スターリニズム (ヨーロッパ史入門)

制作 : Graeme Gill  内田 健二 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000270939

作品紹介・あらすじ

ソ連邦崩壊以降、「スターリニズム」という言葉は以前にも増して侮蔑と非難を込めて使われがちである。この言葉を歴史学上の概念として学問的に使用するために、押さえておくべき点は何か。本書は、スターリニズムをソ連の政治・経済・文化・社会生活の四分野において区別して特徴づけたうえで、それらを重層的に捉える視点を提示する。

感想・レビュー・書評

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  •  ソ連が、レーニンや亡命ユダヤ人たちが追い求めた自由の国から、全体主義国家と粛正の嵐へと変化する過程には何があったのか。そうした疑問に対し、スターリン体制が答えとして引き合いに出される事が多い。いわゆるスターリン主義とは一体なんなのか。ナチス・ドイツにおけるヒトラー体制と同様にイデオロギー的な議論と推測、感情論の入り乱れる問題を、政治、文化、経済、社会という四つのスターリン主義をあげ、それぞれの分野でスターリニズムが形成される時期は異なり、内容的な変化もあると主張する本著はスターリニズムとは何なのか、理解しやすい概要書である。スターリニズムにおける政治行政機能として、求める成果さえ出せば後は何をしてもいいという、制限付きでありながらもある意味で、各地方の責任者に多くの自治権があったという指摘は、現在のプーチン体制にも当てはまるように思う。また、著者の定義付けるスターリニズムの四つの分野の定義とプーチン体制を比較するのも興味深いだろう。しかし、著者の言うようにソ連の構造と土台になったのが、その(ソ連体制)形成期のスターリンの独裁とテロルというものに依拠していた以上、政治制度や社会は否応なくそれに適応してしまい(というか土台がそれ自身であるので)、従ってソ連体制の安定は、フルシチョフのように自らの敵をテロルや独裁なしに排除しようとすれば失敗し、ゴルバチョフのように大衆を動員しようと思えば、今まで大衆の意見を吸い上げる機能を果たさなかった政治制度や社会の問題から対応できない。即ち、スターリニズムに基盤を置くソ連体制の安定性は、独裁とテロルしかないという皮肉な指摘は、まさに現在のプーチン体制を指摘しているようでもある。

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