終焉する昭和――1980年代 (ひとびとの精神史 第7巻)

制作 : 杉田 敦  栗原 彬  テッサ・モーリス‐スズキ  苅谷 剛彦  吉見 俊哉 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000288071

作品紹介・あらすじ

戦後の「総決算」からなし崩しの転換へ。経済大国化による新たなナショナリズムと、国際化・多様化とのせめぎ合い。

感想・レビュー・書評

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  • 『ゆきゆきて、神軍』主人公の奥崎謙三さんの章は想田監督が書いてらっしゃる。

  • 昭和の最後は時代の転換期を象徴する人物、戦争の影を未だに引き摺った時代だったと感じさせられる人物群。
    興味深かったのは靖国裁判の原告として真面目に向き合った浄土真宗の僧侶・安西賢誠氏。親鸞の核心的な教えである「神祇不拝」「国王不礼」。他の神々を拝まない、世俗的な権力者に礼拝しないという意味だそうで、それに忠実に従い、父・祖父が付けた戒名に違和感を感じたところから始まる。この安西氏に影響を与えたというキリスト教徒・小笠原亮一との出会いで感銘を受けた場面が印象的。(P155)「尊い犠牲者」への感謝という言葉で日本国の加害性が消えてしまったことへの告発は僧侶であるだけに説得力を感じた。
    美空ひばりは「昭和の演歌の女王」と呼ばれ、昭和の終焉の象徴とされるが、ひばりの全盛期は決して演歌歌手でもなく、また国民栄誉とは遠く、健全で家庭的な音楽という観点からは明確に望ましくない存在と考えられたことが書かれている。そもそもかつては「艶歌」だった!後日祭り上げられた虚像であるという皮肉。
    天皇をパチンコ玉で打った奥崎謙三という奇人が決して狂っているわけではなく、「悪因の社会を象徴する天皇への攻撃」、戦死した同僚兵士の仇を取ることの象徴的な事件にしようとした!などの背景は想像もつかなかった世界。
    宮崎駿は「飛翔」の代表的テーマとされるが、実は飛翔ではなく、落ちそうで落ちない!が魅力であり、アニメがそれを可能にし、集団的単純労働への否定として絵をダイナミックに動かす職人、手作りに拘ったという背景が、昭和の終焉を象徴している!
    「地球の歩き方」創刊メンバー・ダイヤモンドビック社の安松清、西川敏晴ら4人のメンバーがツアーを立ち上げ、「節約旅行、自由旅行」(自分探しの貧乏旅行ではない!)をテーマにした雑誌に発展したとの歴史が私自身の74年の欧州旅行を思い出し、興味津津だった。71年の入社式前日に帰国した西川が「欧州1日5ドルの旅」のような本を作りたいといい、先輩の安松が、「それを毎日言い続けること。きっと出来るよ」と励ましたとは愉快だし、人生訓のようだ。バブルに沸き立つ日本を一時的に脱出する避難地としての海外はどこでもよかった!それゆえ、日本の経済状況が不安定化するに伴い、貧乏旅行が廃れていったということは、興味深い。この他、中曽根康弘、上野千鶴子ら。

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