- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000286268
作品紹介・あらすじ
文体や語彙の主役交替-。明治・大正の総合雑誌にみる、近代書き言葉の曙光。
感想・レビュー・書評
-
コメント0件をすべて表示
-
田中 牧郎 著
本体1,700円+税
刊行日:2013/08/23
9784000286268
B6 並製 カバー 212ページ
在庫あり
1895年,多彩なジャンル,一流の執筆陣で創刊され,日本社会の近代化に大きな影響を与えた総合雑誌『太陽』.大正期までの『太陽』をデータベース化し,生き物のように変化しゆく言葉の様相を,最新の手法で映し出して行く.言文一致,新語の誕生と廃れ,似た意味を持つ言葉の縄張り争いの過程が,つぶさに明らかになる.
■編集部からのメッセージ
「近代書き言葉はこうしてできた」,こんなダイナミックなタイトルを使えるのは,全体で1450万字の規模だという『太陽コーパス』を汗水たらして仲間と一緒に作り上げてきた著者の本だからです.文章をデータにしたうえで,様々な情報を文章中にタグ付けして書き込んでいく作業は,相当に骨を折る仕事だと思います.
明治を生きた夏目漱石の作品を読む時,ときどき現代の自分たちが使う言葉と違うな,と感じることがあります.その,なんとなく違うという感覚のわけを,この本では数量的に確かめることができます.
また,日常的に使っている言葉,例えば「子育て」という言葉が,100年前にはほとんど使われていなかったこと,「医療費抑制が課題だ」のような「課題」という言葉の用法が新しいものであることも,統計によってわかる面白い事実です.
国立国語研究所のウェブサイトでは,さまざまなデータベースが公開されていますから,この本を手にしながら利用してみると,きっと愉快な発見があることと思います.
著者略歴
田中牧郎(たなか まきろう)
国立国語研究所言語資源研究系准教授.
1962年島根県生まれ.1989年東北大学大学院文学研究科博士課程後期退学.昭和女子大学専任講師,国立国語研究所言語問題グループ長などを経て2009年から現職.
専門は日本語学(日本語史・語彙論).現在は主に,コーパス構築による日本語史研究と,難解用語の言語問題の研究を行っている.
著書に,『雑誌「太陽」による確立期現代語の研究』(共著,博文館新社,2005年),『病院の言葉を分かりやすく――工夫の提案』(共著,勁草書房,2009年),『外来語研究の新展開』(共著,おうふう,2012年)など.
〈https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b257527.html〉 -
コーパス言語学という分野があるそうな。
多様な文書を、組織的な方法で集成したデータベースを分析することによって研究する手法なのだとか。
私がこの言葉を聞くのは、ここ十年くらい。
本書は、コーパス分析によって、近代日本の書き言葉がどのように整備されていったかを跡付けるとうたわれていた。
山田美妙の「です体」やら、二葉亭四迷やらが言文一致体を試み、志賀直哉で完成する・・・なんて話を聞いてきたが、そういう昔の通説が、どれくらい塗り変わるのだろうか、と興味を持って本書を読んだ。
たしかに、この話は、概論は、第一章に出てくるのだが、最後まで読み勧めても、特にその「通説」が覆るというほどのことはなかった。
ただ、やはり実証的な研究であるだけに、個別の話は面白かった。
「であります」体が「です」体にとって代わられるのは、ほぼ1917年である、とか。
「なり」は「だ」に交代する趨勢だが、どの活用形が一番最後まで残ったかとか。
『太陽』以外のコーパスと比較しながら、語種の割合がどう変じていくかも、とても興味深かった。
大正以降、和語が減り、外来語が増加する傾向にあったが、現代は外来語の増加に歯止めがかかった状態にあるとか。
研究者の関心は、今のところコーパスをどう構築するかの方に注がれていると本書にあったが、もっとコーパスを使った研究がなされるといいな、と期待された。 -
出版社の紹介ページでは立ち読みPDFも公開されます:
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/9/0286260.html
極東ブログ(by finalventさん)書評:
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/04/post-bdad.html