原理主義 (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000264242

感想・レビュー・書評

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  • イスラム教、ユダヤ教、キリスト教における「原理主義」にまつわる問題を論じている本です。

    本書が「原理主義」を考察する視角は、かなり独特のものです。前半では、「原理主義」ということばについての研究史を概観しながら、その問題点を明らかにしています。「イスラム原理主義」というレッテルが孕んでいる問題を指摘しながら、単にこれをしりぞけるのではなく、「原理主義」ということばを手繰っていくことで現代の国際社会における宗教にまつわる問題を引っ張り出してくるという戦略的な意図のもとで議論が展開されています。

    後半では、ユダヤ教原理主義やシオニズムを支援するキリスト教原理主義などがとりあげられ、より政治的な次元における原理主義の問題が浮き彫りにされています。

  • 【目次】
    はじめに [iii-viii]
    目次 [ix-]

    I 原理主義とは何か 001
    第1章 現代日本の原理主義 001
    インターネット時代の原理主義/思想としての原理主義/蔑称としての原理主義
    第2章 論争の中の原理主義 021
    原理主義とオリエンタリズム/原理主義の諸「原理」/原理主義という用語は有効なのか
    第3章 方法としての原理主義 042
    脅威としての原理主義/比較の方法としての原理主義/段階・類型論としての原理主義

    II ユダヤ教原理主義を考える 061
    第1章 ナショナリズムと原理主義のはざま 061
    ユダヤ教原理主義政党シャスの躍進/ユダヤ民族国家か、ユダヤ教国家か/キリスト教原理主義とシオニストの共犯
    第2章 ユダヤ教原理主義と暴力 087
    人種主義者カハネとユダヤ教原理主義/2つの原理主義運動――ユダヤ教とイスラームの類似性/ユダヤ教原理主義の隘路――ラビン暗殺
    第3章 原理主義のゆくえ 112

    III 基本文献案内 119

    あとがき [125-127]

  • 原理主義とは、テロリストの事かと思っていた。しかし、基本的には思想の原理を信じる事の意味であり、様々な思想がどの様な内容を根底として抱えているかを知れば、テロリストたちも基本的には思想家であって、思想を掲げた活動家である事が解るだろう。キリスト教の原理主義者たちは暴力とは無縁であるし、暴力に訴えて社会に主張する者たちは、原理の意味を曲解して、不服を溜め込んでいるだけだとしか、思われない。原理とは、思想の一番根底にあるもの、と捉えているが、それは、解釈の問題でもあって、如何様にも捉える事が出来るもの、と思った方が良い。宗教は人間の悩みを救う事を目指すのであって、武力で征服して全てを奪いとる事などは、目指していない。より原理を追求しようとする事は、知的な探求であり、暴力の痛みを称揚する方向に向かう事は、悪魔主義と呼んだ方が良いと思う。しかし、一つの思想に染まった集団が、暴力を肯定するとなると、狂気的な残虐行為さえ厭わずに、目的に対して猛進するだけだから、宗教の名の元にも置けぬ存在となる訳です。テロとは無法者の最悪の武器であり、世界中に分散した、裏世界の支配権力でもある。テロリストの原理を、我々は知らねばならない。そして、暴力の原理を解明する事が、身に迫った緊急問題である事だと、感じずにはいられない。

  • [ 内容 ]
    原理主義-この言葉で我々はなにを語ろうとしているのか。
    イラン革命を契機として大きな注目をあびた、この曖昧で多義的な現象を、現代の状況と研究史のなかに位置付け直し、比較概念としての原理主義という可能性を探る。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 09年終
    なじみのないテーマのせいもあってか、分かりづらく頭に入りにくく感じた。先生曰く、「非常に分かりやすく書いてある」とのこと。
    時間を置いて再読したい
    ・そもそも原理主義という言葉の定義とは
    ・イスラム教だけじゃない
    ・キリスト教とイスラム教の関係

  • ¥105

  • 別にそのケはないですよ?

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著者プロフィール

1956年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際関係論博士課程単位取得退学。在ヨルダン日本大使館専門調査員、佐賀大学助教授、エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所客員研究員、国立民族学博物館教授を経て、現在、日本女子大学文学部史学科教授。京都大学博士(地域研究)。専攻は中東地域研究。主な著書に、『見えざるユダヤ人――イスラエルの〈東洋〉』(平凡社選書)、『中東和平への道』(山川出版社)、『イスラムの近代を読みなおす』(毎日新聞社)、『原理主義』『世界化するパレスチナ/イスラエル紛争』『イスラエル』(以上、岩波書店)、『イスラームはなぜ敵とされたのか――憎悪の系譜学』『大川周明――イスラームと天皇のはざまで』『アラブ革命の衝撃――世界でいま何が起きているのか』(以上、青土社)、『世界史の中のパレスチナ問題』(講談社現代新書)などがある。

「2018年 『「中東」の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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