変格探偵小説入門――奇想の遺産 (岩波現代全書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000291132

作品紹介・あらすじ

「謎解き」を主眼とする本格探偵小説に対し、変格探偵小説と呼ばれて来たのは、怪奇、幻想、猟奇、SF、秘境、冒険、シュールレアリスムなどの要素を含んだ、多様な小説群である。江戸川乱歩、横溝正史、小酒井不木、夢野久作、橘外男、渡辺温、久生十蘭、西尾正…。彼らはみな、変格探偵小説の書き手として活躍した。狭義の推理小説の枠を超えた豊饒さで読者を魅了しつつ、今日まで途絶えることなく受け継がれてきた「変格」の精神史を、豊富な資料から論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 変格探偵小説論集。入門と題してはいるがブックガイド的な本ではなく、甲賀三郎の云う「本格/変格」という2項対立を超えた、広義の探偵小説としての「変格」という視点から戦前の探偵小説を捉え直すというもの。著者の主たる主張はほぼ第1章の『「変格探偵小説」とは何か』にまとめられており、以降は個別の乱歩や横溝、久作といった個別の作家論になる。
    興味深かったのは第6章の『変格のリアリズム』で橘外男の実話物を「変格探偵小説」視点で論じていくというもの。橘外男、ほとんど読んだことないが読みたくなった。あと、最終章で出てくる西尾正も気になる。

  • ・本格に対する変格。夢野久作、久生十蘭、小栗虫太郎、国枝史郎、海野十三、橘外男、渡辺温

  • 戦前の探偵小説が大好きで、ここ最近、同時代の純文学方面にも手を出している自分には本書の内容は大変興味深く、面白く纏められている評論でした。
    乱歩、虫太郎、夢Qを始めとして正史、不木、甲賀三郎、宇陀児、橘外男、渡辺温に十蘭 等々…戦前の探偵作家の作品を読み、エッセイを読み、単行本の巻末についているいろんな方々の解説・書評を読み、その中で何となく自分の中でモヤモヤとした感じで繋がっていたものが、この本の中で理路整然と整理されて提示された感じで。「ああ、そういう事か!」が沢山あった。(本書のタイトルは「入門」と銘打ってはいますが、割と登場するの作家の作品を読んでないと理解できない所が多々ありますから、それなりの読書玄人向けですね)
    涙香に始まった日本の探偵小説が、戦前「本格」「変格」としてカテゴライズされ、特に「変格」の概念、そして多様な要素を含んだ小説群の発展史(精神史)が纏められた一冊でした。
    (最後の結語で変格の流れを山風にまで繋げてましたが、本文で論じているのは戦前の範囲のみ)

    探偵小説文壇と、純文学の文壇はどうもまったく別個のモノというイメージだったのですが(かろうじて、谷崎と芥川と佐藤春夫に推理小説的作品があるのは良く知られている話ですが)、本書の中で「夏目漱石の影響を受けた横溝正史(探偵小説嫌いの漱石が書いた、探偵小説的作品)」と、「変格の1ジャンルである実話モノに貢献している菊池寛」の2点には驚きました。
    純文学系の作品から探偵小説作家への影響ってのは思いの外あるものなのですね。(本書のテーマの性質上、逆方向の影響関係もあるのかもしれないのですが、そこは対象ではないので)
    確かに、乱歩の土蔵の中にも漱石全集は並んでいたなぁとか、この本を読んでて思い出しました。

  • 山田風太郎記念館

  • 秘境小説まで取り上げておいて、香山滋を完璧に無視しているのは何故?

  • 入門とありますが、かなり難しい文芸評論です。
    「変格」とは「変革」であり・・・というのが結論のようですが。
    本格探偵小説がいわゆる探偵ものだとすると、変格探偵小説というのは、その他すべてのミステリーものをさすということでしょうか。
    呼び名は「大衆文学」「怪奇小説」など色々とありますが・・・・。

  • なんというか、筆圧の強さが凄い。それは、筆者の探偵小説愛が実に深いということの証左だと思うのだが、いかんせん紹介されている小説の評価の高さは、贔屓の引き倒しではないかという疑いが拭えない。

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著者プロフィール

茨城大学人文社会科学部教授。専攻は日本近代文学。著書に『戦前戦後異端文学論』(新典社)、『変格探偵小説入門』(岩波書店)、『戦後変格派・山田風太郎』(青弓社)、共編著に『定本 夢野久作全集』全8巻(国書刊行会)など。

「2022年 『〈怪異〉とミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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