おいしい水 (Coffee Books)

  • 岩波書店
3.22
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本棚登録 : 258
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (85ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000281720

感想・レビュー・書評

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  • 初恋の甘酸っぱさではない、オレンジスパイスの香り漂うボーイ・ミーツ・ガール。
    旧いフランスのフィルムのような、レオス・カラックスの映画のようなお伽噺。

    珈琲とブラジル音楽が好きな僕。
    Coffee Books というレーベルから出版され、タイトルは『おいしい水』 そして著者が原田マハさんとくれば、これは手に取らざるを得ない。

    Bossa Nova とはポルトガル語で「新しい隆起」という意味らしく、音楽としての新しい傾向を表す言葉だったらしい。
    意味合いとしては New Wave に近いのだろう。

    残念ながら、この『おいしい水』の出版元は新潮社ではなく岩波書店。
    返品不可という岩波書店の流通上のリスクから、まちの小さな本屋では取り扱いが少ないかもしれないこの本。
    わずか80ページ余の物語にして1500円という価格からなかなか手は出しづらいが、図書館で見かけたら借りてみてはいかがだろうか。

    新書判よりも少し大きめの薄いハードカバー。
    優しい色合いと適度なおもさ。
    どこかの港町の教会で焼かれたサブレの代わりに、珈琲のおともに添えたい。

    伊庭靖子さんの挿画も素晴らしい。
    カメラのファインダーから覗いた日常を、そのまま切り取ったような油彩が物語に呼吸を与える。

    短い作品なので内容には触れない。

    思いがけず風邪をひいて寝込んだ週末。
    それでも寝床では片時も本が手放せなかった。
    熱に浮かされた身体にとって、この本はまさに隅々まで沁み渡る『おいしい水』だった。
    六甲から流れ落ちる澄みきった岩清水。
    甘く爽やかな口当たりのなかに、浮かべたピールの心地よい苦みがほんのり残る。

    • すずめさん
      kwosaさん、こんばんは!
      すずめと申します。
      フォローしていただき、ありがとうございます(*^^*)

      原田マハさん作品は『楽園...
      kwosaさん、こんばんは!
      すずめと申します。
      フォローしていただき、ありがとうございます(*^^*)

      原田マハさん作品は『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』に夢中になったものの、まだそれ以外の作品は読んだことがありません。
      kwosaさんのレビューを拝見して、次の原田マハ作品はこれだ!…と心に決めました。

      私もフォローさせていただきました。
      これからもときどきkwosaさんの本棚におじゃまさせてくださいね♪
      2014/02/24
    • kwosaさん
      すずめさん!

      コメントとリフォロー、ありがとうございます。
      そして僕の拙いレビューが、すずめさんの読書のお役に立てることが何より嬉し...
      すずめさん!

      コメントとリフォロー、ありがとうございます。
      そして僕の拙いレビューが、すずめさんの読書のお役に立てることが何より嬉しいです。

      こちらこそ、すずめさんの本棚にはときどきおじゃまして参考にさせていただくと思いますので、これからもよろしくお願いします!
      2014/02/25
  • ふと恋愛小説が読みたくなり、ブクログのレビューで気になっていた本書を読み始めました。
    たった85ページの物語なのに、読み終えたときには映画を観た後のような切なさと気だるさを感じていました。

    よく通う喫茶店にいる憧れの人との何気ない恋愛を描いたストーリーかと思っていたら、後半で自分の知らない世界にふわっと持ち上げられ、やや戸惑いつつ読了。
    19歳でこんな恋をしてしまったら、その後の恋を物足りなく感じてしまうのでは…と心配になってしまうくらいドラマチックでした。

    本気で人にぶつかっていくことのパワーを見せつけられた気がします。

    • kwosaさん
      すずめさん

      >切なさと気だるさ
      >自分の知らない世界にふわっと持ち上げられ、

      そうそう、まさにこの感じが昔のフランスの映画みた...
      すずめさん

      >切なさと気だるさ
      >自分の知らない世界にふわっと持ち上げられ、

      そうそう、まさにこの感じが昔のフランスの映画みたいだと思ったんです。

      原田マハさんの、芸術を主題に取り扱った最近の作品たちはまだ読んでいないのですが、また随分と雰囲気が違うのでしょうね。
      とても惹かれます。
      2014/03/18
    • すずめさん
      kwosaさん、コメントありがとうございます☆
      確かに、昔のフランスの映画って表現がぴったりですね!
      私はkwosaさんとは反対に、原田...
      kwosaさん、コメントありがとうございます☆
      確かに、昔のフランスの映画って表現がぴったりですね!
      私はkwosaさんとは反対に、原田マハさんの芸術をテーマにしたもの以外の小説は本書が初めてなのです。
      そのほかのマハさん作品もこれから読んでいきたいです。
      2014/03/18
  • 原田さん2冊目。
    =Coffee books 文学とビジュアルが切り結ぶ、
    おとなたちへの贈り物=
    何度見ても写真にしか見えない伊庭さんの画。
    丸ごと美術作品のような素敵な一冊。


    神戸 エビアン STILL&MOTION ベベと安西  

    なんでこんなに泣けるんだろう。
    読んでいる間 時が止まってしまったみたいな
    不思議な感覚になりました。

    手渡されたラズベリーキャンディーの缶のシーンで
    もう涙腺が崩壊してしまった。

    全部で85ページなのに、三度も泣けた。
    「だからおれ、もう安西に会われへん。明日から、永遠に」

    そんな・・・そんなことって。

    85ページにぎゅっとおいしい水がつめこまれている。
    原田さんもっと読んでみようと思う。
    エビアン飲みたくなりますよ♪

    • kwosaさん
      まっき~♪さん!

      本棚への花丸、ありがとうございます。
      そして、まっき~♪さんのレビューを心待ちにしていました。

      >85ページにぎゅっと...
      まっき~♪さん!

      本棚への花丸、ありがとうございます。
      そして、まっき~♪さんのレビューを心待ちにしていました。

      >85ページにぎゅっとおいしい水がつめこまれている。

      うんうん。
      本当にそうですよね。

      僕は図書館で借りたのですが、最初は「こんなに薄い本で1500円って......」って思っていました。
      でも読み終えて、物語と丁寧な装丁、写真のような挿画、その他諸々込みで手元に置いておきたくなりました。

      珈琲タイムに、ふと何度も読み返す。
      そういう本があってもいいと思いました。
      2013/08/07
    • まっき~♪さん
      kwosaさんへ

      こんばんは。

      いえいえ、こちらこそ花丸いつもありがとうございますm(_ _)m

      一冊で三度も泣いたのは久しぶりで、原...
      kwosaさんへ

      こんばんは。

      いえいえ、こちらこそ花丸いつもありがとうございますm(_ _)m

      一冊で三度も泣いたのは久しぶりで、原田マハさんに見事にやられたなぁ・・・と思いました。
      (ある一定の年齢を超えると涙もろくなります・笑)

      本当に本棚に埋もれそうなくらいの薄い本で、この値段。
      でも読み終えたら、手元に置きたくなりますね(*´ー`)挿絵がいくら見ても写真にしか見えなくて、ハイクオリティーですよね。

      コーヒーが飲みたくなるし、エビアンという単語がたくさん出てくるので「エビアン」買いに行きたくなりました(o^∀^)







      2013/08/07
  • マハさんのストーリーとビジュアルを楽しめる1冊。

    19歳の大学生の安西は、通学先の友人たちが興味を持っている世界が自分にとって
    しっくりこないと感じている。
    そんな折、週末ごとに憧れの街・神戸に通い、
    憧れの人・ナツコさんやお気に入りの店・エビアンを知った。
    エビアンにはカメラマンらしき素敵な男の子のベベがいて、
    最初は眺めているだけの存在だったけれど、
    ある出来事によって思わず声をかけることに・・・。

    柔らかなくせっ毛、細い指、長い睫、伏し目がちなまなざし。
    べべのまわりは光に包まれ、彼がいるその場所だけを強く感じることが出来る。
    恋の始まりは突然訪れ、幸せな気持ちと不安の間を彷徨いながら、
    今が最高に幸せであっても、やっぱり不安や哀しみの空気がなくならない。

    きらきら輝く19歳の恋のかたちを文章とともに表現する、伊庭さんの画。
    まるで写真のようで、つやつやした光が印象的だ。
    特に気になるのは、白い磁器や硬質なプラスチックに宿る光。
    彼女の初々しく、硬い感じのする心もちを表しているようだ。


    私は大学生になったとき、初めて定期を持った。
    いつでも定期の区間を乗り越して、通学先のその先まで行けると思っていた。
    5月の晴れた日。
    こんな気持ちのいい日に、授業を4コマ受けるなんて・・・。
    終点まで行っちゃおうかな・・・。砂浜はさぞ気持ちいいだろう。
    けれど、結局ぐずぐずしているうちに、いつものようにいつもの駅で降りて、
    授業を受けるのだった。

    今から思えば、ただただ時間を持て余していたときもある。
    高校生よりも自由で、少し大人のまねをして
    社会人になってからの自分が想像できなくて、不安になりながらも
    暢気に過ごしていた。
    人を好きになることも、少し広がった世界の中で人に出会うことも
    きらきらした光の中のできごとだったのかもしれない。

    現在の大学生を本やTVなどで見聞きしていると、私のときと比べものにならないほど忙しそう。
    それでも楽しいことや思いもよらぬ出会いに彩られて、
    心に残る4年間を過ごしていると信じたい。

  • 舞台は神戸、10代最後、冬の恋の物語。
    「おいしい水」に気づくには、10代ではまだ早いのかな、なんて。

    カフェでコーヒーをか片手に1時間ほど、余韻ととも味わいたい一冊。
    肩書に「Coffee Book」とうたわれているのが、なるほどと。

    あとは、挿絵にはびっくりしました。
    柔らかな自然光に包まれた、一見すると写真のような。

    というか、私は写真と信じて疑わなかったです、
    物語中に「写真家」さんもでてきたりするので。。

    画家さんは伊庭靖子さんという方、ちょっと不思議な感覚でした。

    ん、離れてみて初めてわかる「光の場所」、
    それが微かなせつなさを残してくれました。。

  • いかにも女性誌の広告欄に載っていそうなライトな話。
    と思って読み進めていたらとんでもなかった。

    神戸の震災の少し前、ということで
    日本という国が大きな痛みを負う直前、なんとなくキラキラしていた頃だろう。
    憧れのナツコさんのライフスタイル、ベベの造形や人物像など
    設定とかキャラクターが読み方によってはお伽噺になってしまいそうなところだが
    ちょっと背伸びをするキモチ良さと痛み、真剣に人を恋い慕うことの尊さ、などなど
    忘れたくないものがぎっちり詰まった、とてつもなく濃密な物語だと思う。
    その濃密さがこの分量に収められている不思議、
    そしてそれこそおいしい水が浸み込んでくるように
    話の余韻がじんわり浸みてくる不思議。
    手に取ってよかったと思う本だった。

    表紙や挿画はてっきり写真だと思っていた。
    絵だと判って吃驚。

  • 物語るフォトグラフを一枚、一枚、眺めていた様な、
    そんな切ない読後感。

    イラストが秀逸!
    ずっと、写真かと思ってた…。

    • kwosaさん
      MOTOさん!

      あのイラスト、凄いですよね。
      僕もずっと写真かと思っていました。

      >そんな切ない読後感。

      ですね。
      読み終わったあと、...
      MOTOさん!

      あのイラスト、凄いですよね。
      僕もずっと写真かと思っていました。

      >そんな切ない読後感。

      ですね。
      読み終わったあと、アストラッド・ジルベルトの『おいしい水』をBGMにすると、映画のエンドロールのような余韻に浸れますよ。
      一度お試しあれ。
      2013/06/27
    • MOTOさん
      kwosaさんへ

      coffee bookと書いてあったから、
      コーヒー入れて…
      ゆっくり一杯呑み終わる頃に丁度読了、って、
      (なんかいい感...
      kwosaさんへ

      coffee bookと書いてあったから、
      コーヒー入れて…
      ゆっくり一杯呑み終わる頃に丁度読了、って、
      (なんかいい感じだな~)

      なんて、思ってみたり♪
      イラストが…
      柔らかい光にただ、くるまってるだけのひたすらな静かがすごく心地よくって♪

      でも、そろそろ寂しいな、と思ってたトコでした♪
      タイミング良く、いいBGMのご紹介をありがとうございます!^^♪
      2013/06/28
  • 携帯も、パソコンも、メールも、スマホも、写メも、ラインも、Facebookもない時代。
    異性と知り合うには、親友の力を借りるか、本人にぶつかるかしかなかった。

    何とかかんとか待ち合わせまでこぎつけたのなら、相手が来るま待つしかない。URL貼っといたから席で、とか、LINE見といて、なんてのはない。

    何十分でも、何時間でも、待つのだ。
    コーヒーをとっくに飲み干して、昆布茶を出されても、ただただ相手を待つのだ。

    待ち合わせのお店のマスターも、ある意味雰囲気を作り出す共演者。
    初めて異性と行き付けの店に行けば、ニヤリと粋な合図をくれる。

    昭和って、そうだった。

    そして、時間をかけて相手を知っていく。
    だけど、時間がかかってもわからないこともある。

    「おいしい水」の味は、後になってみないとわからないもの。

    Pコートを映す切ないせつないスライドのマウントは、マハさんの描き出す名画のような風景。

    僕たちはいい時代を生きてきた。

  • 19歳の青春と初恋が美しい神戸の町並みを舞台に描かれている。憧れの女性を真似してみたり、おしゃれな喫茶店の見知らぬ若人にときめいたり、固有名詞が色々出てきて「その写真家私も調べてみよ~」という美術的興味が派生していける一冊。
    ただ、ホモセクシャルの扱いがひどすぎてオチもひどすぎて、わたくしちょっと心配になりました。何だよそれ、あり得ないでしょ。最後は結ばれないから涙と感動はちょっと頂けないですね。簡単に読めてわかりやすく涙できるから、好きな人は好きなんだろうけど。私は合わなかった、it's a new frontier!でしょ。

  • 図書館で手にとった時、その薄さと写真のような画が入っていたことから、エッセイだと思いました。あまずっぱい、それこそレモンのような爽やかで切ない恋愛小説でした。
    “初恋”なのかなぁ。もし、こんな“初恋”体験だとしたら、一生忘れられない綺麗な思い出になるでしょうね。

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著者プロフィール

原田 マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞となり話題になった。

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