クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)

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  • Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270045

感想・レビュー・書評

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  • 【版元】
    非異性愛者を差別・抑圧することで,わたしたちの社会はなにを得ようとしてきたのだろうか.その事実に〈学問〉はどのように関わってきたのか.これまでの〈規範〉に徹底抗戦するクイア・スタディーズの可能性に寄り添いながら,異性愛主義によって侵食されたセクシュアリティの現況を考察し,新たな性と生のあり方を探る.

    ■著者からのメッセージ
     「クイア」概念や実践は,規範に抵抗する者にとって,約束の地を与えてくれるものではない.むしろ,規範によって自己や集団の統一性が保障されているとするならば,規範に対し徹底的に抗うことは,自己や集団そのものの統一性を崩壊させるような「危険」に身をさらすことにもなる.切った刀で自分自身をも切りつけてしまう「危険性」をクイアの思想ははらんでいる.したがって,このような考え方は,マイノリティの自己正当化の思想ではないし,解放主義的な運動の文脈における〈解放〉という考え方がもつ,あらかじめ措定された最終目標に向かう政治的使命にもなじまない.1970年代以降の解放主義的な運動に見られるように,同性愛者の〈解放〉という論理,すなわち「自由」や「平等」という目標や達成地点を見出そうとする方向性のなかで,同性愛者にとっての非在郷を探しつづけるという「危うさ」と先に述べた自己(の統一性の)崩壊の「危険性」,そのどちらを選択するのかというときに,わたしはあえて後者を選択する判断もありだと考える.(「まえがき」 p. vi)
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b257302.html


    【目次】
    はじめに [iii-x]
    目次 [xi-xii]

    I レズビアン/ゲイ・スタディーズからクイア・スタディーズへ――欲望の理論と理論の欲望 001

    第1章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ前史 001
    1 同性愛解放運動の黎明期――ドイツにおける同性愛の「犯罪化」と「病理化」 001
    2 ホモファイル運動 008

    第2章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ 017
    1 ストーンウォール暴動 017
    2 ゲイ解放運動 020
    3 同性愛――抑圧と解放 023
    4 ホモファビアとヘテロセクシズム 029
    5 レズビアン・フェミニズム 031
    6 「エスニック・モデル」化する同性愛 039
    7 セクシュアリティ 042

    第3章 クイア・スタディーズ 051
    1 クイア理論/研究を取りまく背景 051
    2 同性愛者,レズビアン/ゲイ,クイア 054
    3 「クイア理論」の台頭 056
    4 深刻化するエイズ問題 059
    5 クイア・アイデンティティ 062

    II クイア・スタディーズという視角 067

    第1章 クイア化する「家族」 067
    1 非異性愛「家族」の形成 067
    2 クイア「家族」は近代家族を超えるのか――「家族」から零れ落ちる「家族」 078
    3 抑圧する「家族」 081
    4 選択する「家族」 091

    第2章 資本の欲望とゲイのライフスタイル 094
    1 同性愛者の人権をめぐる二つの事例 094
    2 資本主義とゲイ・アイデンティティ 097
    3 ゲイのライフスタイルと消費 100

    III 基本文献案内 115
      レズビアン/ゲイ・スタディーズ前史  レズビアン/ゲイ・スタディーズ  クイア・スタディーズ  歴史  論集  クイア化する家族  資本の欲望とゲイのライフスタイル  翻訳以外の日本語文献

    あとがき(2003年晩秋 河口和也) [127-130]

  • 2017/08/25

  • クイア研究に関する本は初めて読んだけども、非常に興味深い。というか、この岩波の思考のフロンティアシリーズは本当に良書が多くてはずれがないので、入門書としてはグー。

    さて、クイア。まずは最初に驚くことが、クイア・スタディーズの研究対象が明確には定まっていないという指摘。そして「自己記述的な言葉」として用いるために使用している学者もいるということ。本書においては、「クイア」の明確な定義がなされたときに、クイア・スタディーズの大きな目標が一つ達成されるみたいことまで書かれていた(と思う)。

    それとゲイ/レズビアン問題というのは、問題構成もかなり近いのだろうし、基本的に共闘してるんだろうなと愚かにも思っていたのだが、全然そうではなく、むしろそれらを一緒くたにすることはかなり問題であるという点。ここにもジェンダー問題が関わってくるということ。

    そして最も興味深かった指摘は、アルトマンによる抑圧の3つの形態ー迫害、差別、寛容。そう「寛容」という文字がここに現れることである。この「寛容」による抑圧を、本書では「差異に価値を十分に与えることなく差異と表向きの共生を可能にするようま差別の一形態なのである。」と記述する(p.25)これはいわゆる多文化主義が批判されるときに孕んでいるレイシズム的な構造とかなり近いものがある気がした。

    他にも資本主義との関連、家族形態の新しい模索(映画『ハッシュ!』をもとにしているが、この映画をみなければならない。)など、興味関心あるテーマが論じられている。クイア・スタディーズ、もっと勉強しよう。

  • コメント

    映画ハッシュ!に見る家族という章は面白かった。
    血のつながりや親族との関係性を重視して、そうして関係性を「選択した」パートナーとの
    関係性よりも優位に置き、血縁の重要性を主張する。
    血縁主義的考えが、結婚自体が言うまでもなく、個人と個人の契約関係ではなく、
    依然として家と家との結びつきであり、家父長制の維持ということになる。

    クイアスタディーズの視角という点で、資本主義と絡め、政治的権力に
    利用される恐れを危惧している。
    事実、レズビアン・ゲイ映画祭や新宿のタワレコで同性愛コーナーが設けれられる事や
    伊勢丹メンズ館を作ったりと資本主義に組み込まれてしまっている。



    ゲイのライフスタイルが都市文化の一つとして承認され、
    その見返りとして「人権」という「特別な権利」が与えられる。
    そのようなとき非異性愛者達は、大きな資本の論理に順応することなく、
    また、飲み込まれることなく、自らの欲望を開放・解放しつつ、
    異性愛規範に抵抗していくことが出来るだろうか。


    出版社/著者からの内容紹介
    知のパラダイム転換のなかで,激変する現代社会が抱える錯綜し複雑化する問題群を,
    気鋭の著者陣が独自の視座から大胆に読み解く,待望のシリーズ第II 期.21世紀を迎えた今日,
    私たちが担うべき真の課題とは何か.アクチュアルな現実との拮抗関係のなかで,
    構想力の再生にむけて,新たな思考の可能性を再び切り拓く.

    非異性愛者を差別・抑圧することで,わたしたちの社会はなにを得ようとしてきたのだろうか.
    その事実に〈学問〉はどのように関わってきたのか.これまでの〈規範〉に徹底抗戦する
    クイア・スタディーズの可能性に寄り添いながら,
    異性愛主義によって侵食されたセクシュアリティの現況を考察し,新たな性と生のあり方を探る.

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著者プロフィール

1965年 愛知県生まれ.
[現職]筑波大学大学院社会学専攻博士課程単位取得満期退学.[専門]性的指向や同性愛者のアイデンティティ,HIV/エイズに関する国際的な情報収集や理論研究.
「世界の同性愛(者)をめぐる状況」『女子教育もんだい』1996年冬号.「懸命にゲイになること」『現代思想』1997年3月号.『ゲイ・スタディーズ』(共著)青土社,1997.

「1998年 『ゆらぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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