環境の経済史――森林・市場・国家 (岩波現代全書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000291330

作品紹介・あらすじ

人類の歴史は自然からの制約によって形づくられてきただけではなく、自然を変える行為の積み重ねでもあり、その自然改変の結果がさらに社会に影響を及ぼすという、相互作用の帰結であった。人類史が人びとの頭数の増加の歴史であるならば、人口増加とともに森林面積は減少する。それどころか乱伐にいたった時代も何度かあった。しかしなぜその減少が必ずしも「森林崩壊」には直結しなかったのか。日本列島は、先進国では珍しく緑豊かで三分の二は森林に覆われている。その日本列島を対象に、国家の営為と市場の役割に焦点を合わせ、いかに森林は保全されてきたのかを解き明かす比較環境史の試み。

感想・レビュー・書評

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  • 経済史の観点から、森林崩壊がいつどこで起きたのか、起きなかった場合と比較するという試み。立論や実証の過程で、環境経済学や開発経済学の理論・実証研究を援用しているが、結論では「市場か国家か」という経済学でしばしば見られる二項対立的な枠組みを批判している。こうした筆者の経済学との絶妙な距離感が、歴史研究としての本書の価値を高めているように感じられた。ただ、森林の維持・回復の要因については、筆者が重視する市場的要因だけでなく、やはり宗教や地域共同体の慣習など非市場的要因も重要だったのではないだろうか。筆者も非市場的要因を全く軽視している訳ではないだろうが、両者についてもう少しバランスの良い記述でも良かったのではないだろうかという気もする。いずれにせよ知的好奇心を刺激する魅力的な一冊。

  • 日本の森林被覆率は変動がなかったのではなく史料がなかった。江戸初期100年には乱伐があり、森林は疲弊した。その後にトップダウン、ボトルアップ双方のベクトルが働いて持ちこたえた。日本がイースター島のように滅亡してしまわなかったのは、やっぱり「ひと力」なのかなぁ。

  • 世界の人口の増加に反比例して森林は減少し、時には乱伐と言える状態にありながらも、なぜ森林崩壊にいたらなかったのか。日本、ドイツ、中国などの例をもとに、国家と市場の役割に焦点を当て、いかに森林は保全されてきたのかを解き明かす比較環境史。文章としては決して読みやすいものではないが、どのような要因が森林の維持に寄与しているのかなどを、多面的に考察している。

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著者プロフィール

1951年3月15日 埼玉県八潮市生まれ。
1974年 千葉大学園芸学部園芸学科卒業。
1976年 千葉大学大学院園芸学研究科農業生産管理学修了。
1978年 東京大学大学院農学系研究科博士課程農業経済学専攻入学。
1981年 東京大学大学院農学系研究科博士課程単位取得満期退学。
1981年 広島大学助手(生物生産学部)。
1983年 東京大学大学院農学系研究科博士課程修了(農学博士,東京大学)
1988年 広島大学助教授(生物生産学部)。
1992年 広島大学教授(生物生産学部)。
1997年10月~2016年3月 千葉大学大学院園芸学部教授(1998年3月まで広島大学と併任)
2017年4月~ 昭和女子大学客員教授。 

「2023年 『果実のフードシステムと産地の戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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