チャイナ・リスク (シリーズ 日本の安全保障 第5巻)

制作 : 川島 真 
  • 岩波書店 (2015年1月29日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000287555

作品紹介・あらすじ

中国の「脅威」をどのように認識し、それに対応すればよいのか。問題を解きほぐし、新たな関係模索の糸口を探る。

チャイナ・リスク (シリーズ 日本の安全保障 第5巻)の感想・レビュー・書評

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  • チャイナ・リスク 川島真編

    2015/3/29付日本経済新聞 朝刊

     中国をめぐるリスクをどう冷静に分析したらよいのか。そんな疑問を持つ人にお勧めの一冊だ。安全保障や軍事戦略から始まり、核・ミサイル開発を進める北朝鮮との関係まで、幅広く取り上げている。こうした対外路線だけでなく、抗議デモの頻発といった中国内の火種や、中国経済の先行きの不透明さにもふれている。国内の混乱が中国の強硬な行動を招いている面もあり、興味深い視点だ。(岩波書店・2900円)

  • 【186冊目】中国について知ろうキャンペーン中の本。論文集の体裁。中朝関係の論文があるのは良かった。編者も述べているが、台湾関連の論文がないのは大きな欠点。

  •  狭義の安全保障は第二部「中国の軍事・安全保障政策」のイメージだろうが、「党」と「人間」の安全保障を分離した第一部阿南論文や、第三部「多元化する中国とどう向き合うか」のとおり、人権・経済・社会問題まで幅広く捉えているのが特徴的。だからこそ書名も、「チャイナ・リスク」という、幅広い「リスク」としたのだろう。ちなみに英文書名は"China as a Threat to Japanese Security"。和文書名で「脅威」=Threatを使っていないのは、和文の語感が強すぎるからだろうか。また、asを入れており、中国をThreatだと断定してもいない。

     第一部では益尾論文が戦後の、阿南論文が主として改革・解放後の中国政治を俯瞰しているが、特に後者では「党」と「人間」の安全保障を分離し、先進国が専ら前者を尊重し後者の問題を先送りにしていることへの批判的な視点が特徴である。同論文では同時に、国内対立の先鋭化を防ぐための排外主義や経済発展と結びついた軍拡が地域の安全保障も不安定化させていることも述べている。このような国内と地域の緊張に対し、先進国が「既存の対中政策を維持して、こうした緊張を何とか管理することを目指すのか。あるいは、緊張緩和のために、対中政策の見直しに着手すべきなのか。」との問題提起で締めくくっている。

     第二部。岩谷・杉浦・山口の防衛研究所三名の共同論文は、ドクトリンや組織、党軍関係、軍に求められる役割と幅広く変化と連続性を俯瞰しており、これ一本読めば人民解放軍の歴史の基本構造が頭に入る。同論文では、1)党の軍隊として様々な役割を付託されてきた、2)90年代後半以降は国家防衛の役割が強調される中で近代化が進んだ、3)「党の軍隊」であることに変化はなく、また軍の政策決定における影響力は制度的に上昇しているわけではないが一定の影響力行使は可能、4)軍の活動の多様化、と内容をまとめている。平岩論文は、90年代以降の北朝鮮の核・ミサイル問題を取り上げているが、中国がテーマの本書に所蔵されている以上、中心は中朝関係である。オバマ政権期に北朝鮮にとっての「米国の脅威」が低下したことから中国の利用価値も下がったとの指摘がトランプ政権下でもなお続くかはともかく、両国関係が「相手を徹底的に利用しあう現実主義に基づいた関係」「中国の北朝鮮に対する影響力を過大にも、過少にも評価してはならない」との結論は当面は変わらないだろう。飯田論文は、主として2000年以降の南・東シナ海進出とその主要事象を俯瞰し、日本のみならず米国を含めた地域諸国にとり大きな課題となっていると指摘している。

     第三部でのそれぞれの指摘。富坂論文では、社会への庶民の怒りが無差別テロやネット上世論に向かい、中央政府は過剰なまでに反応・締め付けを行っていること。阿古論文では、複数の環境問題を事例に、市民の抗議が活発化していること。梶谷論文では、中国経済そのものの不確実性や日中外交をリスクとしつつ、単なる「企業撤退ブーム」には否定的。川島論文では、両国の相手に対する国民感情が悪循環する危険性や、習近平政権では正当性確保・党の基盤強化のため言論統制が強化され、歴史をめぐり日本への批判を国内外で強めていること。

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チャイナ・リスク (シリーズ 日本の安全保障 第5巻)はこんな本です

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