ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

制作 : 清水 真砂子 
  • 岩波書店 (2006年4月7日発売)
3.68
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  • 本棚登録 :901
  • レビュー :152
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000280716

作品紹介・あらすじ

アースシーのゴント島に生まれた少年ゲドは、自分に不思議な力がそなわっているのを知り、真の魔法を学ぶためローク学院に入る。進歩は早かった。得意になったゲドは、禁じられた呪文を唱えてしまう。

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)の感想・レビュー・書評

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  • 一応大学では「英文学」なんちゅうモンを学んだ KiKi が児童文学を自分の後半生のライフワークの1つと思い定め「岩波少年文庫全冊読破企画」をぶち上げた頃、残念なことにこの作品は岩波少年文庫のラインナップには含まれていませんでした。  「何故??」と思いつつもないものはしょうがない・・・・と諦め、こちらのソフトカバー版で Box 入り全冊を買い揃えました。  その後数年してジブリ映画の影響もあってかこのシリーズが岩波少年文庫のラインナップに含まれた時、KiKi がどれほど歯ぎしりしたことか!!  商売って言うモンはこういうモンと思い知らされた1つの印象深いエピソードとなりました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

    ルイスの「ナルニア」、トールキンの「指輪」と並んで、三大ファンタジーと呼ばれることもあるこの作品。  実は KiKi が初めて出会ったのは大学時代でした。  もっともこの作品に子供時代に出会っても何が何やらチンプンカンプンだったかもしれません。  それはとりもなおさず、子供時代の KiKi がゲドと同じように「明るさ」、「カッコよさ」、「美しさ」に惹かれ、物を測る尺度のかなり大きな部分が「役に立つか否か」だったことに寄っていたからです。  そう言う意味では子供時代の KiKi にはゲドが出会う師たちの言葉の1つ1つがゲド同様にピンとこなかったような気がして仕方ない・・・・・ ^^;  と、同時に影の正体が何なのか?は分からずじまいだった可能性もあるような気がしています。

    でも、幸いなことに KiKi がこの物語に出会ったのは大学時代でした。  そういう意味ではユングやフロイトも少しは聞きかじっていたし、哲学的な思考というやつもわずかながら芽生えていたし、更には自分の身の回りで起こっていることを懐疑的に考え直してみるという姿勢も少しずつ生まれていた時代に読んだことにより、印象に残る作品の1つになっていたように思います。

      

    今回、久々にこのシリーズを手に取ってみたけれど、やはり多くのことを考えさせられる読書体験となったように思います。  まず、この物語の中で扱われている「魔法」の概念が素晴らしいと思うんですよね。  魔法をかけるためにはそのものの真の名前を知らなくてはいけくて、例えば魔法で食べ物を出すこと、それを食べて味や香りを楽しむことも、満腹感も得られるけれど、所詮その正体は「言葉」でしかなく飢えた人間を本当の意味で癒しはしない、言葉を食べているだけのこと・・・・・という考え方。  

    又、自分の都合の良いように魔法で天気を変えるのはたやすいことだけど、それはいかにも利己主義的な考え方で、その行為が別の場所での天気をも左右し、いわば宇宙の均衡を崩しかねないものであるという考え方は素晴らしいと思いました。  結果、真の賢者と呼ばれるレベルの魔法使いになればなるほど魔法を使うことに躊躇するようになるというこのプロットは実利主義、科学万能主義、効率主義で成り立っている現代の私たちの生き方に与える1つのアンチテーゼであると感じられました。

    さらにはまだまだ幼さが残るゲドが類まれな魔法使いの資質と思春期特有の過ぎた虚栄心から、大いなる災いである「影」を招いてしまうというプロットにも多くを考えさせられます。  「地位」、「名誉」、「金」、「才能」というようなある種の「力」を手にすると、人間というこのしょ~もない生き物はとかく高慢になりがちで、それゆえに陥りがちな「妬み」、「自尊」、「虚飾」というものがあり、結果的にはそれに踊らされてしまう自分にある時ふと気がつかされる・・・・・。  そういう体験は多かれ少なかれ誰にもあるもののような気がします。  逆にそれらの「力」と無縁であればあったで「嫉妬」、「不公平感」に苛まれるのもこれまた人の性です。  

    ゲドが恐れる「影」は、ゲドが抱える驕りや不安、劣等感や恐怖、未熟さや喪失、さらには死というような負の力の集合というように解釈できると思うんだけど(もっと言うなら自分が見落としてきたこと、自分が蔑んできたこと、自分が排除してきたこと、そういうものの全体かもしれない)、それらは決して「善 vs. 悪」とか「光 vs. 影」というように対立するものではなく、片方があれば必然的にもう片方も同時にあるというようなものに過ぎなくて、それから目を背け逃げようとすべきものではなくまして立ち向かい受容すべきもの(克服するというのともちょっと違う)という考え方にも共感が持てます。  結局はその影自体も最初からゲドの一部なんだということが、実に見事に描かれていると感じられました。  ゲドがその自らの「影」を狩りに行く前に彼の師であるオジオンの語る言葉が、齢5xを迎えた今の KiKi には実に真実味のある言葉として響きます。  曰く

    「もしも、このまま、先へ先へと逃げて行けば、どこへいっても危険と災いがそなたを待ち受けておるじゃろう。  そなたを駆り立てているのはむこうじゃからの。  今までは、むこうがそなたの行く道を決めてきた。  だが、これからはそなたが決めなくてはならぬ。  そなたを追ってきたものを、今度はそなたが追うのじゃ。  そなたを追ってきた狩人はそなたが狩らねばならぬ。」


    一時期、女性誌なんかには「自分探し」とか「本当の自分」とか「自己実現」という言葉が躍っていた時代があったけれど、KiKi にはこの精神こそが本当の意味での「自分探し」、「自己実現」だと感じられます。

    さて、今回の読書までほとんど気に留めたことがなかったんだけど、今回の読書で実に印象に残ったことがあります。  それはゲドが最初から何故か敵愾心を燃やし、「影」を呼び出す禁断の呪文を使うきっかけを作るに至ったヒスイという魔法学校の先輩のことです。    ゲドをあざけるような慇懃無礼な態度や、育ちの違いから滲み出る洗練された(というよりキザな?)物腰、ゲドより年長でより多くを学んでいるために実際以上に輝いて見えたであろう魔法の力などが、ゲドの対抗意識を煽ったわけですが、結果的に彼の行く末は「いっちょまえの魔法使い」ではなく、アースシーの中の1つの島の「領主お抱えのまじない師」レベルでした。  最初から、ゲドやカラスノエンドウ(ゲドの親友)の敵ではなかったわけですが、彼はゲドが「影」を呼び出すきっかけを作ったのみならず、彼の存在そのものがゲドの「影」の一部を具現化した存在だったのかもしれないと感じられました。



    さて、最後にこの本の宮崎駿さんの推薦文をご紹介しておきましょう。

     

    この物語ほど竜を見事に描いた本はありません。  人間よりはるかに古い生き物。  壮大で邪悪で、気高い長虫。  鋼のウロコにおおわれた身体の中では炎が燃えています。  この竜を形にすることが今でもできません。  ありきたりのコーモリの翼をもったトカゲにしたくないのです。  かと言って日本や中国の竜とも違います。  竜がこの物語の世界をとても奥深くしているのです。
      


    それで息子さんにこの作品のアニメ化を任せて、結果、ああなっちゃった(KiKi はジブリアニメは観ていません。  ここで言う「ああなっちゃった」とはスタジオ・ジブリと著者のスッタモンダの話です。)んでしょうか??  結果的にどういう映画だったんですかねぇ・・・・・。  Lothlórien_山小舎の近くにはレンタル・ビデオ店な~んていう洒落たモンはないので、なかなか観る機会がないんですけど、一度は観ておきたい気がしないでもない・・・・・(苦笑)

  • これは素晴らしい物語だと思います。
    言葉の大切さ、ものごとと向き合うことの大切さを教えられました。
    影の正体に脱帽。
    むしろ、大人のための物語ではないかと思いました。

  • 竜王と大賢人のふたつの名を持つようになるゲド。
    彼が名声を馳せるようになる前、幼く若いころのゲドの話。

    最初は傲慢で力に自信も持っていたゲド。魔法の学院ローグで学んだ彼は着実に力を付けていた。
    しかし、敵対心を持つヒスイの言葉に対抗してゲドは死者を呼び出す呪文を唱えてしまう。
    その呪文とともに現れたのは、死者だけでなく、彼を今後追いかけ破滅させようとたくらむ影をも呼びよせてしまう。

    前半はゲドが成長していく話、後半はゲドと影との戦いの話。

    久しぶりにファンタジーを読んで、童心に戻った気分です。

  • 色んなことに迷っていた中学生の時に読んだ作品。影というものが一体なんなのか分からなくて、首を傾げながらも独特な世界にのめり込んでいったのをよく覚えてる。最後にゲドが影を両手を広げて受け入れて、影と同じ名前を叫んだ時は本当に衝撃だった。色々と文句を言っていた、まだまだ子供だったあの時の私にとって、他人よりもまず、自分自身を受け入れることが大切だと気づかせてくれた。

    まずは自分なのだろう。

    自分自身というものは、なかなか自分でも受け入れがたいもので、醜い部分というのはどうしても目を背けたくなるもの。
    けれど、それを受け入れられて初めて自分というものに気付いて、他人という存在を受け入れるきっかけになる気がする。

    中学生・高校生の思春期の時期に読むとこの衝撃が凄い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「自分自身を受け入れる」
      そうですよね、若い人にこそ読んで貰いたい一冊。
      見栄を張っても、嫌な部分を隠しても、結局は全部自分に返ってくる。
      あるがままの自分を受け入れるコトで楽になれる。そうすればイジメみたいなものは、なくなっていくでしょうね。。。
      2013/04/18
  • すでに古典なので、ネタバレでもないと思うけれど、一応ネタバレあり。
    「世界の理は、真の名に支配される」という一つのネタを元に、丁寧に作り上げられた世界観がすばらしい。魔法でできること、できないこと。魔法使いになるための勉強の内容。真の名により、竜との戦いの形勢が一気に変わるところ。世界が矛盾なく作り上げられている様が「美しい」。ハリーポッターは読んだことがないけど、世界観に関してここまで書き込まれているようには思えない。というか、ゲド戦記のような作品が先達にいると、同じ方向での勝負は辛いかも。
    さらに、この第一巻の完成度が高いのは、主軸である「影」との戦いにおいても、「真の名」が中心的な役割を果たしていること。最後の最後まで、「影」との戦いがどう決着するかが分からないまま進めておきながら、最後に名前を呼ぶところで、(何か、だまされてるような気がするくらい)一気に、物語としても決着させてしまう。世界観、物語作りにまでテーマが一貫していて、さすがに名作として名高いだけのことはある。
    一点心配は、第二巻以降でもこの完成度が維持できるのかということ。でも、この先も期待して読み続けてみよう。

  • ファンタジーを最後まで読めないのでなかなか自信がなかったがとりあえず第一巻はクリアー。
    ゲドが精神的に成長し洗練されていく様子、自分で運命を未来を切り開いていく力強さ、たくましさ。そういったものが余すことなく描かれている。ゲドの師匠たちの寛大さ、口数は決して多くはないが刺さる言葉の数々。
    こういった深さで永く読者を引きつけているのだろうと思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      私は最初の3巻の中では、2冊目の「こわれた腕環」が一番好き。
      それは兎も角、全て素晴しいので、ゆっくりと味わいながら読んでください。
      2012/07/09
  • 映画があまりにもよくわからなくて、
    読み始めてしまった。
    したらまぁおもしろいおもしろい!!
    ファンタジーも翻訳ものもそう得意じゃないはずなのに、
    夢中で読みました。

    私も「影」と戦わなくては。
    せめて対峙しないとね。

  • 広くてどこか禍々しい海に覆われたアースシーに生きる魔術師の物語。魔法は世界の摂理への介入であり、危険な反作用を常に伴う。傲慢さは自らの内から影を引き出し、影は破滅か、影を救済するかの二者択一を迫る。そこには安易な抜け道はなく、助けもない。たった一人で立ち向かうしかない。

  • 借 姉

  • やっと読めた。
    ぜい、はぁ、ぜい、はぁという感じで。

    前半が、読んだことはないし、映画もまともに見たことがないというのに、ハリーポッターみたいだなと思ってしまい、なかなか物語に入り込めなかった。

    でも、ゲドが影と再び出会い、傷つけられた後からが、なかなか。

    心に残る台詞もたくさんでてくる。

    「闇を倒すのは光だ。ひ、ひ、ひかりだ。」

    と、誘惑に落ちる寸前に言ったゲドの不器用ながら本質的な言葉。


    ハヤブサになって師の元に帰り、やっと元のゲドに戻った時の二人の会話は一番好きなシーン。

    「やあ、来たか。」
    「はい、出ていった時と同じ、愚か者のままで。」


    影の正体は、ある時ほとんどの読者に気づいてしまうだろうけど、均衡についてとか、ところどころなんだか倫理的過ぎるけども、哲学的で興味深く読む事ができた。

    でも、しばらくは続編に手はでなさそうです。高校生くらいの悩める男子が読んだら、ずっと心に残るんじゃないかしら。

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