リージョナリズム (思考のフロンティア)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270021

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  • 【内容紹介】
    ■体裁=B6判・並製・カバー・120頁
    ■定価(本体 1,300円 + 税)
    ■2003年10月17日
    ■ISBN 4-00-027002-8 C0310
     私たちは何者を身近な人間とし,何者を縁遠い者と想定するのか.自他を区別するこの文化地政学的境界設定の問題を,私たちの無意識化されている「言説編制」の問題として捉え直し,その変容する過程を跡付けつつ,他者認識や地政文化が流動化するなかで,リージョナルなものの再編のための新たな空間認識の可能性を探る.
    https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/8/0270020.html



    【目次】
    目次 [v-vi]
    はじめに [iii-iv]

    I 方法としての「リージョナリズム」 001
    第1章 概念および問題設定 001
      1 「リージョナリズム」――どのように用いるべきか? 001
      2 歴史への「空間」の導入 004
      3 ヨーロッパ=世界史を相対化する 010
    第2章 戦争,革命,植民地 017
      1 空間革命 017
      2 「進歩」の外へ 020
      3 表象の支配,空間の分割 028
    小結 リージョナルなものの再編制 036

    II せめぎ合うリージョン――日本とアジア 043
    第1章 日本とアジアの現在性を規定しているもの 043
      1 日本人に見えない「アジア」 043
      2 戦前日本の空間認識 046
      3 戦後日本の「独立」と「従属」 057
      4 冷戦体制とポストウォー/ポストコロニアル状況 070
    第2章 余白のアジア,回帰するアジア 083
      1 「戦後」の東アジア 083
      2 冷戦/脱冷戦 086
      3 東アジアの現在性 093
      4 リージョナルなものと責任意識 104

    III 基本文献案内 111

    あとがき [121-124]

  • 冷戦体制は東アジアにおいていまだ去らざるものとしてあるが、脱冷戦へと向かう文化状況の変動は欧米のアカデミズムではいくつかの明確な徴候として知の組み換えに結び付いた。
    かつて米ソの冷戦体制は第二次大戦後、植民地支配からの独立を宣言した多くの新生国家に対して容赦のない影響力を及ぼしていた。同時にかつて植民地であった諸国、諸地域を研究する欧米アカデミズムのセクターはオリエンタル学から地域研究(および開発学)へとその名称を変えていった。

    東アジアの冷戦体制はヨーロッパのそれとはかなり違ったものになったといえる。

  • 国際的なリージョナリズムは、グローバリズムやナショナリズムと対立することがある。グローバリズムは地球あるいは世界全体の利益を追求する立場であるので、リージョナリズムが追求する利益の範囲は狭すぎ、逆にナショナリズムは国あるいはそれに準ずる地域の利益を追求する立場であるのでリージョナリズムが追求する利益の範囲は広すぎる、という理解からである。
    また、1つの国の中でのリージョナリズムは、国の中での特定地域の利益を優先する点でナショナリズムと、広域的な地域の利益を優先する点では個々の地域の利益を優先するローカリズムと、対立することがある。
    しかし、そもそも地域(リージョン)は相互排他的なものではなく相互重複的かつ重層的に設定可能であるから、ローカリズム、ナショナリズム、グローバリズムと整合的にすることが可能なものとして、あるいはそれらの間をつなぐものとして、リージョナリズムを考える立場もある。環境経済学者の寺西俊一は、グローバルな利益の実現は各層でのリージョンの利益を積み上げることによってこそ可能になる、というインター・リージョナリズムの考え方を、著書『地球環境問題の政治経済学』(pp.138-139)で提唱している。
    リージョナリズムは歴史的には第二次世界大戦前のブロック経済に由来する。戦後、冷戦のもと、ブロック経済の批判的な継承として誕生したECやEFTA、あるいは東南アジアで作られた ASEAN、南アジアのSAARC、アフリカのAU、南米での南部共同体(メルコスール)、太平洋諸島フォーラム(PIF)などの地域統合の動きは、何れもリージョナリズムが具体的な形で実現したものである。それらには、米ソ2大超大国、あるいはそれらに準ずる地域大国や、他地域での地域統合に対し、弱小を自認する国々が地域的に連合して対抗するもの、あるいは少なくとも地域内の利害対立を調整して域外国につけいる隙をなくしていくためのもの、という性格もあった。冷戦後、旧社会主義圏を含めた自由、無差別、多角的貿易秩序を目指すWTOの動きが本格化する中で、リージョナリズムは特定地域間の経済的取り決めを促進する点で相反するものとみなされる。しかし、WTOの前身であるGATTの加盟国がGATTのルールによらず、2国間あるいは数カ国間で輸出自主規制措置や自由貿易地域の合意などがとられた事実と照らし合わせると、全世界規模での貿易の取り決めは難しく、地域的経済統合により拡大された経済関係を作り出すことに意義があると言われている。
    現実にヨーロッパではECがEUとして統合を強めるとともに範囲を拡大し、北米でもNAFTAが成立するなど、リージョナリズムは強まる方向にある。アジアにおいてもヨーロッパ・北米の試みに刺激され、地域的経済統合の兆候がある。1991年には ASEAN経済閣僚会議で「東アジア経済グループ」が提唱されたものの、アメリカなどによりアジアでのブロック政策として強く批判され、具体化しなかった。その後「東アジア経済グループ」を発展させた東アジア共同体の構想が練られているが、これにも同様の批判がある。また、地域の範囲を限定して強く統合しその中での主導権を確立したい中国と、地域をオセアニアやインドまで拡大したうえで統合じたいは緩いものとし中国を牽制したい日本の利害対立、内政不干渉の原則などにより、各国が政策を一致させるということも困難ではないかとされている。

  • [ 内容 ]
    自他を区別する文化地政学的境界設定の問題を、私たちの無意識化された「言説編制」の問題として捉え直し、その変容過程を跡付け、他者認識や地政文化が流動化するなかで、リージョナルなものの再編の可能性を探る。

    [ 目次 ]


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著者プロフィール

丸川 哲史 明治大学政治経済学部教授。著書:『魯迅出門』(インスクリプト)、『思想課題としての現代中国』(平凡社)、『竹内好』(河出書房新社)、『台湾ナショナリズム』(講談社)。

「2022年 『野生の教養 飼いならされず、学び続ける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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