」を徹底的に展開した。 今回総選挙の最大の目的は、小沢新党つぶしにあったと思われる。 小沢一郎氏をここまで徹底して攻撃対象に位置付けた理由は、小沢氏が日本の政治構造を、「既得権益の政治」から「主権者国民の政治」に変質させてしまう恐れがあったからだ。
     2006年に小沢氏が民主党代表に就任して以来、小沢氏に対する失脚工作は連綿として実行され続けた。 しかし、小沢氏はその攻撃をかわして、2009年に政権交代の大業を成就させた。 既得権益はこの事態に直面して、猛烈な反撃に出た。目的のためには手段を選ばぬという、暴走に次ぐ暴走を繰り返したのである。 その集大成が今回総選挙であったと見ることができる。
     変質した民主党は自民党と変わらない。既得権益にとっては、民主党が大敗しても、自民党が圧勝すれば何の問題もない。 唯一許されないことは、小沢新党が強い力を維持することである。 小沢新党が力を維持すれば、再び「既得権益の政治」が破壊され、「主権者国民の政治」が構築される危険が残る。 この認識から、既得権益は総力を結集して小沢新党せん滅を最重要目標に掲げて今回総選挙に臨んだのだと思われる。

     野田佳彦氏もこの点を踏まえていた可能性が高い。この選挙で政権を維持できると考えていたのなら、とてつもない阿呆としか言いようがないが、恐らく野田氏に与えられたミッション=使命は、小沢新党つぶしであって、この意味では野田氏は与えられたミッションをこなしたのだと思われる。 このようなことで、今回選挙は既得権益の思惑通りの結末を迎えた。
    選挙集計等で大がかりな不正が行われたとの見方も存在しているが、この点については現時点では何とも言えない。
     結局、2009年の政権交代実現から3年余の時間を経過して、「元の木阿弥政権」が誕生したことになる。 すべては、既得権益が「主権者国民の政治」を力ずくで破壊しようとした、その流れに沿うものである

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活動後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。政治情勢および金融市場予測の精度の高さで高い評価を得ている。また、政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位、2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』(岩波書店))受賞、『金利・為替・株価の政治経済学』(岩波書店)、『日本の総決算』(講談社、『日本の独立』(飛鳥新社)、『日本の再生』(青志社)、『消費増税亡国論』(飛鳥新社)、『消費税増税「乱」は終わらない』(共著、同時代社)、『金利・為替・株価大躍動』(ビジネス社)、『対米従属という宿痾』(共著、飛鳥新社)ほか著書多数。

「2013年 『アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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