れるられる (シリーズ ここで生きる)

著者 :
  • 岩波書店
3.78
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本棚登録 : 153
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000287296

作品紹介・あらすじ

人生の受動と能動が転換する、その境目を、六つの動詞でつづった連作短篇集的エッセイ。どうやって生まれるのか。誰に支えられるのか。いつ狂うのか。なぜ絶つのか。本当に聞いているのか。そして、あなたはだれかに愛されていますか?だれかを愛していますか?れる/られる、どちらかに落ちる時が、ある-。その六つの風景。

感想・レビュー・書評

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  • 生む/生まれる、狂う/狂わされる、絶つ/絶たれる、愛する/愛される…。生と死、正気と狂気、強者と弱者…相反するものと認識している言葉と言葉の境目。何かがきっかけで、こちら側からあちら側へ。
    出生前診断、震災捜索活動でのメンタルヘルス、精神科の現場、理系の博士課程取得後の研究者の現実、など…ノンフィクションライターとして様々な現場をたくさん見てきた最相さんだから、本書は「エッセイ」という体裁ではあるものの、ひとつひとつのテーマはものすごく重い。そして、何が正解なのかを簡単に導き出すことができないゆえに、自分の思いも「れる」「られる」の間を何度も行き来した。如何に自分が偏った眼で物事を見ていたか。「あちら側」へ思いが至らなかったかということに気付いて愕然とする。本書を読むことは、自分の心の内側を深く掘り下げる作業でもあった。
    これまでの経験で、一番れるられるの間にいたのが、東日本大震災だった。被災者であると同時に、被災者支援の仕事に携わっていたこともあった。千々に乱れる思いを胸の奥に押し込めての震災後の一年は、簡単に言葉にはできない。だからこそ、「支える/支えられる」の章での最相さんの言葉は心に刺さった。
    「人を『してもらう/してあげる』関係に区分けするとはなんと切ないことか。しかし災害多発国であるこの国の頼もしさは、その切なさを知る人々がたくさんいるということなのかもしれない。強い国とは、軍事力でも経済力でもなくそういう国をいうのではないか。」
    命について、生きることについて、深く深く考えさせられる一冊。時には立ち止まって、色々と思い巡らせる必要があるのではないか。自分自身に問いかけるべきではないか。是非多くの人に手に取ってほしいなと思う。

  • 2回借りて2回延長してみたけど、第1章の「生む・生まれる」でSTOPしてしまい重く苦しくなり挫折。遺伝子カウンセリングも出てくるくるのに…。

    …いまは読む時期じゃないのかもしれない。

  • 【収録作品】第1章 生む・生まれる/第2章 支える・支えられる/第3章 狂う・狂わされる/第4章 絶つ・絶たれる/第5章 聞く・聞かれる/第6章 愛する・愛される
    *テーマを巡るいろいろな考え方に向き合いつつ、真摯であろうとする筆者の立ち位置が好ましい。当事者を置き去りにしてはいけない、そう思える第三者が増えることが必要。

  • 「いのちの場所」(内山節)と同じ岩波書店の一連のシリーズの一冊。タイトルの付け方が面白いと読んでみることに。ただ、”連作短編集”とあるのを”小説”と思ってしまったが、実はエッセイ。というか極めて事実に即したノンフィクションテイストの骨太作品だった。

    過去の著作で有名どころでは「絶対音階」。その他、星新一にまつわる本や、「セラピスト」(本書の内容に連なるところがある)等、徹底した取材が身上とのことらしい。確かに今回の”短編集”でも多くの実例に当たり、効果的な引用で話に厚みを持たせるなど、巧みな構成だと思わされた。他の作品も読んでみたい作家さんだ。

    さて本書は、「生む・生まれる」、「支える・支えられる」、「狂う・狂わされる」、「絶つ・絶たれる」、「聞く・聞かれる」、「愛する・愛される」という、動詞の受動/能動態のタイトルの6編。 内容紹介文が「人生の受動と能動が転換する、その境目を綴った」とか、「どちらかに落ちる時が、ある―。」なんて書いてるから、支えているつもりが実は支えられていたり、愛してるつもりが愛されていたとか、物事は表裏一体なのよ的な不思議な話が綴られているのかと予想したが(しかも小説として)、さにあらず。あまり境目的な危うさはない。いずれにしても、著者の真摯な取材能力と深い洞察を通してそれぞれ短いながらも重厚な作品となっていて読み応えある。

    特に「生む・生まれる」は考えさせられるところが多かった。前半の人工授精に関して、著者は
    「遺伝子上の父親が誰であるか、母親でさえもわからないのである。これほど人間のアイデンティティを揺るがす行いがあっていいのか。」
    と激しく憤っておられるが、そこはあまりピンとこなかった。遺伝子上の親なんて知っても知らなくても、自分の中で納得できればいいと思っているからかもしれない。それより人工授精が戦後帰還兵の不妊を大義名分として研究がスタートし、ドナー不足から医学生の中から精子提供者を募り、その噂が広がり”優秀な”精子を求めて希望者が殺到したなんて笑えない話がゾっとする。
    後半の出世前診断の恐ろしさの指摘が著者の真骨頂だろう。単に染色体異常の発見に留まらず将来は身体能力、果ては人格に至るまで、胎児の段階で優劣の判断に発展しかねないという指摘、そこまでは誰でも思いつくこと(昭和の時代にすら手塚治虫が漫画の中で警鐘を鳴らしていた)。それよりも、現在でさえ(現在出生前診断はダウン症の発見に主に行われているらしい)、その検査結果で判断を迫られる母親の苦悩、いや結果次第で迫られる判断よりも、その検査を受けたこと自体がその後も良心の呵責になるという鋭い洞察。出生前診断を受ける時点ですでに選択への道を踏み出しているという指摘が実に深い!
    「決心なんてしなくてもよくなればいい」
    この言葉は重い。実に深いテーマだと、僅か数十ページの小作品がズッシリ心に落ちてくる感じ。

    「支える・支えられる」は震災・災害等の後のケアする者とケアされる者との関係に言及したもの。被災地に赴いた自衛隊の心労に頭の下がる思いがひとしおだ。
    一方で、ケアする者とケアされる者の間に”不公平な人間関係が形成される”というが、日本で顕著な現象なのかもれないなどと読んでいて思う。日本では下働きとも見做される職種の従事者も、例えばロシアでは職に貴賎はないとばかりに堂々としている(貴賎はなくても給与格差があるのは当人たちも勿論承知した上で)。 仕事と割り切って、ケアを受ける側も与える側も、日本ほどケアする側の心のケアが更に必要になるなんて事態は、少なくともロシアでは起きない?なんてことを想ったりもした。
    ”心のケアとはそもそも、支援者が自分たちの活動を指して使い始めた言葉”
    だから受ける側への配慮がないということか。日本ってあっちこっちに気配りしすぎな気もする。さまざまな角度から物事を見ていたら自分を見失ってた~♪ってやつ?(笑)(Mr.Children「Innocent World」)

    この「支える・支えられる」は、場合によってはどちらかの立場に立たされることがあるが、前章の「生む・生まれる」では、”生む”話は出生前診断、”生まれる”話は人工授精の話と、それぞれ別の話題だ。それ以外も受動と能動が転換するとか、どちらかに落ちるとかいう話ではない章が多い。宣伝文句の煽りかたには難あり、と言っておこう。


    「聞く・聞かれる」は、さすが『絶対音階』をものした著者だけに、いろんな例が多くて楽しめた。 無響室という施設、「大いなる沈黙へ」(フィリップ・グレーニング監督)の長編ドキュメンタリー、ジョン・ケージの「4分33秒」という楽曲、ダイヤローグ・イン・ザ・ダーク、、、。聴覚にまつわる様々な角度からの考察。

    そして最終章の「愛する・愛される」は、『愛のかたみ』を記し、ベストセラーとなり、のちに批判を浴び文壇を去った田宮虎彦の話をただひたすら綴る。じんわりと、愛し愛されることの幸せを噛みしめることが出来る素敵なエッセイとなっている。

  • 「生む・生まれる」「正気・狂気」相反するものがあること、ある時を境に逆になるかもしれない。それは紙一重であり、誰にでもおとづれる可能性はある。中でも東日本大震災で支える側にいた自衛隊員が、過酷な状況の中では一歩踏み違えばPTSDになり支えられる側になるのだという話が印象に残った。全て丁寧な取材に基づくものだが、章が進むにつれ難解な言葉になり、興味が薄らいだのが残念。

  • 講談社ノンフィクション賞、小学館ノンフィクション大賞を受賞している作家・最相葉月が、岩波書店のシリーズ『ここで生きる』の第九巻として書き下ろした作品。
    同シリーズは、「立ち止まる。考える。生きること。私たちのこと。」をテーマとしているが、本書では、著者が、身近な人々やライターとして接した人々の生き方を通して考えた、人生の様々な局面・事象における「・・・れる人(こと)と・・・られる人(こと)」について綴られている。
    医学の進歩によって広まった出生前診断の問題を取り上げた「生む・生まれる」、東日本大震災などの様々な災害・事件を通して考えた「支える・支えられる」、友人及び著者自身の精神疾患を踏まえた「狂う・狂わされる」、科学研究の現場で働く人々の苦悩を語った「絶つ・絶たれる」、著者の父の終末期などから感じた「聞く・聞かれる」、昭和の作家・田宮虎彦と妻のエピソードへの思いを綴った「愛する・愛される」の6篇は、いずれも著者の深い洞察を通した重みのあるものとなっている。
    著者の作品からは、初期のエッセイ集『なんといふ空』(2001年発刊、2014年復刊)の当時から、他のライターには見られない不器用なほどの正直さ・誠実さが伝わってくるが、本書もその著者だからこそ書き得た、心を打つ作品集と思う。
    (2015年4月了)

  • 自分が支える側だと思っていたら、支えられる側にいる、そんな人生の境目を綴った、6章からなる。
    情緒的な話かと思っていたら、「セラピスト」のノンフクション作家らしい専門的な話を織り交ぜ、1章づつが重い。
    150ページ程度の薄い本だが、途中で何度も立ち止まり、考えさせられた。

  • 読みやすくてサクサク読んでしまった。いい話が多くもう一度読み返したいと思った。

  • つい 見過ごしてしまいがちなこと
    つい 見落としてしまいがちなこと
    つい すどおりしてしまいがとなこと
    つい 邪魔くさがってしまいがちなこと
    そんな ひとつ ひとつ に
    ちゃんと 焦点を当てて
    きちんと「思考」することの
    大切さを指摘させられた気がします

    私たちは
    生きている限り
    常に どこかにいて
    常に 誰かと向き合って
    常に 何かを考えて
    常に 何かと関わっている
    そんな存在なのでしょう

    自分が
    どこに 立っているのか
    思わず 考えさせられてしまう
    そんな 一冊です

  • オリンピックのエンブレムだの、新国立競技場だの、そんなのやってる場合じゃないでしょって言わざるおえない。ほんとちゃんとして!って訴えたい気持ちになる本でした。若い人々、高校生とかに是非読んでほしい良書です。

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プロフィール

1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒業。著書に、『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『青いバラ』『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『れるられる』『セラピスト』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)など。近刊に『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』。読売新聞紙上にて「人生案内」の回答者を7年以上つとめている。

最相葉月の作品

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