資本 (思考のフロンティア)

著者 : 崎山政毅
  • 岩波書店 (2004年7月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270083

作品紹介

グローバルな資本制の勝利は、わたしたちに何をもたらしたのか。社会主義体制の崩壊とともに失効したかに見えるマルクスの思考-その可能性の理論的鉱脈をアクチュアルな問題群に連結し、現代資本制批判のための新たな領野に解き放つ。『資本論』価値形態論の読解を通して、資本の支配に対抗する、変革のための条件をさぐる。

資本 (思考のフロンティア)の感想・レビュー・書評

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  • 第1部は、マルクスの『資本論』における価値形態論を読み解くことで、資本制社会における物象化・物神化の進行する仕組みを批判的に解明している。資本制社会では、さまざまな商品が価値関係を取り結ぶことによって、貨幣の物神化と人びとの社会的関係の物象化が生じるとともに、そのことが隠蔽されることになる。マルクスは『資本論』の中で、こうした資本制の仕組みを明らかにするとともに、西欧においてそうしたプロセスが必然的に進行してゆくと主張した。

    だが著者は、マルクスが晩年にロシアの女性革命家ヴェラ・イワーノヴナ・ザスーリッチにあてた手紙の中で、資本制の必然的なプロセスに対するオルタナティヴな可能性を示していたことに注目する。マルクスは、根源的蓄積以前の農耕的共同体が大きな位置を占める当時のロシア社会に、西欧の資本制とは異なるプロセスを見ようとしていたのである。

    その後ロシアでは、アレクサンドル2世の暗殺以後の反動によって本源的蓄積が急速に達成されることになり、ロシア革命以後はスターリンの単線的発展段階史観が支配的となって、マルクスが見ていた可能性は忘れ去られることになった。だが著者は、「ザスーリッチへの手紙」に示された、物神化と物象化が支配する共同行為に対抗しうるオルタナティヴな文化的共同体への可能性が持つ現代的意義を追及するべきだと論じている。

    こうした観点に立って、第2部では現代のグローバル資本主義の〈周辺〉で起こっている搾取の実際と、そこから構想されるオルタナティヴな社会への希望が語られる。たとえば「白人」という無徴の規定は、「非白人」という有徴からの反照によって形成される。だがこのときに生じているのは、個々人の主観や意志を超えて、連帯が可能であるはずの人びとが白人/非白人の間の差別/被差別という貧しい権力関係のエージェントにされてしまうという事態である。マルクスの『資本論』は、こうした関係の物象化のプロセスを現代の私たちに教えてくれる。その上で、オルタナティヴな文化的共同体への可能性を探ることが、現代の私たちに求められている課題だと著者は主張している。

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