- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000296052
作品紹介・あらすじ
関節リウマチなど不治といわれた病に効く、日本で生まれ世界に広がる夢の薬。それは何故どのように生まれたか。なぜ抗体医薬なのか、なぜ産学連携の道なのか、発明者自らが語る真実。
感想・レビュー・書評
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<国産初の抗体医薬品が生まれるまでのジグザグの道>
アクテムラ(物質名:トリシズマブ)は関節リウマチ等に効果を示す薬品である。日本で開発された抗体医薬品としては第一号になる。中外製薬が開発に当たった。
抗体は、抗原に対して免疫系が作り出すものであり、標的に対して高い特異性を示すことが利点である。この抗体を利用した抗体医薬品は、特異性が高いために副作用が低いと期待されるが、大量投与する必要があるため、産生に掛かる費用が多額となることや、種特異性の高さから動物実験を組むのが困難であることなどの難点もある。
本書は、炎症に関与するインターロイキン6(IL-6)を標的とするアクテムラがどのように開発され、どのような経緯で関節リウマチ薬として承認されたかを、研究開発者の視点から語っている。
その道筋は紆余曲折。
自己免疫疾患の作用機序はどのようなものか。
原因物質として何を標的とするか。
候補物質としてどのような種類の物質を探索するか。
免疫系の研究の進展とともに、著者や共同研究者の方向性も変わり、最終的に炎症性サイトカインの1つであるIL-6に対する抗体医薬品にたどり着く。
その間には、大学との共同研究、世界的大製薬企業の傘下への参入などがあり、いずれも結果的にプラスと働いた。
いささか専門用語が多いので、畑違いの人が読むのはやや困難かもしれない。用語の解説がある部分はわかりやすく丁寧だが、用語の取り上げにムラがあるし、索引もない。免疫や免疫周辺の分子生物学を多少知っていないと、この本だけで理解するのはちょっと難しいように思う。
将来研究者を目指す学生が主な想定読者のようである。
研究開発内部から、ジグザグの道のりを描き出した本書は、一度や二度うまくいかなくてもこういう風にゴールにたどり着くこともあるという一例として、若い人を力づけるものでもあろう。
*著者による産学官ジャーナル記事。
http://sangakukan.jp/journal//journal_contents/2013/04/articles/1304-02-3/1304-02-3_article.html
本書の内容にほぼ沿っているようだ。
*もっと柔らかく、ざっくりと抗体医薬品を解説した中外製薬による抗体医薬品についての解説ページ。
http://chugai-pharm.info/hc/ss/bio/antibody/index.html
「幸田井(こうたい)ワカル」先生(^^;)がアニメーションで楽しく解説してくれます。
*IL-6に対する低分子阻害剤が見つからない理由として、IL-6とIL-6受容体の間の結合面積が広いという話はおもしろかった。なるほど、広い範囲を低分子でカバーするのは難しいだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本初の本格的交代医薬品の成り立ちを当事者が述べる。30年前から、立ち消えになりそうになりながらも、実証の裏付けを持つ大阪大学との協業を背景に、中外製薬のエポジン導入の成功の後にバイオ医薬の知見を得て、本格開発に乗り出し、成功させる。
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【由来】
・図書館の岩波アラートで
【期待したもの】
・関節リウマチなど、自己免疫疾患の治療薬アクテムラ。なぜ化学製剤でなく抗体なのか。
【要約】
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【ノート】
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リウマチにB細胞を抑える薬剤とIL6を抑える薬剤のどちらが効果的であるかが良く分からない。
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配置場所:摂枚普通図書
請求記号:499.1||O
資料ID:95130514 -
生物学的製剤は薬価が高いけれど、それでなくてはならない理由があることがわかった。リューマチも寛解に持ち込めることもわかった。
バブルの時代があったからこそ、企業も研究に時間と費用をかけることができた。最近は何でも5年で成果を出せという風潮だが基礎研究にはなじまないと思った。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:499.1//O79
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難しかったけど、勉強になりました。
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研究者としての姿勢、病因基礎研究の重要性、病因上流の標的分子を叩かなければ高い効果は望めない、産学連携の必要性、etc… 真摯で謙虚で誠実な人柄が伝わる文章。