古代荘園 奈良時代以前からの歴史を探る (シリーズ古代史をひらくII)
- 岩波書店 (2024年3月28日発売)


本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (364ページ) / ISBN・EAN: 9784000286374
作品紹介・あらすじ
「墾田永年私財法によって初期荘園が生まれた」「荘園は開発によって生まれる」という理解は一面的だ。弥生時代以来続いてきた農地と生業の歴史のなかに古代荘園を位置づけ、多分野の協業によって古代荘園の実像を生き生きと描き出すとともに、中世「荘園制」へと続く道筋をつけ直す。研究蓄積の厚い分野に新風を吹き込む試み。
感想・レビュー・書評
-
最近もっとも読んでいてわくわくした本だった。
座談会は何度も読み返した。
戦前の荘園史研究から現在の最新情報まで、分かりやすくまとまっていて、読み終わると色々整理されて頭がすっきりしたような気分になる。
古代荘園図について、よく理解できていなかったので嬉しい。
今度はじっくりと内容を見ながら読み進め、奈良や三重の名張など、近いところはきちんと歩いてみたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1. 奈良時代の王族の土地所有と経済基盤
本書は奈良時代初期における王族、特に長屋王家の土地所有とその経済的活動に焦点を当てています。長屋王家は広大な土地を所有し、その経営は多様な農業活動や物品の貢進に基づいていました。
1.1 所有地の種類
長屋王家は、以下のようなさまざまな所有地を持っていました:
- 御田(稲作地)
- 御薗(菜園)
- 都祁氷室(氷の貯蔵所)
- 丹波柚(果樹園)
- 木上(馬の飼育施設)
これらの土地は、主に大和国を中心に広がっており、経営管理のための複数の部署が設けられていました。
1.2 経営と労働力
木簡の出土により、長屋王家が労働力として封戸を使用し、彼らに対して給与や食料を支給して耕作を行わせていたことが明らかになりました。これにより、収穫物はすべて長屋王家に納められていました。
2. 荘園の構造と発展
本書はまた、奈良時代の荘園の発展についても論じています。荘園は王族や貴族の経済基盤の一部であり、特に「熟田主体の荘園」と「墾田主体の荘園」の二元的な構造が存在しました。
2.1 熟田と墾田
- 熟田主体の荘園: 古代から続く田地で、安定した農業生産が行われていた。
- 墾田主体の荘園: 律令体制以降に新たに開発された土地で、経営の多様化が進行しました。
この二つの系統は、古代から中世にかけての土地所有の変遷を示す重要な要素です。
3. 荘園経営の実態と地域社会
荘園経営は地域社会において重要な役割を果たしており、国司や在地の有力者との結びつきが経営に影響を与えました。
3.1 地域経済への影響
荘園の経営は、農民や労働者に対して経済的な影響を及ぼし、彼らの生活を支える重要な要素でした。特に、出挙(資金の貸付)や農作物の供給が行われ、荘園と農民の間に経済的な結びつきが形成されました。
4. まとめ
本書は、奈良時代の王族の土地所有、荘園の構造、地域社会への影響を詳細に述べ、古代日本の経済基盤を理解するための重要な資料であることを伝えています。また、長屋王家木簡の発見を通じて、当時の社会構造や経済活動の複雑性を明らかにし、古代日本の歴史理解に寄与しています。 -
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/714246
著者プロフィール
吉村武彦の作品





