政治学 (ヒューマニティーズ)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 54
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283281

作品紹介・あらすじ

私たちが「政治」と言うとき、イメージされているものとは何か。権力者の裏取引、市民の参加活動、見えない抑圧、華やかな外交交渉-そのいずれもが「政治」ではあるが、何を念頭におくかで、その姿は変わってしまう。政治が生まれてくる初発の風景、日常生活の視点から出発して、さまざまな「政治」の現象を貫く糸をたぐりよせ、その内実を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 岩波書店の「ヒューマニティーズ」シリーズの一冊。豊富なブック・ガイドを含めて110頁程度である。著者が日本政治思想史を専門としているためか、一般的な政治学の入門書と大きく異なり、日本の礎を築いた思想家が多く取り上げられている。過去に政治というものの理解に困惑を持っていたと吐露している通り、著者の定義は必ずしも明瞭だと言えない。だが、政治という営為が複雑怪奇である以上、正面を切った態度を取ることすら危ういのかもしれない。

    一方で、ある一つの透徹した態度が深層にあるように思える。著者が暫定的に定義するところでは、政治とは「異なる考えをもつ主体どうしが、おたがいに異なることを見きわめた上で、それでも共に生きようとして交渉と妥協をくりかえすこと」(77頁)である。異質な他者との共生を含意していることから明らかなように、これは法哲学者の井上達夫や憲法学者の長谷部恭男がコミットするリベラリズムと問題を共有している。この意味で、「価値観を異にする者どうしが共存を試みる場面では」(78頁)政治の技術としての演技が求められるのだという提示は、リベラリズムが政治を考える上で無視できない。政治という概念を規定すること以上に重要なのは、規定が困難であっても付き合っていかなければならない政治といかに向き合うべきかという問題である。第一章にて政治の日常性を改めて指摘したのは、上記のように読めば頷ける。

    ”時には荒々しい暴力を用いてまで、みずからの生活を確保する、あるいはみずからの主張を通用させようとする欲望のままに生きた方が、少なくとも内面生活に関しては気楽であろう。しかし、演技の仮面をそうしておたがいにはぎとったとたんに、人間は欲望の塊どうしが衝突しあう荒野へと陥ってしまう。「偽善」によって支えられる政治とは、人がおたがいの内にあるそうした不吉な傾向を見つめながら、それでも共存の道を求めようとするさいの、貴重な手段なのである。”(pp.92-93)

  • 高校の「政治経済」と大学の「政治学」の授業を橋渡しするという意図で書かれた本で、政治学のなかから読者の興味を引くトピックをとりあげ、著者自身の観点からなにが問題になっているのかということがわかりやすく解説されています。

    「ヒューマニティーズ」シリーズでは、政治思想を専門とする小野紀明が「古典を読む」という巻を執筆しており、本書を日本思想史が専門の苅部が執筆していることに、すこし奇異な感をいだきつつ本書を手にとったのですが、政治に対してある種の不信感をいだきがちな一般的な日本人の感覚から出発し、それを掘り下げていくことで政治学の重要な問題にいたる道筋がたどられていて、興味深く読みました。

  • 平易な言葉で綴られた、絶好の入門書

  • 本書目次

    はじめに――この本の使用上の注意

    1 日常性と政治――政治学は「役に立つ」のか
     (1) アニマル・ファーム再訪
     (2) 日常のなかの権力――N・Nの例
     (3) 大政治と小政治

    2 政治の空間――政治学のこれまで
     (1) 「堕落」と「礼儀」
     (2) 政治の原像と都市
     (3) 「日本」そして「現代」

    3 権力と自由――政治学のこれから
     (1) サイゴンの司馬遼太郎
     (2) 自由の根源にあるもの
     (3) 権力と自由

    4 政治的リアリズムとは何か――戦後日本の論争から
     (1) 政治と演技
     (2) 偽善のすすめ
     (3) 政治の技術(アート)と嘘

    5 政治学を学ぶために――読んでおきたい本

    おわりに

  • 100ページちょっとの薄い本だが、内容はとても濃かった。入門本という位置づけであるが結構難しい部分があったのでもう一度読んでしっかりと咀嚼したい。「偽善」の部分が特に印象に残っている。まさかテルマエ・ロマエが出てくるとは…

  • 苅部直『ヒューマニティーズ 政治学』岩波書店、読了。「現代社会」と「政治学」を架橋する高大接続の試み。戦後世界の歩みを時代の証言から辿り、政治学の考え方と社会の関わり(政治学の「これまで」と「これから」)を解説する。一種の読書ガイドでもあり、シリーズ11冊を含め初学者にお勧め。

    苅部直『ヒューマニティーズ 政治学』岩波書店 

    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0283280/top.html 

    「著者からのメッセージ」、「目次」、「1 日常性と政治――政治学は『役に立つ』のか (1) アニマル・ファーム再訪」の一部を読むことができます。

    苅部直『政治学』の中盤で司馬遼太郎「人間の集団について--ベトナムから考える」(1973)の言及があります。人々がイデオロギーの立場から、それに従わない他者を暴力で排除するありかたを「政治的未成熟」と見ている点が紹介されております。「政治」なき社会とは決定的に自由が欠如していると

    殴合いでなく「異なる考えをもつ主体どうしが、おたがいに異なることを見きわめた上で、それでも共に生きようとして交渉と妥協をくりかえすこと。『政治』をさしあたりそう定義してみよう」(苅部『政治学』77頁)。司馬の言葉に引きずられて「妥協」と出てきますが、この積極性の回復も課題ですね。

  • 311||Ka

  • 政治活動の一番小さな単位は1対1の付き合いである。そこから生まれる密接な交際をいつも無理なく維持できる人々が一番小さな単位のグループを作る。
    国家と呼ばれるものは、権力を運用する支配者もしくは支配機構であり、ポリスのような人の共同体ではない。
    主権国家が登場した初期近代の時代では、ほとんどの西欧国家は身分秩序に支えられた君主制であり、政治決定にかかわる人間が少数に限られるのが当然だったから、そこで庶民が政治かrなお疎外感を覚えるなどということはない。
    フロムによれば、自由の恐怖が西洋社会の近代化を通じて拡大した結果、ファシズムが到来した。
    国家を主体とみなすと国際政治の活動となる。

  • 岩波出版のヒューマニティーズ・シリーズの政治学編は、東京大学法学部(政治思想史)の苅部直(1965-)の執筆。

    【構成】
    1.日常性と政治-政治学は役に立つのか
    2.政治の空間-政治学のこれまで
    3.権力と自由-政治学のこれから
    4.政治的リアリズムとは何か-戦後日本の論争から
    5.政治学を学ぶために-読んでおきたい本

    このシリーズは、高校生や大学1・2年生向けということもあり、非常に読みやすい。
    ただ、高校生が読むにしてはやや抽象性の高い部分がある。

    そうはいっても、オーウェルの寓話からはじまり、坂口安吾、見田宗介、司馬遼太郎、そして丸山眞男と福田恆在の論争と、引用される話は読者を引き込ませるに十分である。

    特に4章のメインとナル丸山・福田の論争は、戦後政治学の主要な命題を抱えながら、「演技」と「偽善」という大きな政治に重要な要素の必要性を示している。

    「政治学」というより「政治」一般についての、入門書と言ってもいいかもしれない。

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著者プロフィール

東京大学法学部教授。1965年生まれ。専門は日本政治思想史。著書に『光の領国:和辻哲郎』 (岩波現代文庫、2010年)、『丸山眞男:リベラリストの肖像』(岩波新書、2006年、サントリー学芸賞)、『移りゆく「教養」』(NTT出版、2007年)、『「維新革命」への道: 「文明」を求めた十九世紀日本』 (新潮選書、2017年5月、書評掲載「日本経済新聞」(7/8)「毎日新聞」) 等。

「2017年 『日本思想史への道案内』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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