GHQの検閲・諜報・宣伝工作 (岩波現代全書)

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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000291071

作品紹介・あらすじ

戦後の日本ではそれまでの内務省による検閲に代わり、GHQによる検閲と宣伝工作が展開された。メリーランド大学プランゲ文庫やアメリカ国立公文書館など、アメリカ合衆国において完全な形で保存されてきた検閲資料を丹念に調査し、検閲組織とその実態を明らかにする。そして、朝日新聞とNHKなどの組織や、緒方竹虎、永井荷風といった著名人たちが、占領下の検閲・諜報・宣伝活動にどのように関わり、翻弄されたかを検証し、許された言語空間、奨励された言論活動とは何だったのかを問う。

感想・レビュー・書評

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  •  戦後占領期のGHQによるメディアに対する検閲や宣伝工作の実態を、プランゲ文庫所蔵資料やOSS・CIA文書等から実証的に明らかにした書。日本側メディアがいかに占領当局に妥協・協力していったかがわかる。検閲をアメリカによるブラック・プロパガンダの一環として捉えている。従来言われていたような右翼・軍国主義的言論への規制よりも、共産党や左翼的言説への抑圧が大きかったことが興味深い。

  •  プランゲ文庫資料にもとづく実証的なGHQ検閲研究の先鞭をつけた著者の仕事の集大成的な一冊。GHQ/SCAPが行っていたインテリジェンス活動をコンパクトに概観する。もはや戦後占領期研究の基本文献であろう。

     こうして見ると、アメリカ合州国にとって最初の本格的な占領統治となった日本占領の経験が、いかに現在の合州国の政治軍事的なインテリジェンス体制を作り上げてきたかが明確になる。大量の情報を集積し、必要に応じて抽出・整理したうえで分析にかけ、カウンター・プロパガンダを打っていく――。検閲は単に、権力の暗部を隠蔽するためのものではない。検閲は、言論の指導統制と一体化することで、文化工作・宣伝宣撫工作の有力なピースとなる。「何を語らせないか」という判断は、「何を語らせたいか」の裏返しなのである。

     興味深いことに、日本の戦時言論統制は、こうしたGHQ/SCAPの「指導」を十分受け入れるほど「成熟」し「高度化」していた。アジア・太平洋戦争期を通じてインテリジェンスは、交戦各国の間で学びあわれ、交換されながら高度化していったのだ。

  • 言にこそ一等国の民われと誇れどあはれ乱れ止まずも
     影山正治

     昨年12月16日の本紙(注:北海道新聞)1面に、「GHQ郵便検閲 生々しく」という、目を見張る記事があった。終戦後の被占領期、連合国軍総司令部(GHQ)内の民間検閲局(CCD)が、日本国民の郵便物を検閲しており、札幌でも実施していたという貴重な証言だった。

     1945年9月から49年10月まで、全国の2億通もの郵便検閲が行われ、電報や電話の内容も調査されていた。作業担当者の多くは、高給で雇われた日本人。占領国民の生の声を収集し、情報管理に役立てる目的であり、その成果は世論操作にも少なからず反映されていたことだろう。

     2005年に、私も札幌発行文芸誌とGHQ検閲について調査をしていたが、ペン書きの英文調書の解読・翻訳に難航し、中途半端な報告書しか書けずにいた。
    他方、早稲田大名誉教授の山本武利氏らによる綿密な研究成果が次々と発表され、今では、当時のGHQによる周到な諜報活動が明らかにされている。

     具体的なデータが示される都度、驚き、ときにため息をつき、これこそが現代日本史なのだ、と痛感させられている。検閲に従事した日本人の給与等がどこから支払われていたか、学生はぜひ調べてほしい。

     掲出歌は、GHQ検閲で発禁処分を多くうけた歌人の作。歌集から、「削除」処分された1首でもある。

     占領期を経てこそ、今の私たちの日本がある。「占領期雑誌資料大系」(岩波書店)も、あわせて紹介しておきたい。

    (2014年12月21日掲載)

    追記:拙コラムを読んでくださった方から、郵便検閲に携わった札幌在住のかたをご紹介くださるという、思いがけないお話がありました。
     しっかり、伺ってまいります・・・!

  • GHQの占領政策において検閲等が行われたことを知らない人はいないとおもうが、本書により、それが極めて組織的かつ大規模に徹底して行われたことがよくわかる。つまり、戦後の日本は反米から一転して親米へ方向転換したのではなく、させられたということであり、これが「戦争に負けた」ということなのだろうと思う。自由主義を守る、という錦の御旗のもとに、国民の自由が大きく制限されたというのは何とも皮肉だけれど、戦後70年近く経過してなお、米国の傘下から独立するための方策を見いだせない現状をみると、米国の目的は大いに達成られたと云わざるを得ないだろう。

  • 検閲というものが、これほど日本人の戦後精神を左右していたなんて、想像以上に恐ろしさを感じる。
    「無かったこと」ではなくて「知らされなかった」だけであるのなら、「アメリカ人は良い人」感覚と、日本兵の中国人虐殺などの自虐感はなんてくだらないことなんだろう。
    情報と検閲などを駆使して、ひとつの国を作っていくという恐ろしい戦略を持った国に勝てるはずもなかったし、現在もなお、アメリカは世界を操作しているのでしょう。

  • 敗戦後の占領期においてGHQによって実施された各種メディア戦略を
    膨大な資料を持って分かりやすく解説する労作。
    検閲の実態が表やインタビュー、引用を持って説明されており、
    また時折挟まれる日本人検閲者による作業風景写真には
    大きなインパクトを受ける。
    NHKやジャーナリスト、新聞などが次々と従順になって行く様は
    「思想と文化の殲滅戦」の成功を感じずにはいられない。
    分量も少なく、読みやすい割に得られるものの多い良書。

  • 戦前及び戦中の政府による世論操作のことはよく知られているが、戦後GHQによるそれはあまり知られていない。本書は、検閲機関であるCCDと民主化思想啓蒙指導機関であるCIEとが両輪となって、占領下の日本においてGHQによる巧妙なプロパガンダが展開されてきたことを明らかにする。

    敵国であった日本をアメリカの従順な属国とするためには、GHQにとって不都合な情報の拡散防止と、軍国主義の排除及び民主化思想の教育が必要不可欠であった。前者はCCDが、後者はCIEが担い、それぞれNHKや大新聞社などのメディアを通じて世論誘導を実施する。その結果、日本人の間に徐々に戦争罪悪感が芽生えていき、敗戦に際して一度は自殺も考えたという聡明なナショナリスト徳富蘇峰でさえも、マッカーサーによるこのブラック・プロパガンダの実態を見破ることができずに洗脳されていく場面などは実に印象的だ。

    「彼らアメリカ側は日本占領を戦争の延長と認識していたことを日本人は気付かなかった。そして日本人には平和な時代を迎えたと誘導しながら、実は冷戦下での日本の隷属化を画策していた」(p.215)

    よくある陰謀論的な類いの本ではなく、メディント(メディアを使ったインテリジェンス収集工作)についての緻密な実証研究に基づいた、確かな論拠のある労作。膨大な未整理の公文書等と格闘するという、この労多き地道な研究に身を捧げた著者には頭が下がる。私自身、戦後史に対する認識がかなり改まった。

  • 敦賀事件というのは初めて知ったが、情報操作ってのはやっぱりすごいね。

  • 戦後のGHQによる情報統制、検閲と日本のメディア、著述家の対応例などに関してまとめられた1冊。実際の検閲作業がどのように行なわれたかなど、著名人、新聞などの具体例が記述されており、興味深い。自分の書いた文章は時を経て自分で復活さできるようにしていた永井荷風の対応は先見の明あり。今の日本では検閲による情報統制は表向き存在しないが、いつ自分の書いた文章が抹殺されるとも限らず、このような姿勢は大いに参考にすべきように思う。

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著者プロフィール

1940年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。一橋大学名誉教授、早稲田大学名誉教授。

「2018年 『子ども・家庭・婦人博覧会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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