瓦経 (Coffee Books)

著者 :
  • 岩波書店
3.93
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本棚登録 : 34
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (76ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000281768

作品紹介・あらすじ

作為無作為の混濁に、彷徨い、眠り、目覚め、落ちる、掌編六編。

感想・レビュー・書評

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  • 金井田英津子が絵を描いていることも手伝って、『夢十夜』の雰囲気を持つ短編集。漱石の幻想はむしむしと重苦しいものがあるのに比べて、日和さんの幻想はさらりとしていて、冷たい石を口に含むような心地よさがあった。表題作は非常になまめかしい。

  • 一見何の変哲もない話ながら、なぜかはっと息をのむほどの印象が色濃く脳裏に刻まれる短編集。しかし決してカラフルな色彩ではなく、濃淡あるモノクロの世界が目の前に存在している感じで、そのさまはまるで、たっぷりと墨を含んだ筆先から、ぽたっ、ぽたっと落ちた滴が、汚れのない白紙に足跡を残していくようだった。

  • 再読。とうに切ってしまった長い髪が呼びかけてくる黄昏時がある。降り積もる声のありかを探るわたしの手指の先を彼の人が横切る。闇が濃くなるほうへ。黄泉の国へと続く坂道のほうへ。ある地点から先は総てが夜の中である。微睡みの川を幾度も飛び越え、飛び戻りしていると、気づけば忘却と眩暈の渦に呑みこまれている。躰中に具流具流と絡みつく髪。
    涙溢れ、流れても、わたしであるだろうわたしは流れずに残っているのだから、波の月日を独り身で揺られてゆくしかない。
    そこかしこに触れる手指が落ちる。生きている獣の輪郭にあと少し足りないまま。

  • 2015 2/11

  • 『摺墨』『掛軸』『裏白』『放生』『岬』『瓦経』の6つの掌編が収められているが、特に表題にもなっている『瓦経』が良かった。祭りのもつ「異質なものと交じりあう恍惚感」と、光から闇、闇から光へという情景の移動が、幻想世界の彩色を色濃くしている。脈氏の不思議な色気もまた一興。

  • シリーズの中で、物語と絵の素晴らしさが抜きん出て一番(星野智幸もとても良かったけれど、小野田の描く人間や魚の目が怖くて嫌)。
    本作は六つの掌編から成るが、金井田は各作品に合わせ絵のタッチをものの見事に変えている。そして文字の色も一編毎に変えているのも素晴らしい。
    本て物は想像する事により五感が研ぎ澄まされる秀逸な物ではあるが、やっぱり一番は視覚な訳で、その視覚に徹底的に訴えてくるというのは手抜きを感じさせず、本への愛を感じる。

    どの話も味わい深く、未だこの世界から抜け出すことが出来ない。

  • 「夢十夜」や百閒の世界。鏡花ほどゴージャスてはないかな。挿し絵の方もそれっぽい画風だと思ったら、「冥途」や「猫町」の経験者(?)だそうな。とは言え、河童の干物なんて…私ゃごめんだわ。

  • 注文しました。
    (2012年8月30日)

    届きました。
    (2012年9月4日)

  • ネタばれに注意!との事ですが、ワタクシの場合、それらしき話の事さえ書かないので、問題外かな。さて、この『瓦経』日和聡子さんの短編集に金井田英津子さんの絵という事。図書館のあたらしく入った本のコーナーで見つけました。実は読了していない。短編3つまで読んだところ。感想らしきものも、まだ浮かばない。岩波からも、こんな感じ?の本がでているの?って感じです。読了したら記事を書き直そうかな…

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著者プロフィール

日和 聡子(ひわ・さとこ) 
詩人、作家。
著書に、詩集『びるま』(2001年、中原中也賞)、『砂文』(2015年、萩原朔太郎賞)、
小説『螺法四千年記』(2012年、野間文芸新人賞)、『御命授天纏佐左目谷行』(2014年)など。




「2021年 『絵草紙 波風露草玉手箱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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