政治学 (ヒューマニティーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283281

作品紹介・あらすじ

私たちが「政治」と言うとき、イメージされているものとは何か。権力者の裏取引、市民の参加活動、見えない抑圧、華やかな外交交渉-そのいずれもが「政治」ではあるが、何を念頭におくかで、その姿は変わってしまう。政治が生まれてくる初発の風景、日常生活の視点から出発して、さまざまな「政治」の現象を貫く糸をたぐりよせ、その内実を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 政治学 (ヒューマニティーズ)
    (和書)2012年10月21日 19:38
    苅部 直 岩波書店 2012年4月27日


    近視眼的にものごとを見てきたことの反省をするとしたら、僕は若い頃、柄谷行人の本を読んで柄谷行人は信用できるという自分自身の直観を信仰してきた。それが間違いだったと言いたいのではない。それが近視眼的だったということである。この本に出てくる丸山真男など進歩派と言われる人たちの影響下にあったのだと最近気付いた。特に柄谷行人の作品に出てきた「偽善の本当と正直の嘘」などは僕が好んでいた柄谷語録であるがそれが丸山真男の影響を間接的に受けていたのだろうと知ることができた。他にもマキャベリと偽善との関係など再読したい本がいろいろでてくる。

    おすすめの政治学関係のブックリストもあり入門書として親切な内容になっている。図書館で借りられたらそれも読んでみたい。

  • 高校の「政治経済」と大学の「政治学」の授業を橋渡しするという意図で書かれた本で、政治学のなかから読者の興味を引くトピックをとりあげ、著者自身の観点からなにが問題になっているのかということがわかりやすく解説されています。

    「ヒューマニティーズ」シリーズでは、政治思想を専門とする小野紀明が「古典を読む」という巻を執筆しており、本書を日本思想史が専門の苅部が執筆していることに、すこし奇異な感をいだきつつ本書を手にとったのですが、政治に対してある種の不信感をいだきがちな一般的な日本人の感覚から出発し、それを掘り下げていくことで政治学の重要な問題にいたる道筋がたどられていて、興味深く読みました。

  • 平易な言葉で綴られた、絶好の入門書

  • 本書目次

    はじめに――この本の使用上の注意

    1 日常性と政治――政治学は「役に立つ」のか
     (1) アニマル・ファーム再訪
     (2) 日常のなかの権力――N・Nの例
     (3) 大政治と小政治

    2 政治の空間――政治学のこれまで
     (1) 「堕落」と「礼儀」
     (2) 政治の原像と都市
     (3) 「日本」そして「現代」

    3 権力と自由――政治学のこれから
     (1) サイゴンの司馬遼太郎
     (2) 自由の根源にあるもの
     (3) 権力と自由

    4 政治的リアリズムとは何か――戦後日本の論争から
     (1) 政治と演技
     (2) 偽善のすすめ
     (3) 政治の技術(アート)と嘘

    5 政治学を学ぶために――読んでおきたい本

    おわりに

  • 苅部直『ヒューマニティーズ 政治学』岩波書店、読了。「現代社会」と「政治学」を架橋する高大接続の試み。戦後世界の歩みを時代の証言から辿り、政治学の考え方と社会の関わり(政治学の「これまで」と「これから」)を解説する。一種の読書ガイドでもあり、シリーズ11冊を含め初学者にお勧め。

    苅部直『ヒューマニティーズ 政治学』岩波書店 

    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0283280/top.html 

    「著者からのメッセージ」、「目次」、「1 日常性と政治――政治学は『役に立つ』のか (1) アニマル・ファーム再訪」の一部を読むことができます。

    苅部直『政治学』の中盤で司馬遼太郎「人間の集団について--ベトナムから考える」(1973)の言及があります。人々がイデオロギーの立場から、それに従わない他者を暴力で排除するありかたを「政治的未成熟」と見ている点が紹介されております。「政治」なき社会とは決定的に自由が欠如していると

    殴合いでなく「異なる考えをもつ主体どうしが、おたがいに異なることを見きわめた上で、それでも共に生きようとして交渉と妥協をくりかえすこと。『政治』をさしあたりそう定義してみよう」(苅部『政治学』77頁)。司馬の言葉に引きずられて「妥協」と出てきますが、この積極性の回復も課題ですね。

  • 311||Ka

  • 政治活動の一番小さな単位は1対1の付き合いである。そこから生まれる密接な交際をいつも無理なく維持できる人々が一番小さな単位のグループを作る。
    国家と呼ばれるものは、権力を運用する支配者もしくは支配機構であり、ポリスのような人の共同体ではない。
    主権国家が登場した初期近代の時代では、ほとんどの西欧国家は身分秩序に支えられた君主制であり、政治決定にかかわる人間が少数に限られるのが当然だったから、そこで庶民が政治かrなお疎外感を覚えるなどということはない。
    フロムによれば、自由の恐怖が西洋社会の近代化を通じて拡大した結果、ファシズムが到来した。
    国家を主体とみなすと国際政治の活動となる。

  • 岩波出版のヒューマニティーズ・シリーズの政治学編は、東京大学法学部(政治思想史)の苅部直(1965-)の執筆。

    【構成】
    1.日常性と政治-政治学は役に立つのか
    2.政治の空間-政治学のこれまで
    3.権力と自由-政治学のこれから
    4.政治的リアリズムとは何か-戦後日本の論争から
    5.政治学を学ぶために-読んでおきたい本

    このシリーズは、高校生や大学1・2年生向けということもあり、非常に読みやすい。
    ただ、高校生が読むにしてはやや抽象性の高い部分がある。

    そうはいっても、オーウェルの寓話からはじまり、坂口安吾、見田宗介、司馬遼太郎、そして丸山眞男と福田恆在の論争と、引用される話は読者を引き込ませるに十分である。

    特に4章のメインとナル丸山・福田の論争は、戦後政治学の主要な命題を抱えながら、「演技」と「偽善」という大きな政治に重要な要素の必要性を示している。

    「政治学」というより「政治」一般についての、入門書と言ってもいいかもしれない。

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著者プロフィール

東京大学大学院法学政治学研究科教授

「2011年 『政治学をつかむ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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