兵士たちの戦場――体験と記憶の歴史化 (シリーズ 戦争の経験を問う)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283717

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  •  「戦争体験者自身によって記された〈体験〉〈証言〉、さらには体験者自身が公刊戦史などを利用あるいはそれらの批判的検討のもとに継承を意識して綴った〈記憶〉を素材にして、私たちが今日、継承すべき〈記憶〉群を再構成し、アジア太平洋戦争を中心とする戦争を〈歴史〉として、〈兵士たちの戦場〉を叙述しようとしたものである」(p.203)と明記しているように、日中戦争及びアジア・太平洋戦争に従軍した将兵の回想・証言を素材に、戦局の推移に従い時系列に沿って構成された「兵士の視点による戦場」史である。

     近年の歴史学における戦争史・軍事史研究では従来の「幕僚史観」を相対化するために、兵士の戦場体験を重視する潮流が流行しているが、本書もそうした潮流の強い影響下に成立したと言える。できるだけ第三者の手が入ったものや、後知恵によって再解釈・再構成されたものを避け、当事者自身が自身の言葉で率直に書き残した史料から「戦場の実相」を明らかにしている点で、戦争や軍隊の実態を学ぶ上での価値は高いが、他方問題も少なくない。

     第1に、直接引用が少なく、ほとんどの情報が地の文で説明されていることである。「史料に語らせる」手法を避けたのは、紙幅の都合や戦争体験者への過剰な共感を抑制するためであると考えられるが、本書の本来のねらいからすると、〈歴史〉の背後にある〈体験〉や〈記憶〉が正確に提示されないのは問題があろう。

     第2に、「戦場」体験といっても、やはり「戦闘」体験に偏重しがちなことである。特に海軍や航空部隊にこの傾向が顕著で、どうしても「戦記もの」のような内容になってしまう。著者も言及しているように、加害体験や極秘任務のような事象は隠蔽されがちではあるのだが、歴史学での先行業績(たとえば吉見義明『草の根のファシズム』や鹿野政直『兵士であること』など)と比べると、むしろ後退している感は否めない。

     以上のような問題はあるが、確実に風化する戦争体験を、後世に語り継ぐための「歴史」に転換していく作業は評価されるべきであろう。

  • 資料ID:21502296
    請求記号:210.75||Y
    配架場所:2階普通図書室

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