脳に刻まれたモラルの起源――人はなぜ善を求めるのか (岩波科学ライブラリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296090

作品紹介・あらすじ

モラル、いわゆる道徳とか倫理というと、人間に固有の客観的な理性に基づく判断だと考えられ、主観的で情動的な判断と区別される。しかし、最近の脳科学や進化心理学の研究によれば、モラルは、人類が進化的に獲得したものであり、むしろ生得的な認知能力に由来するという。脳自身が望ましいと思う社会は何かを明らかにした本。

感想・レビュー・書評

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  • たとえば何かの主義主張を持ったり、倫理的判断をしたり、たとえば人に共感しやすいとか幸福感を持ったりなど、あくまで自分自身による、人それぞれの主観的な判断に基づくものと考えるだろう。
    しかし、最近の脳科学の研究によって、「金銭的な損得勘定では割り切れない倫理観や道徳感情が、生物学的進化の結果として人間の脳と遺伝子に組み込まれている」ことが明らかになったのだという。
    政治的信条とか、他者への信頼や共感など、ある程度どのような傾向があるか、生まれつきの脳の構造の違いで判断できるのだそうだ。
    もちろん、その後の生育環境に60パーセントくらいは影響を受けるというが、3歳頃の性格から、ある程度20年後の政治的性向が予測できるという研究結果もあるというから驚きだ。

    何が人を幸せにするかという調査では、自分の属する社会において、信頼関係のあるつながりをもつこと、困ったときに相談できる人がいること、などが、経済的利益を上げるよりも結局は個人個人の幸福感を高めるという結果が紹介されており、このあたりは自明のことで納得だ。
    しかし、その幸福感をより強く感じやすい人そうでない人、他者との関係をつくるソーシャルスキルの得手不得手など、その人の生来持っている脳の遺伝的構造も関連してくるとなれば、子どもの社会的能力をあげることが、彼らの未来を幸福なものにするのに繋がる一つの方法であるといえる。

    子どものころは親の庇護のもとに愛情を受けて育ち、学校という小さな社会で社会的訓練を受け、成長してからは働くということで経済的利益を上げるとともに、一緒に働く仲間とのつながりのなかで幸せを感じながら生きる。
    こう書いていくと、脳科学云々は別にして、なんだか当たり前のことが一番幸せなのかもな、などと思ったりして。

  • よくまとまったいい本ではあるが、哲学と科学の相互交渉、相互連絡を主張するのであれば、いただけない記述も多かった。

    「哲学用語はやたらと『〜主義』という言葉を使って、もったいぶった感じがして困る」(15頁)

    〜主義という言葉は、-ismという英語にシステマティックに対応しており、何らかの思想的立場を表すシグナルとして機能している。
    専門用語が存在することにはそれなりの意義があるということを、同じ専門家として、脳科学や心理学と、哲学とは分かり合えてもいいはずなのに。
    筆者は哲学を侮っているとしか思えない。

    こういう、科学者による無意味なマウンティングに生産性があるとは思えない。
    それを言えば、同じ論法で筆者や脳科学を批判することができてしまう。
    「本書で筆者が紹介する脳科学の用語はカタカナばかりであって、日本語で記す意味がよくわからないし、ルー大柴かよ!わかりにくい!もったいぶった感じがする!」みたいに批判されても、唯々諾々と筆者は受け入れるのだろうか?

    こういう無意味な文書を、啓蒙書に挟み込む程度の研究者とは思っていなかった。
    金井さんの論文はいくつか読んだことがあり、刺激も受けたが、その研究者としての交渉の姿勢には失望した。

  •  道徳や倫理の分野と科学の橋渡しが可能になる時代となりました。まだ、研究は始まったばかりといった手ごたえですが、人の感じ方の違いへの新しいアプローチが可能になるはずです。

  • 信頼や互恵、幸福、評判、倫理など、いまの実験社会科学研究において重要なテーマを網羅しつつ、かつ最新の神経科学的研究までもカバー。学部ゼミのテキストとして読むとよいかもしれない。よい導入本の1つといえる。

  • 【目次】
    1 善悪という主観の脳科学 001
     なぜ脳科学か
     倫理の科学
     [コラム]科学と哲学の分離

    2 五つ倫理基準 013
     倫理学の用語入門
     モラルジレンマ
     道徳判断における感情の役割
     モラルファンデーション理論
     脳のなかのモラルファンデーション

    3 政治の脳科学 029
     政治的性向を決める心理的要因
     政治的信条とモラルファンデーションの関係
     政治的信条と幸福度
     政治的信条と相関する脳構造
     政治的信条はどこまで生得的に決まっているのか

    4 信頼と共感の脳科学 043
     信頼の測り方
     信頼を高めるホルモン――オキシトシン
     オキシトシンのダークサイド
     身体的接触の効用
     信頼の遺伝子
     幼年期の経験と信頼
     共感の種類
     共感の脳内機構

    5 評判を気にする脳 067
     負の互恵性
     評判の起源
     評判の成立条件
     評判に対する脳の反応
     眼の効用

    6 幸福の脳科学 081
     何が人を幸せにするか
     ソーシャルキャピタル
     友だちが多い人の脳
     サルのソーシャルネットワーク
     ソーシャルキャピタルの欠如としての孤独
     孤独感の生得的基盤
     幸福の二つの側面
     生きがいを感じる脳
     人それぞれの幸福

    おわりに――脳が活かされる社会へ 107


    参考文献 (-07~-14)

     《付録》
    モラル・ファンデーションズ・クエスチョネア(MFQ30)
    対人性反応性指標:interpersonal reactivity index(IRI)

  • 外見的特徴というのは視認性が高いのでその差異が了解され易いが、脳の特徴とその差異となると、見落としてしまう人も多いと思う

  • 「倫理観」や「道徳感情」といった人間のもつ感性がどこから生じるのか、なぜそういう感性をもつのか。現代の脳科学や心理学によって明らかになったこと。OPAC → http://t.co/OSSNCHMtwt

  • 脳は無意識のうちに自分の行動を決めている。



    オキシトシンは愛や絆を強め他人を信頼し、ストレスや不安を軽減するホルモン。ハグで増える。幸福は収入とは無関係。幸福度は日本以外ではU字型カーブ(若い時は幸福、30代後半〜50代に低下、その後上昇)だが、日本人だけは若い時からどんどん下がり続け老後の再上昇がない。「困った時に相談できる友人がいるか?」「信頼できる集団に属しているか?」これらが幸せの要因。多様な友達と交流の機会を増やすことで、社会性の脳機能を発達させることが出来る。

  • 系推薦図書 3系(情報・知能工学系)
    【配架場所】図・3F開架 
    【請求記号】491.371||KA

    【OPACへのリンク】

      https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=157859

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