- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000284844
作品紹介・あらすじ
「流行歌」は時代の心情を映しだす鏡である──明治維新以後、歴史の激動の陰で想いを託され、口ずさまれてきた歌の変転に、近代日本の精神史が浮かび上がる。2010年までの「愛」の歴史を通観する新稿を併録。収録作品:『近代日本の心情の歴史』,「イメージの近代日本史」,「柳田国男『明治大正史・世相篇』解説」,「近代日本の愛の歴史」
感想・レビュー・書評
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はあなるほど、こういうことしてるのですか。
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『近代日本の心情の歴史』のほか、3編の論考を収録しています。
著者は、近代日本における流行歌を分析するにさいして、そこに歌われてる題材(テーマ)以上に、心情に注目します。それは、たとえば「折鶴」が慕情を示し「雨だれ」が孤独を思わせるように、歌詞に現われることばには固有の心情の雰囲気が込められており、流行歌の歌詞にとり入れられるさまざまな事物は、それを通じて民衆意識の心情に働きかけるからにほかなりません。著者はこのような観点に立って、明治から戦後に至るまでの近代日本社会のあゆみと、それぞれの時代における流行歌に現われた心情の方向性がどのようにかかわりあっているのかということを論じています。
たいへんおもしろく読みましたが、流行歌に歌われる心情と、その時代の社会状況がどのようなしかたでつながっているのかということを理解するためには、それぞれの心情が人間にとってどのような意義をもっているのかがある程度明確になっているのでなければなりません。本書中でマックス・シェーラーの哲学的感情論に触れられている個所がありましたが、感情の哲学的考察を社会と実存のあいだにはさむことで、本書で展開されているような分析の意味がいっそうはっきりするのではないかという気がしています。
著者プロフィール
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