ジェンダー/セクシュアリティ (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
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  • 本棚登録 :87
  • レビュー :5
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000264334

作品紹介・あらすじ

ジェンダー/セクシュアリティとは、私たちの生の、いかなる局面への名付けなのだろうか。それはどのような装置のもとで稼働し、なにを私たちにもたらしたのだろうか。剥き出しになった私たちの生を、「生の政治化」という視角から捉え直し、それが可能にする新しい自己と共同性の在り方を考える。

感想・レビュー・書評

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  • [前置き](理解の漸進のためにモヤモヤを言語化してみた)
     ジェンダー論の中の、ある基本的(本質的というと確実に語弊があるから代替表現としては根本的という方がよさげ?)な事柄について掘り下げた解説が読める。
     95頁ほどの薄さ。そのうちブックガイドは20頁強。この本を読むつもりの全国の学生へ向けた私からの注意点を二つ挙げる:焦点を絞ったので厚みは薄いが濃度は高い。テーマとして枝葉でなく本筋を扱っているからといって、すなわち簡単と言うわけでもない。以上。
     文体にクセはあるが数ページ我慢すれば慣れるはず。
     蛇足だが、本書を含めこのシリーズが想定する読者層は、他分野である程度の修行を積んでる人が最低ラインなのだろう。表紙の「フロンティア」を目に入れておきながらそのへんに気が回らない昔の私が悪かったのだが。それでも、はじめから玄人同士のために書かれている(にもかかわらず、マイナビ将棋BOOKSと同様に低級者へのマーケティングが行われてるぞと邪推はしてしまう)。
     5年くらい前に、ジェンダーの思想家が沢山載ってると聞き、簡単に・ざっと、知れたら楽だろうと図書館で薄い本書を開いた(そういうのは図解雑学の仕事だった)。しかし寄り道らしきものが頻繁にあるうえ、苦手なフーコーが出てきたため撤退。色々勉強してから再挑戦した。というか、この本は「セクシュアリティ理論」の方がメインだった。

    [感想]
     著者の問題意識を掴むには、現代思想の潮流のなかでのジェンダー論の一般的な位置づけを踏まえてはじめて準備ができる(と私は思う)。
     なお、“動物的な生の停止がセックスの条件なのだ” (47頁) のように生物学のお話には、著者のクセが強く表れている(著者に限らないのかもしれないが)。個人的には、構築主義&本質主義という軸のある後半(第2章)の方が興味深かった。
     再読後に疑問が浮かぶ。「テーマがこんな語り口を要請しているのか」と。これは橋爪式・池上式の思い切り割り切った説明が欲しいという意味ではなく、文字通りの疑問として(もちろん、あれば読む)。
     

    【書誌情報】
    著者:田崎英明(1960-)
    刊行日:2000/09/21
    9784000264334
    B6 並製 カバー 134ページ 品切れ

    ジェンダー/セクシュアリティとは,私たちの生の,いかなる局面への名付けなのだろうか.それはどのような装置のもとで稼働し,なにを私たちの生にもたらしただろうか.こうした問題をミシェル・フーコーの『性の歴史』を糸口にして,「生の政治化」という視角から捉え直し,それが可能にする新しい自己の在り方を考える.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b257294.html

    【抜き書き】
    “だが,この同一化は,マルヴィの議論が典型的にそうであるように,視線と視線のあいだでの同一化である.ある視線(観客の)が別の視線(登場人物の)と重ね合わされ,そのことを通じて,観客は登場人物(の身体)と同一化することができる.しかし,このとき,登場人物に合体し,その身体に寄生して棲みつくまで,観客の身体はどこにいて,どうしているというのだろうか.”
    [田崎2000:9]


    “〔……〕ここで少し「ジェンダー」について見ておこう.
     「ジェンダー」ということばは英語以外ではなかなか馴染みが薄い.男と女は土のように違うのか,どのように区別されて扱われるのか,どのような異なった振舞い方をするのか,ということを,歴史的,社会的,文化的に形成されてきた違いにすぎないと主張するとき,そのように捉えられた男性/女性の差異のあり方を現在では,私たちは「ジェンダー」と呼び慣わしている.このことばが世界的に普及したのは,たしかに英語圏のフェミニストの功績である.”
    [田崎2000:78]


    “フェミニズムの文脈では,今日,本質主義の批判が盛んである.いつの時代にも,ジェンダーのかたちを決定するような共通する「本質」が存在するという考え方に対する批判である.フェミニズムにおける本質主義批判に関して気をつけなければならないのは,そこで批判されている「本質」は,単に生物学的なものにとどまらないということである.
     たとえば,本質主義に対する批判者として真っ先に挙げられるべきフェミニストとしては,もっとも徹底した構築主義の立場を採るジュディス・バトラーが考えられる.彼女が本質主義と呼んで批判するのは,ジェンダーを生物学的なセックスに基礎をもつ自然なものであると主張する反フェミニズムの性差別主義ばかりではない.もうひとつの主要な論的は,ラディカル・フェミニズムを標榜するフェミニスト法学者で,おそらく,アメリカ合衆国で最もメインストリームのフェミニストといっていい存在であるキャサリン・マッキノンなのである.”
    [田崎2000:80]

    【目次】
    はじめに――生‐政治の方へ [iii-v]
    目次 [vii]

    I 理論的、マゾヒズム――生の内在性と装置をめぐる予備的考察 001
    理論的に語るということ  視線の交換  装置と主体  生の根源的な受動性  非器官的生と可視性の誘惑  装置と言説  これは私の言語ではない

    II 性、生、公共性 029
    第1章 個体化と錯時〔アナクロニー〕――微生物のセックスから 029
    世界のサヴァイヴァル  死の圧力の退潮  純粋なアナクロニズム  存在の時間性  共生進化論  生物学的な性の概念  性の起源  種と個体  個体化と遺伝子  純粋な個体化  個体化の暴走

    第2章 親密公共圏――あるいは、トラウマに基づく共同性 061
    二つの生  サヴァイヴァルとしての日常生活  セクシュアリティ,社会を構成するもの  社会工場  セックス/ジェンダー・システム  構築と主体  行為としてのポルノグラフィ  誘惑する声とトラウマ  親密公共圏  自己が構成する共同性

    III 基本文献案内 097
    ジェンダー/セクシュアリティに関して  生‐政治とポスト・フォーディズムをめぐって  ポテンシャリティをめぐって  精神分析からの線  共同体をめぐって

    あとがき(2001年1月追記 田崎英明) [123-125]

  • むむむ。論旨追いきれず。もう一度読み直す。
    「最近私たちは「他者」(異なる存在)と出会うということばかり聞かされて続けている。だが、そういった議論は「同じもの」同士ならうまくいくということを安易に前提としてはいないだろうか。けれども、文学や映画における分身のテーマの扱いを見れば分かるように、本当に同じもの同士が出会うと悲劇的な結末を迎えてしまう。同じもの、対等な者のあいだの愛(ベルサーニの『ホモズ』のひとつのテーマ)はいかにして可能なのか。このことはけっして自明ではない。同じものの共同体としての自己たちの共同体はいかにして可能なのか。この問いは開かれたままである。」(p.95)
    最後のこの指摘は、『シェイム』を想起した。唯一同じ痛みを共有している兄妹は、本来ならば、最も理解しあえる互いにとっての唯一的な存在であるはずなのに、その同じ傷ゆえに理解しあうことができないという「悲劇」を扱った映画。あの映画の主人公(マイケル・ファスベンダー)はセックス依存症であり、妹は誰でもすぐに寝てしまい、リストカットしまくるという役柄だったと思う。本書が取り扱う内容と近似しているのかも・・・。

  • [ 内容 ]
    ジェンダー/セクシュアリティとは、私たちの生の、いかなる局面への名付けなのだろうか。
    それはどのような装置のもとで稼働し、なにを私たちにもたらしたのだろうか。
    剥き出しになった私たちの生を、「生の政治化」という視角から捉え直し、それが可能にする新しい自己と共同性の在り方を考える。

    [ 目次 ]
    1 理論的、マゾヒズム―生の内在性と装置をめぐる予備的考察
    2 性、生、公共性(個体化と錯時―微生物のセックスから;親密公共圏―あるいは、トラウマに基づく共同性)
    3 基本文献案内

    [ POP ]


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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ジェンダー論を知りたくて読んだ。

    だが私にはわからん。いろんな意味で。

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