天変地異と病 災害とどう向き合ったのか (シリーズ 古代史をひらくII)
- 岩波書店 (2024年1月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (366ページ) / ISBN・EAN: 9784000286367
作品紹介・あらすじ
歴史学から災害史・環境史を問う試みが意欲的に行われる今、古代史研究から現代に向けて言えることは何か。考古学および古気候学・地質学など自然科学諸分野の成果を参照しつつ、火山噴火・地震・津波等の自然災害、また飢饉・疫病等が社会にもたらした被害の実態を復元し、災害に向き合った人々の姿や復興の様子に迫る。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災ですっかり有名になった貞観地震。地震学・津波工学・古代史・考古学の専門家には「常識」であったが、国民にはあまり知られていなかったという。そんなものだろうなあ、自分だって、明治の三陸沖地震ですら3.11の後に吉村昭の本を読んで知ったくらいだから。
古代以来様々な自然災害や疫病に苦しめられてきた日本列島であるが、本書は古代の災害史について、各分野の専門家が最新の知見を紹介するというもの。
災害、病と身に沁みるテーマであり、いずれも興味深い論考なのだが、こうした実態を明らかにするために、どれだけ地道な発掘や測量、地質学的調査、出土品の分析などの作業が黙々と行われてきたかということには頭が下がるし、そうした大ぜいの人たちの努力の成果のエッセンスを、分かりやすく一般読者に提供してくれるのは本当にありがたい。
以下、特に興味を惹かれた論考について。
「貞観地震・津波による陸奥国の被害と復興」では『日本三代実録』の該当箇所を示して史料における被害状況を概観した上で、発掘調査の結果から分かってきた被害と復興の状況が紹介される。修復された建物に使われた軒瓦から復興の順序等が判明、また、イベント堆積物(地質学的に非常に短期間に急速に堆積した地層)から、それが津波堆積物であるかどうかをいくつかの特徴に基づき判別していくといった手法など、非常に興味深かった。
「古墳時代の榛名山噴火」では、6世紀初頭と6世紀中葉の2度の噴火による被害について、その周辺地域の遺跡から分かってきた当時の様子が紹介される。金井遺跡群の金井東裏遺跡からは、火砕流の犠牲となった甲(よろい)を着装した状態の成人男性(甲古墳人)と3人の人骨が見つかり(平成24年かなりのニュースになったとのことだが、知らなかった)、また金井下新田遺跡からは3頭の馬、そして囲い状遺構が見つかっている。そして、これらの遺跡とその周辺の遺跡を合わせて見ていくと、集落域の移動状況なども分かってきているとのことで、復興というか時間の推移による変化まで見えてくるというのはすごい。
中塚武氏の論文及びコラムによれば、樹木年輪セルロースの酸素同位体比を用いて気候変動のデータを得られるとのことで、そうした気候変動と社会変化の関係を見ていきたいとの問題意識を持っておられるとのこと。数理モデルのところは正直自分の頭では理解できなかったが、単純な気候決定論ではなく、データに基づいて歴史の返送をどのような考察することができるのかは、とても興味深い取組だと思った。 -
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713442
著者プロフィール
吉川真司の作品
