ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー 162)
- 岩波書店 (2009年9月18日発売)
本棚登録 : 45人
感想 : 13件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784000295628
みんなの感想まとめ
ザリガニの多様な世界を知ることができるこの書籍は、著者の専門的な知識を基に、歴史や生態、形態について易しく解説しています。特に、日本に分布する3種のザリガニについての詳細な情報は、若年層にとっても理解...
感想・レビュー・書評
-
川井 唯史
(かわい ただし、1964年7月25日 - )は、日本の研究者[1][2]、農学博士、国際ザリガニ学会事務局長である。地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部中央水産試験場主査。湿原で有名な北海道釧路市に生まれた。釧路市立北陽高校出身。北里大学水産学部卒業後、北海道立総合研究機構稚内水産試験場に勤務し、コンブ、ウニ、ホタテ、シジミなどを調査・研究の対象としている。幼少時に自宅近くの小川でザリガニを採って遊んだ際に青い個体を見た体験などからザリガニに興味を持ち、現在[いつ?]はザリガニ研究の第一人者となる。
「ザリガニは「方舟」 ザリガニは、自ら動くことのできる背骨のない生き物としては、淡水域で最大です。そのため、魚や鳥にとっては格好の栄養補給源となります。水田に棲むウシガエルやカメも、アメリカザリガニを として食べます。 アメリカザリガニは時として植物を切ってしまうので、水草がなくては生きられない生き物と同居する例はあまり多くありません。この傾向は、ウチダザリガニも同じです。彼らは巻貝も食べてしまいます。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「またザリガニの体には、おびただしい数の生き物が付着しています。河川で最大級の彼らは、小さな生物に都合のよい生活場所となるからです。代表的なのはヒルミミズです。その名前の通りヒルとミミズの中間的な生き物であり、体液を吸うことはありませんが、ザリガニ類の体の上だけで生活できる不思議な生き物です。 その他にもザリガニのエラだけで生活するツリガネムシや、口のみに付着するエビの仲間など、多種多様な生き物がザリガニを生活場所として利用しています。これらの付着生物は、ザリガニとともに移動して生きていけるのです。ザリガニは、河川の生物における「方舟」の役割も担っているといえます。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「ニュージーランドのパーキン博士は、ザリガニの食事に関して興味深い研究を行ないました。人間と同じように、ザリガニの の成分のうち、肉などのタンパク質や脂肪分は体をつくり、炭水化物は日々の活動エネルギーになります。博士の実験によって、成長の段階によって要求する栄養成分が変わること、とくに子どものうちは肉や脂肪を好むことがわかりました。成長が早く、体をつくる時期にタンパク質が重要なのも人間と同じです。 ニホンザリガニがふだん棲んでいる場所では、肉はごちそうです。彼らの胃の中は落葉とバクテリアで満たされていて、タンパク質を含む は不足気味であることがわかります。そのためタンパク質が豊富なスルメなどの には、ザリガニはよく集まるのです。私たちが何気なく行なっているスルメを使ったザリガニ釣りにも、それなりの意味があったのです。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「江戸時代の日本の伝統医学では、外国から得た情報に基づき、ザリガニの体内に形成される「胃石」(後述)を薬としていました。そのため、当時の医学者たちはザリガニに対する関心が高かったはずです。しかし、医学の中心である江戸にザリガニは棲んでいなかったため、「ザリガニとはどんな生き物か」を正しく理解するのは、なかなか難しかったようです。たとえば、江戸中期の百科事典『和漢三才図会』や食物図鑑『本朝食鑑』では、ザリガニとシャコが混同されています。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「観光地としても有名な北海道庁の「赤れんが庁舎」には、北海道が開拓された時代の公的な文書が残されています。このなかに、明治時代の初期にドイツのベルリンで開かれた博覧会で、北海道産のニホンザリガニが出品されたという記録があります。このときの標本は貴重なものなので、ベルリン博物館の二階収蔵庫に今でも保管されています。国内でも、京都の博覧会に出品された記録が残っています。明治初期、ニホンザリガニは依然として北海道の代表的な産物だったのです。 また、明治の日本を調査したアメリカ船アルバトロス号は、北海道南部の港町、函館の市場でニホンザリガニを得て、本国に持ち帰っています。その標本は二 ~三尾が一本の串に貫かれたもので、現在もアメリカのスミソニアン自然史博物館に保存されています。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「時代は変わって大正時代、ニホンザリガニにまつわる意外な人物がいます。大正天皇です。なんと大正天皇の即位を祝う公式な祭典での晩 会に、ニホンザリガニのスープが出されていたのです。 皇族の公式行事の記録は、永久保存史料として宮内庁に厳重に保管されています。大正天皇の即位に際して開かれた晩 会「大禮 宴」の様子とともに、食材に関することも克明に記録されています。北海道・支笏湖産のニホンザリガニがクリームポタージュの食材となり、牛酪(バター)や鶏肉なども使われていたようです。料理のスケッチを見ると、真っ赤になった二尾のザリガニがスープ皿の中に浮かんでいます(図 2・ 8)。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「ニホンザリガニは、水温が一〇℃を下まわると交尾を始めます。彼らの生息地では一〇月です。ニホンザリガニの交尾は荒々しく、まずはオスがハサミで無理やりメスを挟んでつかまえます。その後、オスとメスは重なりあい、理由は不明ですが、必ずオスが下になって交尾を行ないます。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「 オスは交尾が始まるとメスをつかんだハサミを離して、自分の腹部を丸めてメスの腹部を抱え込むようにします。そして、歩くための脚(交尾肢ではない脚)の根元付近にあるカギ爪を、メスの体に引っかけて、巧みにメスを固定します。オスの精子は交尾肢の精子溝を通り、メスの腹部にある受精囊にたどりつきます(第 3章参照)。精子は一つの塊(乳白色の精包)となって、受精までメスの受精囊で貯蔵されます。交尾の時間は長く、二時間以上もかかります。しかも昼夜を問わず行なわれるので、一〇月頃に北国の小川を歩いてみれば、ニホンザリガニの交尾によく出くわします。 水槽でニホンザリガニを飼育していると、メスは一冬に数回以上交尾することもあります。交尾のシーズンにはオス同士の激しい闘いがしばしば見られます。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
「アメリカザリガニを、生物教育の材料として使ってください。生物が生きている以上、かならず何らかの が必要で、繁殖して子どもが生まれ、いずれ死に至るということ、つまり生命の一生に直にふれさせることが、生き物に対する深い理解と興味につながると思います。もちろん他の生き物でも可能ですが、特にアメリカザリガニは、本来の日本の生き物や生態系について、身近な水辺環境について、子どもたちに教えるのに適した教材です。知識だけでなく、それぞれが考え行動する必要があることも、ぜひ伝えてください。」
—『〈生きもの〉 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)』川井 唯史著
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<始まりは20匹だった!?>
思いがけずザリガニと濃い~関係(?)となって数ヶ月(顛末は『ザリガニのかいかたそだてかた』http://booklog.jp/item/1/4265059090に。よろしければご参照下さいませ)。
ザリガニについてさらに知ろうじゃないの、というわけで、ザリガニ本・第2弾です。
世界や日本におけるザリガニの分布、歴史の中のザリガニ、その生態と生活史、環境から見たザリガニについて、わかりやすく読みやすくまとめた本です。
興味深い話が満載です。
・世界には多くの種類が生息していますが、日本ではニホン・アメリカ・ウチダの3種。本州(特に関東以南)で見られるのは、ほぼアメリカザリガニです。
・ザリガニの体内に形成される「胃石」と呼ばれる錠剤様の結石は、江戸期には薬と目されていました。これは脱皮の際に不足するカルシウムをあらかじめ体内にためておくしくみであるようです。残念ながら薬効成分はありません。
・江戸期の図版や標本も掲載されています。中でも興味を惹かれるのが栗本瑞見の『千蟲譜』。美しい絵でザリガニ以外の記述も楽しそう。それにしてもザリガニって虫なんですかね(ヘビも長虫とか言うしな・・・)。
古い標本には「砂利蟹」とラベルのあるものがあります。「じゃりがに」も「ざりがに」の語源の1つの説ではあるようです。
・ザリガニの体色は一般的には赤ですが、餌次第で青や白のザリガニが得られるとのこと。赤い体のザリガニに白い足を移植したらどうなるか、なんて研究も紹介されています(ちなみに足は赤くなります)。
・後頭部には「平衡胞」と呼ばれるくぼみがあり、ここに小砂利を入れてバランスを取っているのだそうです。脱皮するとこの石がなくなるため、平衡感覚が崩れます。石を入れれば元に戻ります。脱皮直後のうちの母ザリがひっくり返っていたのはこのせいだったのかー。
日本におけるアメリカザリガニはそもそも、ウシガエルの餌として鎌倉に導入されたわずか20匹が始まりだそうで、繁殖の果て、全国に広まったのだそうです。
繁殖力が非常に強いことがバッドニュースだとすれば、グッドニュースは、最終的には「食べられる」ことでしょうか・・・。アメリカザリガニの故郷ルイジアナではゆでザリガニが郷土料理として知られるそうです(写真もありました。ナカナカ壮観です)。大正天皇即位の際も供された(こちらはニホンザリガニですが)そうなので、それなりにおいしいのではないかと思います。
また、稚ガニ時代の共食いは非常に激しいとのこと。100を超えていたわが家のチビザリたちも二桁台まで落ちました。稚エビを生き残らせる手段については書かれていますが、稚エビが「残りすぎた」場合はどうするかといった話はないので、数匹で落ち着くのが一般的なのかもしれません。100匹成体になったらどうしようかなーとちょっと思っていたので、ちょっとだけ安心。
このまま飼育して、増えすぎたら食べればいいのだ!?と腹が据わりました。
ザリガニは意外とアマチュア研究者が多いそうです。筆者も研究職ではあるのですが、専門は別にあり、ザリガニに関しては「日曜研究家」だとのこと。
愛好家による国際大会やウェブサイトの紹介もあり、ザリガニワールド、なかなか楽しそうです。 -
日本に分布するザリガニ3種についてザリガニの在野研究で博士を取得した著者が、歴史、形態、生態などについて易しい文章で書いている。1時間ほどで読み切れるため、若年層にとってザリガニという生き物を知るのに良い書籍だと思う。
しかし、私は5章にはあまり賛同できない。本章では放流による生態系への影響に触れつつも、身近な環境体験の教材としてのアメリカザリガニ採りを推奨している。本種が多くの人を惹きつける魅力的な生き物であること、足元の環境問題の切り口の1つになることは間違いない。
昨今のバラエティ番組などでの外来種問題の取り上げ方を見ると、外来種という悪を倒すような過激な方向へ向いているように思う。本書で書かれているように小学生から高校生までの教育が丁寧に綿々と続くのであれば問題がないが、なぜ外来種が生態系に影響を及ぼすのかを過激にならず説ける人材は現在でも少ないと思う(条件付特定外来生物の指定に際して環境省などが分かりやすい情報を載せてるが)。
もし、改訂があるのであれば外来種への影響やどのように関わっていくべきなのかを加筆がほしいところである。
-
あとがきが一番刺激となった。自分も頑張ろう!
-
子供の頃、よくザリガニとってました。
アメリカザリガニは外来種で、日本にはそれとは別に在来種もいるというのは知っていました。赤いのがアメリカザリガニで、あまり赤くなくって、はさみが小さいのが在来種だと思っていましたが、なんと、在来種のニホンザリガニは北海道と青森などごく一部にしかいないんだとか。じゃ昔在来種かと思っていたヤツもすべてアメリカザリガニだったんですね。何と、、、
ザリガニ自体はよく知っていますが、その生態などは実はあまり知りませんでした。その辺が詳しく書かれていて、面白くて楽しい本でした。 -
ザリガニの歴史的背景や種ごとの特徴を知ることのできる本。環境ワークショップ運営のために読みました。
-
ニホン,アメリカ,ウチダザリガニの生態,生活環から環境教育のためのザリガニ採りのススメまで。
支笏湖に潜ってウチダザリガニを捕まえる前にこれを読んでいれば(買ってはあったのに)……! -
ザリガニなんてたくさん種類があると思ったら、日本では3種類で、なおかつそのほとんどがアメリカザリガニ。ニホンザリガニなんて東北北海道の一部にしかいないから、子どものころに見たあの赤くないのはニホンザリガニじゃなかったようだ。
-
単純にアメリカザリガニが日本在来種を駆逐したという単純な図式ではなく、しっかり生きのびていた日本ザリガニ。ザリガニの胃石が江戸時代の薬だったり、青いザリガニの謎など、ニッチなザリガニ知識がたっぷりでした。
-
ザリガニには、あまり興味はなかったのですが、楽しく読めました。
-
ニホンザリガニを見たことがありません。北海道と東北北部のごく一部にしか生息していないそうです。冷たくて水のきれいな川の上流に、広葉樹の落ち葉が必要。かつてはのんびりと暮らしていける場所が多かったのでしょう。繁殖力が弱いそうです。ニホンミツバチ、ニホンジン、「ニホン」とつくものは繊細で競争力に乏しいような。生き物にとってはいい島だったのよね。かつてはね。
著者プロフィール
川井唯史の作品
