コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき (そうだったんだ!日本語)

著者 :
  • 岩波書店
3.23
  • (2)
  • (4)
  • (3)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 80
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000286305

作品紹介・あらすじ

「これながいきの薬ある。のむよろしい。」この台詞から中国人を思い浮かべる人は多いだろう。だが現実の中国人は今、こんな話し方をしない。近代の日中関係のなかでピジンとして生まれたことばは創作作品のなかで役割語としての発達を遂げそれがまとう中国人イメージを変容させつつ生き延びてきた。前著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』から十一年を経て"アルヨことば"をめぐる歴史の旅があらたに始まる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 【書誌情報】
    著者 金水敏
    ジャンル 書籍 > 単行本 > 言語
    シリーズ そうだったんだ!日本語
    刊行日 2014/09/10
    ISBN 9784000286305
    Cコード 0381
    体裁 B6・並製・カバー・246頁
    定価 本体1,800円+税

     「これながいきの薬ある.のむよろしい.」――この台詞を見ただけで中国人が思い浮かぶ人は多いだろう.だが現実の中国人は今こんな話し方をしない.フィクションの中で中国人を表象するこうした言葉遣いは,実在した話し方が元になっているのか.また歴史的にどのようにして中国人と結びつけられるようになったのだろうか.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b257531.html



    【簡易目次】
    序章 “アルヨことば"にまつわる疑問
    第1章 宮沢賢治は「支那人」を見たか
    第2章 横浜ことばとその時代
    第3章 “アルヨことば"の完成
    第4章 満洲ピジンをめぐって
    第5章 戦後の“アルヨことば"
    終章 「鬼子」たちのことば

  • 感想未記入、引用省略。

  • 2015.1.24市立図書館
    役割語研究の第一人者が、中国人の台詞のマーカーとして広く認知されている役割語の一つ<アルヨことば>にフォーカスして、その起源や変遷を詳しく追っていく。子どもたちにもおなじみのとぼけた異人ことばの背景にくっきりうかびあがる歴史的政治的文脈にわけいり、今や衰退しつつあるとみられる<アルヨ言葉>を供養する一冊。
    宮沢賢治など大正期の童話、文明開化期の日本語学習書などにみられる横浜のピジン、戦前戦中の大陸で発生した満洲ピジンや簡易日本語(協和語)、そして戦後のマンガを始めとする創作作品などの中での使用例など、豊富な用例をたどって、<アルヨ言葉>が中国人のイメージをもった役割言葉として定着してきた道をたどり、戦前からのアヤシゲな手品師というステレオタイプに加えて最近30年ほどでチャイナ少女・カンフーなどのイメージも加わったこと、リアリティが求められる現代の作品では使われ方が慎重になって代わりに「ネ」がよくみられるようになっていることなど、流れがわかりやすくまとまっている。
    <アルヨ言葉>にかぎらず、コミックや創作作品の中で「非母語話者の日本語」がどのように現れているのかは書き手の意識/無意識や読み手のイメージ形成などさまざまな要素が絡み合ってとても興味深いテーマだと思う。片言風という意味では、動物はじめ人間以外のものの言葉というのも要観察かも。

    読了後、たまたま『中国嫁日記』というコミックを読んで、現代のリアルな中国人が話す日本語の描写としては促音(小さい「っ」)や長音(形容詞の「い」)の脱落、助詞の省略、そして「マス・デス」などのカタカナ表記で表されていることがわかった。なるほど。国際結婚や異文化間理解をテーマにした(外国人が日本語を話す設定のある)コミックエッセイはいろいろあるからその台詞を調べれば論文一本書けそう。

  • 役割語の典型例として挙げられていた「アルヨ言葉」の由来を明らかにする。「横浜ことば」に加え、「満洲ピジン」の実態が紹介されている。戦後に映画などで使われた鬼子ピジンについても。言葉もさることながら、満洲入植の実情も見えて、考えさせられた。

  • 日本において、中国人を表象するのに気軽に使われる「○○アルヨ」という「アルヨ言葉」について、その起源から現在までの使用例をつぶさに追った一冊。
    アルカ言葉の始まりを探す前半パートは面白く読めたが後半は使用例の列挙にとどまって社会事情との関連まで踏み込んでなかったのがちょっと残念だったかな。

  • 第47回天満橋ビブリオバトル テーマ「目からウロコ」で紹介した本です。

    https://www.facebook.com/events/1453864824889945/permalink/1468281210114973/

  • 中国人日本語話者が実際にそう話しているのを聞いたことがあるわけではないのに、どうして「~アルカ?」という言いまわしが「中国人」と認知されてしまうのか。コンパクトな1冊の中で、近代日本語が「異人のことば」をいかに表象してきたかをたどる、非常に興味深い仕事。

     フィクションの中で「アルヨことば」が中国人と結びつけられた最も早い例は、いまのところ宮沢賢治「山男の四月」らしい(!)。だが、生前の賢治のネームバリューを考えれば、賢治が使って以後広まったとは考えにくい。「アルヨことば」は、西洋人の表象としての「アリマスことば」と同様、開港地横浜でのピジン(横浜ことば)に由来する。
     一方、中国大陸で発生した「満洲ピジン」のような片言中国語は、戦後の中国にあっては、抗日映画に登場する日本軍人の「奇妙な中国語」=「鬼子ピジン」として残存している。実際には失われたピジンが大衆文化の中で生き長らえているという点で、「鬼子ピジン」と「アルヨことば」とは相同的な関係にあると言える。

     1960年代までは、「アルヨことば」は、いかがわしい・怪しい・少し間が抜けた中国人成人男性が用いることばとして表象されていたが、1980年代以後は、カンフーが強く、やや知的に幼い「チャイナ少女」の属性として意識されるように。こうした中国人の表象は、日本の大衆文化の中でのみ自閉的に継承されており、現実の中国や中国人との接触による変容・影響をほとんど受けていないところに特徴がある。

  • 【新着図書ピックアップ!】日本語の不思議に着目した本。「コレモ日本語アルカ」というタイトルをみると、中国人が、言った言葉のように誰もが感じる。しかし、日本語を勉強した中国人は、このような表現をしない。演芸などの舞台に登場する、日本人が演じる怪しげな中国人や漫画に登場する怪しげな中国人が、よく使う表現だ。いったい、これは、どこから、生まれてきたのだろうかと、まじめに研究した本である。日本語の不思議を知りたい方は、是非、読みください。
    This book is highly recommended!

  • 金水敏さんの役割語研究の中の中国人をイメージすることばを1冊にまでしたもの。菌金水さんには岩波の『役割語の謎』をはじめ編著が2冊、『役割語小辞典』という辞典まである。正直ぼくは本書を読むまでそういう研究分野があることを知らなかった。中国人を彷彿させるといえば、昔、「わたし中国広島生まれアルヨ」と言っていたゼンジー北京を思い出す。あのような、中国人をからかうような言い方は、今もないとは言えないが、すっかり陰を潜めてしまった。それは、日中国交回復の1972年以降のことではないかとぼくは想像する。そうするとゼンジー北京を聞いたのはそれ以前だったのか。中国人をからかうようなもう一つのことばは「それするヨロシ」というヨロシことばである。金水さんはこのうちアルヨことばのもとであるアリマスが横浜の外国人と日本人とのピジンとして生まれ、のちにアルことばに発展し、アルヨになることを多くの文献を通して跡づける。それはやがて満州での日本人と中国人の間にも行われ、現在では、反日映画の中の日本の軍人を形象するものとして出てくるという。ぼくは本書を読んで、日本が中国を侵略していく中で、中国人をあやしげな人々として描く日本の小説、漫画に空恐ろしさを感じた。昔、中国人を支那人と呼んでいた日本人は、中国人にこのようなイメージを抱いていたのであろう。でも、そんなことで、よくアジアの解放、アジアの盟主などと言えたものである。それはまさに、西洋人を追い出してアジアを解放しようとしたのではなく、単に西洋人の代わりをし、アジアでいばりたかっただけではないか。

  • 岩波書店の紹介ページ(目次と序章が立ち読みできます):
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/7/0286300.html

    シノドス編集部今週のオススメ本(山本菜々子さん評):
    http://synodos.jp/info/11065

全10件中 1 - 10件を表示

金水敏の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
冲方 丁
ジャレド・ダイア...
エラ・フランシス...
トマ・ピケティ
有効な右矢印 無効な右矢印

コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき (そうだったんだ!日本語)を本棚に登録しているひと

ツイートする