文学 (ヒューマニティーズ)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283311

作品紹介・あらすじ

文学は人間存在のはじまりから、その傍らに、つねに在った。言葉が発せられ、書きつけられるとき、それが他者にむけて、その心に働きかけようとするとき、文学は生まれる。想像力と共感の力を涵養し、「いま、ここ」にはいない者たちと私たちを結びつけ、人々の新たな関係性と社会、世界との結びつきを書き換えてゆく文学の可能性を、根源から問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 今季芥川賞作家の文学論。

  •  カフカ「巣造り」を軸としながら、プルースト、ドゥルーズ、坂口安吾、柄谷行人らのテクストを自在に節合していくことで、文学をめぐる素朴な問いに真正面から向き合おうとした1冊。ちょうど「文学にとってリテラシーとは何か」を考えていたタイミングでもあり、興味と関心を持って読み進めた。
     
     この手の議論は、結論はほとんど決まっている(文学に意味はないという読者はほとんどいないし、文学を少しでも専門的に学んだ者なら、「他者」と「人間」を知る/感じるという効用を否定することはないだろう)。だから問題は、議論の展開の中で紹介される事例としてのテクストの質であり、語りの説得力ということになる。その意味で本書は、決してたくさんのテクストに触れているわけではないが、実に明快かつ端的に、文学と人間との不可分の関係性を挙証できているように思う。

     たとえば、子供たちは、どんな過酷な状況でも「遊ぶ」ことを忘れない。なぜなら、「遊ぶ」ことで現実と向き合い、対抗し、耐えがたい現実に自身を包みこむ「もう一つの世界」を上書きしようとするからだ。文学の想像力は、そうした遊びを支える想像力と同じところに根ざしている。
     また、文学は確かに無用なものである。しかし、無用なものの存在が許されない世界に、ひとは住むことができるのか。無用性の認められない、無意味なものが何もない世界とは、人間の住む世界なのか? 「文学の死は、すなわち人間社会の死である」(162)。
     そして文学は、他者に近付き、人間を生きる機会を与えてくれるものである。紋切り型のイメージから離れた、具体的でかけがえない個の姿を読者に近づけくれるものである。読むこと書くことは、ひとを、文学の世界、文学の庭の住人たちに近づける。過去に生きた人間の痕跡と確かに出会い、その人たちとの「絆」を実感することができる。文学を学ぶことに意味がないというのは、人間として生きることに意味がないというのと同断である。

     よって、と著者は言う。文学=人間なのだから、「誰とつきあうべきか」という問いが無意味なように、「何を読むべきか」という問いにも意味がない。この「オチ」の部分が、本書で最も得心のいった部分。そのほか、「なぜ同じ作品について延々と議論ができるのか」「コミュニケーションはつねに挫折するのに、なぜ人は語らずにはいられないのか」等々、素朴だが核心的な問いに対する思考が展開されている。あらためて「文学」とは何か、考えるきっかけになることは間違いない。
     

  • 國分功一郎さんが面白いと言っていたので手に取ってみたが、なるほど面白かった。1章から2章へと流れるようにつづくカフカをめぐる考察が秀逸。3章の古典の話はちょっとつまづきながら読んだ。

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