- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000292016
感想・レビュー・書評
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防衛大学校長として多忙な中、過去の論考を1つのテーマに収斂させたという本書。
日中関係の動きはパワーシフトや歴史認識といった要因で語られることが多いが、実は中国の国内政治によるものだとする。
第一部は中国の政治体制についてで、社会主義市場経済への移行や政治体制改革がなかったために腐敗が進んだこと、後継者決定のルールがないために権力闘争の激しいことなど。
第二部は中国の対日政策で、国交正常化以降の1972年体制から江沢民訪日以降の戦略的互恵への移行、そして現在について。日中関係の変動要因が中国国内の権力闘争や派閥抗争によるものであることを示す。江沢民の反日は体制維持のイデオロギーとなってしまっており、20年以上続いたこれが変わることは難しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふむ
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712518 -
日中の関係は、中国の国内の権力闘争の影響を強く受けていることが分かりやすく示されている。
過去から習近平に至るまでの権力闘争史が簡単にまとまっていて、知識の整理になった。 -
王道の中国政治・日中関係(史)という感じである。前半で鄧小平時代以降の中国政治、後半で1970年代以降の日中関係を時代ごとに見て行き、終章で両者を合わせて総括している。
90年代半ば以降の日中関係の摩擦の繰り返しは、冷戦構造や戦争世代に支えられた「七二年体制」の構造変容のため、という筆者の指摘と類似の内容は毛里和子『日中漂流』にもあった。筆者はそれに加えて中国政治における党内権力バランス、特に江沢民派の存在を挙げている。「反日」は江沢民個人の日本の好き嫌いを越えて、胡錦濤時代になってからは主流派を攻撃する材料にもなり、更には改革を否定し既得権益層全体の体制維持のイデオロギーにもなったというのである。
今や日本から中国を見る上では、米、南北朝鮮、更には世界の中での中国の存在感の変化、と多くの要素があるだろう。しかしそれらを全て網羅するとなると一冊どころかシリーズ刊行が必要なほどである。本書ではあくまで中国国内政治と日中二国間関係に絞ってはいるが、それだけに王道というか原点に立ち戻ることができる。
なお、序章での日本の中国地域研究を巡る状況も面白かった。日本では米国に比べて理論より実証重視、比較政治学より国際関係論に親和性を持つ、とのこと。しかし筆者は、実証主義の良さを認めつつも理論化に向けた志向や、英語力を持ち世界に発信することなどを課題として挙げている。 -
312.22||Ko