たたかう (人生をひもとく 日本の古典 第四巻)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000286442

作品紹介・あらすじ

お互いを支え合い助け合うのが人の常ですが、生きるうえでは、さまざまな揉めごと、争いごとを避けて通ることはできません。負けるが勝ちを実践した藤原道長、殿上人のいじめに立ち向かう平忠盛、継母からの辱めに耐える小林一茶…。対決と熱狂、心中の葛藤、戦いの悲しみなど、古典のなかに描かれた「たたかう」人びとの姿を探ります。

感想・レビュー・書評

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  •  たたかいがテーマなので、激しいことばかりが書かれていて面白そうだと思いきやそうではない。政治の駆け引き、和歌や能の優劣……斬り合う動きよりも内に秘めた闘争心を取り上げていることが多いように思った。そして「たたかい方」も結構書かれている。
     冒頭も、紀貫之を否定する、和歌に決して詳しくはないが革命家としての正岡子規が描かれている。
     内容は、特に藤原道長と世阿弥がいい。
     大鏡で、道長の甥である隆家が道長邸にやってくるのだが、みんな宴会がだいぶ進んでいて、酔っ払っている。で、その中の一人が、身なりをきちんとしてやってきた隆家の服のヒモをほどこうとする。すると、侮辱するにもいい加減にしろと隆家がブチ切れるのだが、道長が、「それなら私が解きましょう。まあまあまあまあ」と場を制する。力を得た者の余裕と配慮の巧さ、権力者の、場の支配の仕方、そのためにはへりくだって負けてもみせる。それが圧倒的勝利であると解説されている。
     世阿弥は、能で勝負する時のコツを教えているエピソードが取り上げられている。当時、目利きのお客さんの前で、どちらの能が良いか、バトルをしていたそうである。そんなとき、相手が手堅い、素晴らしい芸をやってきたら、こちらは、同じ方法ではなく、あえて手を抜いたりして、おちゃらけたりしてやり返せ。男時、女時というのがあって、相手が男時だと、じっと女時にして耐えて、時期をとらえろ。流れを掴んで、ごり押ししない機転が重要というのを述べる。
     MCバトルのように、能バトルというのがあったというのは知らなかったけれども、世阿弥の教訓はたいへん普遍的で、実感がある。

  • つまんなかった。途中放棄

  • 「人生をひもとく日本の古典」の第四巻。このシリーズは、人間の行為にかかわる場面や発話を日本古典から選び、解説する。本巻は戦争はもちろん男女のいさかいなど、さまざまの戦いのなかに人間の真実が剔抉される。

    熊本大学:日本文学分野 教員

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著者プロフィール

1933(昭和8)年、東京生れ。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程満期退学。文学博士(東京大学)。東京大学教授、白百合女子大学教授を経て、東京大学名誉教授。日本学士院会員。専門は、中世文学、和歌文学、日本文学史。主な著書、『新古今歌人の研究』(東京大学出版会、1973)、『新古今和歌集全注釈 全六巻』(角川学芸出版、2011~2012)、『久保田淳著作選集 全三巻』(岩波書店、2004)、『花のもの言う』(新潮選書、1984。岩波現代文庫、2012)、『隅田川の文学』(岩波新書、1996)、『富士山の文学』(文春新書、2004。角川ソフィア文庫、2013)、『ことば、ことば、ことば』(翰林書房、2006)、『藤原俊成 中世和歌の先導者』(吉川弘文館、2020)など。
1997年より、『和歌文学大系 全八十巻』(明治書院)の監修者として、現在まで五十四巻を刊行。残る二十六巻も進行中。

「2020年 『「うたのことば」に耳をすます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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