- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000291293
感想・レビュー・書評
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外交面を中心とした大平正芳の伝記。
日米協調を基軸に据えつつも、対米一辺倒にならず、アジアとの関係も重視し、また、環太平洋の秩序形成を進めようと大平の外交姿勢は、非常にバランスのとれたものだと感じた。日米繊維交渉や日中航空協定の交渉などで、目先の手柄にとらわれず、理屈に合わない譲歩を拒んだエピソードも印象的だった。大平が核密約を国民に公表するかいなかで悩んでいたというのも初耳だった。
大平正芳の生い立ち、事績、理念など、非常によくまとまっていると感じたが、全体的に記述があっさりしすぎていて、個々のエピソードがあまり掘り下げられていない印象を持った。同じ著者の中公新書『日中国交正常化』のほうが読みごたえがあったように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の世代になると大平正芳も歴史上の人物となるのでしょう。しかし、同時代に生きる者にとっては「あー、うー」の思いでしかなく、当時の政治家はほぼ全員、ひどい顔をしていたので、それだけでも世界に対して恥ずかしく・・・。
そんな思い出しかない。
確かに重要なポストを歴任し、日本の外交で活躍したのかもしれませんが・・・。
でも、少しはイメージの改善は我が脳の中で読後ありました。 -
大蔵省から首相へ。戦前は官僚として大蔵省に勤め、中国にも赴任した。戦後は外務大臣や大蔵大臣、自民党幹事長など要職を務めた後、首相に。「永遠の今」、「楕円の哲学」、「文化の時代」など言葉を残す。哲学を持った政治家。外務大臣として日中国交正常化に尽力した功績が大きい。日本の戦後政治史を振り返ることも出来、非常に楽しく読めた。特定の人物について書かれた書籍はあまり読んだことがなかったが、とても面白い。そして政治家への尊敬の気持ちが強くなった。1970年代に経済成長ではなく、文化の時代を打ち出す思想には感服。それから50年余りが経った現在、多くの人はまだ経済成長に囚われている気がする。