- Amazon.co.jp ・本 (76ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000281744
感想・レビュー・書評
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主人公に任されたのは動物園の夜警の仕事。住居は水中のアクリル板の部屋。でも違った。地球の陸は海に沈み,人は遺伝子操作で水棲生物となる。主人公以外全部。ラスト水中で生きられない主人公は肉体から解放され…解釈は自由
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大好きな作家さん・星野智幸氏が、ガルシア・マルケス贔屓だったことをご自身のつぶやきで知り、マルケス氏訃報の新聞インタビュー記事も拝見しました。『水族』を読み返したくなったとの私のリツイートつぶやきに、まさかの星野さんからのお返事が!感激すぎて、アワアワしています(^^;;
というわけで、まずはこれを読んで心を落ち着けようとしましたが…うわーやっぱりいい!
この世界観、近未来的でありながら、原始的で官能的。身体中の海成分?が、泡立つような感覚に陥りました♡
この作品もマルケスと安部公房にインスパイアされているとか。
マルケス作品を読みたいのに、星野智幸さん作品を読み返しそうだわσ(^_^;) -
妻が「最後がよくわからなかった」と述べていた。思うにそれは「物語」的ではないラストだったということではなかろうか。
「物語」というのは歴史もそうであり、基本的にマジョリティにとってのものであると思う。ある視点から(多くの場合は語る側が都合よく)纏め上げるものだ。集約させるためのお話。
この小説の主人公は最後の人類であり、究極のマイノリティである。彼は独りであるがゆえに歴史に近い「物語」は語りえない。ある価値基準から語ることはできない。共有者がいないためである。それでも語るとしたら、それは神話に近いものになる。
クライマックスは「物語」のように集約するものではなく、むしろ拡散していくものだ。最後の人類である主人公は、進化論を逆にたどるかのように変化していく。それは進化でも退化でもなく、ひたすらに拡散していく。それを心地よく感じた。 -
まずこの題名が好き。屋上雨林とか空飛ぶ魚がトカゲを食うっていう絶妙な世界観も好き。私はこの物語を在日コリアン(猿人)と日本人(水棲人)の戒めを込めた寓話物語として読んだ。
いかんせん絵が怖い。風景は影がある色使いで美しく大好きなのだが、魚とか人物の目が不気味にでか過ぎる。夢に出てきそうで困った。 -
主人公の雨利は巨大な水族館の中に部屋(宿直室)を与えられてただ生活するという「仕事」をこなしているが、自分以外の人類は水棲人間として進化していた。地球温暖化に伴う海水面上昇で陸地が無くなった未来を描いた作品。「猿の夢は見る?」とか「息するのはすき?」という奇妙な質問の意味が分かってくるにつれて、心がざわめいた。最初は不思議な世界観が単純に面白そうと思って読み始めたが、最後は罠にはまった気分。竜宮城のような、水中の夢物語のような印象。
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2017.10.01 図書館
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水族館の飼育係が主人公の、奇妙なお仕事小説かと思っていたら…。
ユニークな発想と幻想的なイメージを楽しめる作品でした。 -
素晴らしかった。ワタシは水底というと不穏な感じがどうしてもともなってしまう。代々木に大きな湖があって、その湖は普通の真水ではなく海水で出来ていることはすぐに分かる。水圧でぎしぎしいう施設のことを考えるとこっちも息苦しくなる。その施設で暮らす主人公が自分がどんな存在なのか気がついていくのにどきどきした。近未来小説。イルカから進化した人類の歴史というのがとても面白いと思った。
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以前『俺俺』と『虹とクロエの物語』を読んだ。この作品の雰囲気は『俺俺』の方に近い。ただ、『俺俺』に比べて内容的にも分量的にもこじんまりとまとまっているので、やや物足りない。しかし読みやすいので、著者の物語世界に軽く身をゆだねるにはよい。装丁や挿絵からも、そうしたコンセプトで執筆されたものであり、そういう意味では素晴らしい。