アジア/日本 (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270120

作品紹介・あらすじ

西洋の衝撃がもたらしたアジアにおける近代の始まり-それは、西洋との間で摩擦と抗争を産むと同時に、アジアの内部にこそ摩擦と抗争、分裂と亀裂を産んだ。アジア/日本の近代経験、またアジア連帯論がはらむ連帯/侵略の両義性を、越境し相互浸透していく近代の力と、それがもたらす矛盾と葛藤をとおして問いなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 明治以来の日本と「アジア」との「思想的連鎖」を粘り強く描き出している。他者を認め、助ける、そのことが実は他者との交流を阻むことになる、という他者との交流の難しさについて、普遍的な問題としても読める本。

  • 【目次】
    はじめに [iii-xvii]
    目次 [xix-xx]

    I 東アジアにおける「近代」の経験 001
    第1章 アジア/日本を論じる視座 001
    1 竹内好の視座 001
    2 「興亜論」/「脱亜論」の再検討 006
    3 近代批判の視座 013
    4 東アジアにおける「近代」 019

    第2章 アジア/日本の亀裂と交錯 024
    1 「世界市場」の衝撃と東アジア相互の「開港」 024
    勝海舟の東アジア提携論/西郷隆盛の「征韓論」問題
    2 甲申政変をめぐる葛藤 041
    甲申政変と自由党・大阪事件/福沢諭吉の文明開化論
    3 世紀転換期の文明開化論 057
    東アジアにおける「文明」と「啓蒙」のネットワーク/沖縄における文明開化論/韓末の三国提携論・「東洋平和」論

    II 東アジア変革論の系譜 075
    帝国主義批判のネットワーク――亜州和親会/「文明」の危機と反帝・民族運動
    第1章 戦間期の帝国改造論 081
    1 民本主義と〈多文化帝国〉論 081
    民族自決論と帝国改造論/帝国主義批判の新たなネットワーク/植民地 / 帝国における「文化」
    2 植民地/帝国における「社会」問題 099
    植民地問題と「社会」問題の交錯/「植民地近代」をめぐる葛藤

    第2章 戦時期の東アジア変革論 114
    1 戦時広域圏論の台頭 114
    満州事変と「五族」論/「植民地なき帝国主義」/社会主義者の戦時広域圏論
    2 「東亜共同体」論をめぐる葛藤 127
    「東亜連盟」論と「東亜共同体」論/「東亜共同体」論における新たな植民地主義/尾崎秀実の「東亜共同体」論/朝鮮知識人の「東亜共同体」論

    終章 世界戦争後の東アジア――冷戦・脱冷戦 153
    戦後日本の「脱亜」路線/冷戦期東アジアの「植民地的開発」/「脱冷戦」期の「東アジア」

    III 基本文献案内

    あとがき(2006年11月 米谷匡史) [187-190]

  •  日本の「アジア主義」の理念を逆手に取りながら、その帝国主義に自省を促す孫文の「大アジア主義」講演の精緻な読解から説き起こして、明治初期から冷戦後に至るまでのアジアと日本の関係に付きまとう、侵略と連帯の両義性を、福沢諭吉の脱亜論から詳細に辿っていく議論は、非常に示唆に富む。近代の衝撃を受け、急速な近代化の道を歩んだた日本が、「文明化」を掲げ、連帯の姿勢を装いながら、結局は植民地侵略を正当化してしまう論理──そこに安重根は「東洋平和」に対する裏切りを見て取ったのだ──が、ネットワーク的に波及しながら、帝国日本の「アジア主義」を下支えしてしまうという構造は、被支配者にまで浸透していく。著者はそのことを見届けたうえで、こうした帝国の構造に対する内在的な批判としての「帝国改造論」、「文明」に対抗する吉野作造らの「文化」の論理、昭和初期の批判的知識人による「東亜協同体論」を、それに対する朝鮮半島の呼応、そこから発する独立の論理なども視野に入れながら読み解いていく。そのうえで、こうした批判的知識人の言論の蹉跌と弾圧が、戦後の新たな植民地政策の波及に結びついているさまを描き出す議論は、非常に鮮やかだ。文献紹介も充実しており、幾重にも傷が刻まれ、引き裂かれ、それとともに矛盾と葛藤を抱え込んできた歴史の現場としてのアジアを見つめ直す足がかりとなる一書と言える。

  • おもしろいです。帝国主義的に膨張していく日本のなかで、朝鮮、中国の自立意識を日本の帝国主義に逆流させて、新しい帝国主義をくみ上げようとしていた吉野らの試みを知れたのは、新鮮だった。そして、問題意識と論理の枠組みは、ほかの研究にも応用がききそうな気がする。

  • 講義をフォローする形での参考書として。通年にわたって受講生するにおいての指南書。そこからさらに膨らませて論じていくことができるか、それがレポート課題を進めていく上でのポイントとなりそう。

  • 近代におけるアジアと日本の関係を述べた本。日本が「脱亜論」以前の「興亜論」を唱えていた時点で、そこにはすでに「植民地主義」が内在していたと提言する。

  • いろいろと考えさせられるエッセンスがギュッと詰まったとてもよく勉強になる本だった。竹内好のアジア/日本論を受けて、‘アジアを西洋列強から救う日本’というナルシシズムの纏わりついたアジア主義者ではなく、また従来の‘アジア主義’の系譜に連なるような人も避け、その他の積極的にアジアの声を聞き、コミットし変革・改革しようとした人たち(福沢諭吉・勝海舟・尾崎秀実・矢内原忠雄など)の矛盾・葛藤も含めた言説を、当時のアジア各国とどのような相互作用があったのかという話とともに、19世紀後半から冷戦後までを紹介しています。やや引っかかってしまったのが‘アジア主義’という言葉で、竹内の一応の定義によると、それは実質内容を備えた客観的に限定できる‘思想’ではなく状況に応じて変化する傾向性ともいうべき、アジア主義と呼ぶ以外に呼びようのない‘心的ムード’で少なくともアジア諸国の連帯の指向を内包している、とあるのだけれど、著者はどう意味づけして本書で著者が取材した人物がどう差別化されるのかという点が、序章で少々混乱してしまった。。。あと甲申政変・甲午改革の失敗は、本書が言うように確かに日本側からすれば挫折であり脱亜の契機となったけれど、朝鮮側からすれば日本に依存した少数のエリートによる国民的合意の無い、上からの改革運動から脱皮して大衆化したより啓蒙主義的な独立協会の運動に発展したという肯定的な側面は否定できないと思うのだけれど。‘相互作用’や‘絡まりあい’の範囲を広げていくと、なかなかなかキリが無いと思うし、個人的に多分やや朝鮮贔屓なのでこういうところが気になったりもするのかもしれないけれど。

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