明治日本の植民地支配――北海道から朝鮮へ (岩波現代全書)

著者 : 井上勝生
  • 岩波書店 (2013年8月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000291118

作品紹介・あらすじ

著者が勤めていた北海道大学で「東学党首魁」と書かれた遺骨が見つかった。誰が、なぜ、どのように、運んだのだろうか?遺骨の軌跡をたどって北海道、朝鮮半島、四国へと旅を重ねた結果、日清戦争のもう一つの側面、ジェノサイドの真実が浮かび上がる。アイヌ民族、東学、植民学をめぐる近代日本の植民地支配の闇の奥が、いま明らかになる。

明治日本の植民地支配――北海道から朝鮮へ (岩波現代全書)の感想・レビュー・書評

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  •  1995年に北海道大学の古河記念講堂内で発見された頭蓋骨群のうち、朝鮮「東学党」の領袖のものであることを示す書付が付された遺骨の調査過程をまとめた書。内外の史料の探索・解読や現地調査を通して、日清戦争下での東学農民の大規模蜂起(現在「第2次東学農民戦争」と呼ばれる)と、それに対する日本軍及び日本軍指揮下の朝鮮軍による凄惨な虐殺の実態が明らかになっていく過程は圧巻である。また、遺骨が略取されて北大に伝来する経緯の調査から、札幌農学校時代からの北大殖民学人脈がアイヌ差別やアジア植民地支配において果たした役割の重大性が明らかにされている。

  •  北海道大学。クラーク博士、そして開拓のイメージからリベラルな校風として知られ、あるいは左翼的な校風として見做される。そんな北大で、かつてアイヌ人や朝鮮人の骨が段ボール箱のなかから発見され、大きな社会問題を巻き起こした。
     本書はその朝鮮人の頭骨に残された「甲午農民戦争」の指導者という墨書をもとに、日清戦争と同時期におこったこの朝鮮民衆による反日抗争がどのように鎮圧(殲滅)されたのか、掘り下げられていく。
     現在、いわゆる慰安婦問題がクローズアップされ、さまざまな立場から日韓問題が論じられている。が、日韓問題を考察するうえで、忘れ去ってはいけないことが本書には記されている。

  • 勤務先に放置されていた頭骨に記された「韓国東学党首魁ノ首級ナリト云フ 佐藤政次郎氏ヨリ」という墨書。これを手がかりに、「佐藤政次郎」を追い求める。そして甲午農民戦争における日本軍のジェノサイド、その日本軍兵士が負っていた「貧困」という背景…また同時期にアイヌに対して行った日本政府の苛烈な収奪政策へと、著者の足取りは「頭骨は誰か」という問題を軽く超えて、広がりをみせる。

    甲午農民戦争における日本軍の「虐殺」指令を手がかりに、南小四郎後備歩兵独立第十九大隊長の文書へと行き当たり、その虐殺の様相を再現していくさまなど、本書は歴史の研究書としても優れている。しかし同時に、明治維新史を専門とする著者が、自身の専門外の領域へ踏み出していく研究の足跡を追う「物語」としても読むことができる。「頭骨は誰か」という謎解きではなく、ひとつの問題からより広く深い問題へと広がりをみせる〈歴史研究のあり方〉にも触れることができる一書といえるのではないだろうか。

  • こういうのを読むと、どこかに「霊」がいるような気がする。
    隠された歴史にどうしても納得しない霊が、衝撃的な「あらわれ」で、世間に訴える。
    当然、著者のような探究者が現れ、すべてを明らかにしていく。
    頭骨に墨書するなんてことは、科学的調査以外考えられない。ヒトをモノとしてしか扱わない感覚がなければできないことなのだ。その怒りが人目に付くような放置という形を取らせたのだろうな。

  • 明治維新からまだ二十数年しか経過していないのに日本は文明国であると自称し、朝鮮は未開の国としてそこに暮らす人々を蔑視した。そして、日本は朝鮮を強制的に保護国としたのであるが、当然に反日感情は爆発する。統監府は朝鮮に親日政権を組織することに努めていたので、抗日東学農民軍に対する討滅作戦という大弾圧の歴史は『日清戦史』では削除され、その後も殲滅作戦は存在しなかったことにされた。だから唯一の戦死者はまったく異なる戦いの戦死者として日付と場所を改竄されて『靖国神社忠魂史一巻』に掲載されている。欺瞞の国、日本。

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