グローバリゼーション、社会変動と大学 (シリーズ 大学 第1巻)

制作 : 広田 照幸  吉田 文  小林 傳司  上山 隆大  濱中 淳子  白川 優治 
  • 岩波書店
3.86
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000286114

作品紹介・あらすじ

グローバリゼーションにより、大学は近年、従来の教育・研究活動、また社会との関係について再考を迫られるようになった。学生の国境を越えた移動と大学教育の輸出入の拡大、就職市場のグローバル化、知と大学の関係の変化、外国語教育の新たな展開、デジタルメディアの影響等、激変する環境への大学の対応と模索を論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 職場の上司に「大学図書館で働く上で、大学を取り巻く状況を知っておくことも大切」という言葉とともに手渡された本書。

    グローバリゼーションの進展する現代社会の中で、これからの大学のあるべき姿をさまざまな側面から考察しています。
    今後の社会で求められる人材や、英語教育の在り方、大学の活動が空洞化するリスクなどなど、大学が直面する現状と課題について学ぶことができました。

    特に刺激的だったのは「第6章 デジタル・メディアによる大学の変容または死滅」。
    著者の土屋俊氏は、米国のMOOC(大規模オープン・オンライン・コース)など、インターネットを通じて無料で提供される高等教育に注目しています。
    こうした無料かつ高品質な教育形態が持続可能なものであるならば、これまでの教室授業中心スタイルの大学は終焉をむかえるであろうという考察に衝撃を受けました。

    近未来の大学のあるべき姿はどのようなものか、その中で図書館の果たす役割とは…。
    中長期のビジョンを意識しながら、日々の業務に取り組みたいと思います。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB11965983

  • 資本・情報・労働力が国境を越えて移動ずるグローバリゼーションという現象。この現象は大学のあり方に根底から揺さぶりをかけている。グローバリゼーションを引き起こす要因はいくつかあるが、特に大学に変容を強いる要因としては、新自由主義の経済政策、ICT(デジタル・メディア)の発展であろう。

    新自由主義の観点からみると、「小さな政府」による国家からの補助の縮小、「市場競争原理の導入」による、大学教育の商品化、教育の質の向上・経営の効率化の要求が顕著となっている。ICTの発展の観点からみると、MOOCsの勃興が大きい。これは大学教育方法が変容するのみならず、学位授与機関としての大学の存在を不要とする論理すら内包しているからである。すなわち、大学が「工場」のように、学生に付加価値をつける場と考えた場合に、現在は「どのような知識・技能がみについているか」が求められるのであって、学位という包括的・抽象的な保証の役割は相対的に小さくなっているからである。

    また、これまで使われてきた「国際化」は、内発的な指向という印象を持つが、一方の「グローバリゼーション」は外発的な圧力という印象が拭えない。英米に端を発した新自由主義の流れに世界が巻き込まれる現象―グローバリゼーション―は、「富める者(国)はますます富み、奪われる者(国)はますます奪われる」という結果を招く。日本の大学が、この現象の中で勝者になることは容易ではない。ましてや、学習時間がアメリカの1/3しかな い学生を抱えている以上、尚更である。大学教育の包括的・抜本的な改革が求められる。

    この点から、この著書は、限られてはいるがいくつかの有益な示唆を提供している。ただし、内容的には6本の論文を集めたもので、大衆向けとはいえず、大学関係者や高等教育問題に深い関心を持つ者に限られるように思う。

  • 昨今新聞等をも賑わせている「グローバル人材」「グローバルリゼーションと大学」「国際共通語としての英語」などについて、意外にスルーされて来た「で、そもそもそれって何なの?」ということを問い直すところから始めており、一部荒削りな議論も見受けられるけど各章の執筆者の熱さが伝わってくる印象を受ける。

    ちょっと難しい面があるかもしれないけど、そういう意味合いも含めて大学人よりむしろ一般市民に読んで欲しい本かな。

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著者プロフィール

早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授

「2022年 『学士課程教育のグローバル・スタディーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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