大人にはわからない日本文学史 (ことばのために)

  • 岩波書店 (2009年2月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784000271011

作品紹介・あらすじ

過去の堆積としての文学史を語り直すでもなく、文学史と無関係に新しい小説を読むのでもない。一葉からケータイ小説まで、リアルを刻み続けた百年の営みの、過去と現在とを対話させるすべはないだろうか? 著者年来の宿題がいまついに試みられた、来るべき千年のための日本文学史序説。

みんなの感想まとめ

文学の過去と現在を対話させる試みが、さまざまな作家や作品を通じて展開されます。樋口一葉から綿谷りさ、石川啄木から田山花袋、さらに太宰治や耕治人に至るまで、多様な文体やテーマが意表をついた形で論じられ、...

感想・レビュー・書評

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  • 樋口一葉 と 綿谷りさ
    赤城智弘 と 石川啄木、
    斎藤茂吉 と 穂村弘
    ケータイ小説 と 田山花袋
    志賀直哉、太宰治 と 耕治人

    それぞれの文章、文体が紹介され
    その共通点、相違点
    いずれも意表をつかれる形で
    論じられていく

    へぇーっ
    そんなふうな読み方があったのだ
    へぇーっ
    そんなふうな押え方があったのだ
    確かに
    「日本文学史」の一冊です

  • 高橋源一郎らしい読みやすい文体。文体に反して、内容は高度なものと思われるため、近代文学の最低限の知識がないとつまらないかもしれない。私は、直前に読んだ作品の流れで、予備知識なく手に取ったが大正解。
    『沈む日本を愛せますか?』で日本を語ったストレートな切り口が、何処から育ったものか、彼が読み貯めた知識とどうそれを体系化するのかというような高橋源一郎の歴史観の成り立ちが垣間見えた。
    専門分野から非専門分野を見る時の姿勢は学びたいものだ。
    後半は特にすごい。近代文学の終焉を私は肌に感じながら、ただ何処か憂いていた。そして、新しい作品達をあれは文学なのか?と多少見下していたかもしれない。綿矢りさも平野啓一郎も、とにかく、全く理解できなかったから。
    その全てが紐解かれている。綿谷りさらがもたらす近代文学の終焉、そして、それはおそらく新しいものの誕生を意味する。私は、終わるものを憂いてよいことを知り、さらに新しいものを理解するヒントをえた。なるほど!
    文学の幕替えには時代の背景がある。確実に近代の歴史は終わっていく時にあり、その混沌とした時代をどう生きるか、私は人生の後半で楽しむのだ。残念ながら、私は最後の近代側の人間と自覚もしたわけだが。

  • p.2009/2/23

  • 率直に言って、自分の読む力がここに書かれていることに対して不足しているせいだと思うのだが、いまいち何を言っているのか理解できなかった。序盤、樋口一葉と綿谷りさの話あたりはまだついていけてた感があるし、恋空と道草よりも、恋空と蒲団の方が近い、とか部分部分で面白いと思う箇所もあったけど、私小説という言葉の理解とか例として引用されている作品そのものに対する知識の無さなども相まって、スッキリしないまま終わってしまった。

  • 日本文学史と銘打っているけれども、文学史を年表のように連ねて書かれたものではなく、時代の変化と小説の変化を、なんとか輪郭のあるものとして捉えようとした文学論だ。時代が変わっても変わらない要素と、時代に沿っている何か。作者はそれをソフトウェアとOSにたとえる。「自分はOSで小説を書いているわけじゃない」という批難も受けたそうだけれど、小説を書く人間は確実に自分の筆が、コンテクストとも言って良い何かに沿っていることを強く意識しているはずだ。

  • 日本文学が今どうなっているのか、どこへ向かおうとしているのか、昔の作品と今の作品の違いはあるのか等の日本文学をめぐる流れに自問自答しつつ、その答えとなるものを探し求めようとした試みである。
    必然的に引用が長くなるのは仕方がないにしても、読み進めるうちに些か煩雑になってくる。ことほど左様に、文学史の「今」を見つめる作業は難しい。

  • 面白かった。文学が繰り返し煉瓦の様に積み重ねられて進化して行く具合を仰ぎ見るようだった。上の方に行くほど(新しくなるほど)理解できないブロックもあったが、言葉の変化ってこんな風に見たことないから楽しかった。

  • [ 内容 ]
    この本では、一葉、啄木などの「過去」の古典作品を、「現在」に遊びに来るよう呼び出し、「現在」の小説には、「過去」に行って古典作品と交流させます。
    現代の文芸批評を先導する著者が、文学史の陳列棚に並べられた古典作品と現代の最前線の小説を自在につないで、小説を読む本当のたのしさを味わって貰うための一冊。

    [ 目次 ]
    はじめに―『大人にはわからない日本文学史』のできるまで
    1日目 「文学史」を樋口一葉で折りたたむとすれば
    2日目 「文学史」が綿矢りさを生み出した
    3日目 小説の文章が最後にたどり着いた場所
    4日目 自然主義をひっぱたきたい
    5日目 「日本文学戦争」戦後秘話
    6日目 小説のOSを更新する日
    7日目 文学史の「晩年」から次の千年の文学へ

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 近体日本文学史を高橋源一郎が解説している。

    明治17年 三遊亭円朝「牡丹灯籠」で始まった近代日本文学は、約10年後の明治28年に樋口一葉「たけくらべ」を生み、さらに10年後の明治38年には夏目漱石「吾輩は猫である」「草枕」、田山花袋「蒲団」、島崎藤村「春」などの絶頂期を迎える。そんな近代日本文学の流れの中で、樋口一葉の作風は異色であり、それは「自然主義リアリズム」の手法に則っていないからだが、そのことがかえって現代でも色褪せない樋口作品の「リアル」さとなっている。
    樋口一葉から100年後、綿矢りさ「インストール」が発表されるが、綿矢りさの手法は、樋口一葉や国木田独歩「武蔵野」の「自然主義リアリズム」の手法から外れたリアルさと共通する手法が用いられている。
    そして、高橋源一郎と保坂和志は、綿矢りさの「You can keep it!」という作品を「この短編で日本の近代文学は息の根を止められた」と評価する。

    小説作品を「ソフトウエア」、近代文学という土壌を「OS」に例えて、現代文学はあたらしい「OS」に取って代わられたのだと論説している。

    実際に小説の文章を抜粋し、解説しているので、どの作品のどこがどう優れているのかがよく理解できた。どのような文化的土壌のから養分を組み上げているのかが作られる小説の表現方法や価値を決める根底となるという主張もよくわかる。

    しかし、個人的には1990年台に大きなパラダイムシフトが生じているのか、どうもそのあたりはピンとこなかった。

  • 小説の「OS」ってのが難しかった。

  • 「象のあし」にて購入。これから読む。

  • おおきなながれのなかにいながらしずんでいくような読後感。

  • (2010: 渡辺正人先生推薦)

  • おもしろかった、買ってもう一回読み直したい。

  • 高橋源一郎さんの日本文学論。

    樋口一葉への高橋さんの視線は以前から濃いものがありましたが、それが同時代の小説から見ても異質であるということから来たものであることがようよう分かったように思います。そして綿矢りさをその時代の「リアル」を描くという点において一葉と同じく正当な「リアリズム」の継承者として置いてしまうのも何となく納得してしまうのです。
    (だからといって綿矢りさやましてや樋口一葉を読もうと思わないところが、私の「文学」との距離感なのかもしれません)

    高橋さんはさらに進めて、日本近代小説以降100年の「小説のOS」という観点を持ち出します。これまでの高橋さんの書いているものを思い返すと、確かに「小説のOS」とも言うべきものに徹底して真摯に自覚的であろうとする姿勢を感じることができます。
    そして、「小説のOS」の更新という論点において、"新しい小説"の例として取り上げられたケータイ小説『恋空』を、評価しているとまでは言わないけれども、一定の時代的な意義を認めているところも意外な感があります。ただ、よく考えると一時漫画のポップ性を評価していたことを思うと意外ではないかもしれません。また、『恋空』に対する論評が、『アーキテクチャの生態系』(濱野智史著)での全く違う問題意識から発出した論評にひどく似ていることにも少なからず驚きました。ケータイ小説の意義を高橋さんが「自他の区別の消滅」と捉え、濱野さんが「内面の消失」としているものが同じことを言っているように思えるのです。

    高橋さんは、現在を文学史の「晩年」とし、明治中期の近代小説の「始まり」以降の節目として捉えようとしている様です。それがどういう意味を持つのか私には分かりません。

    毎度なのですが、やはり高橋さんは特別かな、と思える本でした。

  • とてもわかりやすかった。
    やはり今のはやりって、一葉のやったことですよ。
    ファッションと同じく、時代は同じ流れ。


  • 購入日:2009/4/19
    購入者:桃色博士

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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