ヨーロッパ覇権以前 もうひとつの世界システム (上) (岩波人文書セレクション)

  • 岩波書店 (2014年1月24日発売)
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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784000286824

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  • 十字軍をきっかけにヨーロッパが参入し始めた、ユーラシアのネットワーク(=世界システム)について書かれた本。
    イスラムと中国の間の通商ルートが様々な理由で変遷したことが描かれる。モンゴルによるシルクロードの保護あるいは破壊、イスラム諸帝国や中国諸王朝の盛衰、とか。
    欧米の読者を意識してかヨーロッパの話から始まるのだけど、中東、中央アジアの話に移っていくと、ヨーロッパでジェノヴァとヴェネチアが争っていても所詮は辺境の話であることがわかってくる。ユーラシアで行われている勢力争い・通商路の変化に翻弄される存在であることがわかる。

    下巻ではエジプト、インド、マラッカ、中国へと話が進むみたいだ。
    タイトルにある「ヨーロッパの覇権」が生まれたのは成り行きでそうなっただけだという話にまで到達するのかは不明だが、読むのが楽しみ。

    ※文庫版が出ているのですね。まあいいけど。

  •  ウォーラーステインが提唱した「世界システム論」では、大航海時代がもたらした世界的交易を起点に、世界は政治・経済や社会的差異を超えて一つの「システム」と化したとされる。
     そして、16世紀に成立したこの「近代世界システム」が、覇権国家をオランダ→イギリス→アメリカと変えつつ、今日まで続いているというのがウォーラーステインの見立てであった。

     本書はこの「世界システム論」をふまえたうえで、ヨーロッパが覇権を握る以前の13世紀に「もう一つの世界システム」が成立していた、とする。
     そして、著者は膨大な史料を渉猟し、13世紀半ばから14世紀半ばまでの約100年間の世界史を鳥瞰するなかで、その「13世紀世界システム」の概観を浮き彫りにしていく。

     昨年逝去した著者が1989年に上梓した本の、普及版による復刊。世界史を地球規模でわしづかみにする「グローバル・ヒストリー」の、先駆的な試みの一つである。
     
     基本的には専門書だから読みやすいとはいえず、上巻を読む間はなかなか入り込めなかったが、下巻に入ると面白くなってきた。
     
     欧米の歴史家にとって、「西洋中心史観」は宿痾の如きものであろう。本書は、その宿痾から自由であるという点だけでも評価に値する。

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