現代化日本の精神構造 (定本 見田宗介著作集 第5巻)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000284851

作品紹介・あらすじ

未曾有の高度経済成長を経て、日本人はどのように変わったのか。日本を代表する社会学者の仕事の全貌を示す、初にして待望の決定版著作集。「見田社会学」と称される独自の世界を創造した著者が、自身の全仕事を振り返り、重要な作品だけを精選してその精髄を体系的に示す。テクストに改訂を加え、各巻に「定本解題」を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 高度成長期の身の上相談を対象に、その背景に潜む社会的構造を分析した本。

    正直身の上相談という表層的なものからここまで社会構造を分析しきるのは、この筆者だから出来るんだろうなという感想。前読んだ本で、論文の書き方は分析対象、分析方法を定めて云々のくだりで、この本が例示されて出てきたが、正直これはその域を超えていると思う、、
    相当な経験が無いと、ここまでの分析はできないだろうと思う。

    そして肝心の分析内容だが、やっぱり60年も経つと分析内容なんて大きく変わってるよな、、と思う。成長に伴って、やっと手に入れたものへの虚無感とか、そこに辿り着けない焦燥感とかそういったものが背景にあるのに対し、現代はまた違った精神構造になっていると思う。この頃は、「成長」に伴う悩み、なのだろうが、今は「もう成長できない、じゃあどうなる」といった悩みになるのだろうか。
    とんでもなく庶民的な感想だが、成長してる中でも、悩みに悩んでるんだから、いい加減成長を目指すのなんてやめない?なんて思ってしまう。

    後半の論壇時評は分からなかったなぁ。そもそも元の文章読んで無いし。しかし、今の論壇時評に比べると滅茶苦茶難しくない??

  • 『現代日本の精神構造』(弘文堂、1965年/新版、1984年)や『現代日本の心情と論理』(筑摩書房、1971年)所収の論考のほか、『現代日本の感覚と思想』(講談社学術文庫、1995年)に収録された「二〇世紀思想地図」を収録しています。

    「現代における不幸の諸類型」は、身上相談に寄せられた不幸の諸類型を分析することで、当時の日本社会における「自己疎外」のありように迫る試みです。高度経済成長を遂げた日本に蔓延しつつあったアノミーの構造に光を当て、現代にまでつながる問題を浮き彫りにしています。また「貧困の中の繁栄」や「ホワイトカラーの分解と意識」「限界エリートの欲望と不安」「現代欲望論」などの論考では、60年代から70年代にかけて進行しつつあった経営的な発想に基づく自己管理=自己疎外の実態に鋭く切り込んでおり、現代の自己啓発ブームが意外に歴史的な厚みを持っていることを知ることができたように思います。

    「二〇世紀思想地図」は、1984年から85年にかけてなされた著者の論壇時評をまとめたものです。著者は、吉本・埴谷論争によって見えてきた、大衆社会状況を批判する足場をどこに求めればよいのかという問題や、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に見られる明るい終末への予兆、さらに浅田彰に代表されるニューアカデミズムの隆盛などを取り上げながら、モダンとポストモダンをつなごうと努めています。そうした著者の姿勢は、ポストモダンにおける批評の不可能性に抗する竹田青嗣の思想的営為を高く評価し、浅田の『ヘルメスの音楽』(筑摩書房)に「肯定する力」を掬い上げようとしているところにも、明瞭に現われています。

    ただ、90年代以降にポストモダンに対するバックラッシュが吹き荒れる状況までは、さすがの著者も予見できなかったのかもしれません。むろん著者の考える「肯定する力」を、そうしたバックラッシュの潮流と同一視することはできませんが、現代の読者は少し慎重に著者の姿勢を検討してみる必要があるのではないかと思います。

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著者プロフィール

1937年生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。著書に『まなざしの地獄』『現代社会の理論』『自我の起原』『社会学入門』など。『定本 見田宗 介著作集』で2012年毎日出版文化賞受賞。東大の見田ゼミは常に見田信奉者で満席だった。

「2017年 『〈わたし〉と〈みんな〉の社会学 THINKING「O」014号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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