クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270045

感想・レビュー・書評

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  • 2017/08/25

  • クイア研究に関する本は初めて読んだけども、非常に興味深い。というか、この岩波の思考のフロンティアシリーズは本当に良書が多くてはずれがないので、入門書としてはグー。

    さて、クイア。まずは最初に驚くことが、クイア・スタディーズの研究対象が明確には定まっていないという指摘。そして「自己記述的な言葉」として用いるために使用している学者もいるということ。本書においては、「クイア」の明確な定義がなされたときに、クイア・スタディーズの大きな目標が一つ達成されるみたいことまで書かれていた(と思う)。

    それとゲイ/レズビアン問題というのは、問題構成もかなり近いのだろうし、基本的に共闘してるんだろうなと愚かにも思っていたのだが、全然そうではなく、むしろそれらを一緒くたにすることはかなり問題であるという点。ここにもジェンダー問題が関わってくるということ。

    そして最も興味深かった指摘は、アルトマンによる抑圧の3つの形態ー迫害、差別、寛容。そう「寛容」という文字がここに現れることである。この「寛容」による抑圧を、本書では「差異に価値を十分に与えることなく差異と表向きの共生を可能にするようま差別の一形態なのである。」と記述する(p.25)これはいわゆる多文化主義が批判されるときに孕んでいるレイシズム的な構造とかなり近いものがある気がした。

    他にも資本主義との関連、家族形態の新しい模索(映画『ハッシュ!』をもとにしているが、この映画をみなければならない。)など、興味関心あるテーマが論じられている。クイア・スタディーズ、もっと勉強しよう。

  • コメント

    映画ハッシュ!に見る家族という章は面白かった。
    血のつながりや親族との関係性を重視して、そうして関係性を「選択した」パートナーとの
    関係性よりも優位に置き、血縁の重要性を主張する。
    血縁主義的考えが、結婚自体が言うまでもなく、個人と個人の契約関係ではなく、
    依然として家と家との結びつきであり、家父長制の維持ということになる。

    クイアスタディーズの視角という点で、資本主義と絡め、政治的権力に
    利用される恐れを危惧している。
    事実、レズビアン・ゲイ映画祭や新宿のタワレコで同性愛コーナーが設けれられる事や
    伊勢丹メンズ館を作ったりと資本主義に組み込まれてしまっている。



    ゲイのライフスタイルが都市文化の一つとして承認され、
    その見返りとして「人権」という「特別な権利」が与えられる。
    そのようなとき非異性愛者達は、大きな資本の論理に順応することなく、
    また、飲み込まれることなく、自らの欲望を開放・解放しつつ、
    異性愛規範に抵抗していくことが出来るだろうか。


    出版社/著者からの内容紹介
    知のパラダイム転換のなかで,激変する現代社会が抱える錯綜し複雑化する問題群を,
    気鋭の著者陣が独自の視座から大胆に読み解く,待望のシリーズ第II 期.21世紀を迎えた今日,
    私たちが担うべき真の課題とは何か.アクチュアルな現実との拮抗関係のなかで,
    構想力の再生にむけて,新たな思考の可能性を再び切り拓く.

    非異性愛者を差別・抑圧することで,わたしたちの社会はなにを得ようとしてきたのだろうか.
    その事実に〈学問〉はどのように関わってきたのか.これまでの〈規範〉に徹底抗戦する
    クイア・スタディーズの可能性に寄り添いながら,
    異性愛主義によって侵食されたセクシュアリティの現況を考察し,新たな性と生のあり方を探る.

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