- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000296205
作品紹介・あらすじ
キリンの斑模様は何かの割れ目と考えることができるのではないか。そんな論説を物理学者が雑誌『科学』に寄稿したことに生物学者が危険な発想と反論したことから始まった有名な論争の顛末は?現在の科学から論争の意味と意義を考える。主導的な役割を果たした寺田寅彦の科学者としての視点の斬新さ・先駆性が浮かび上がる。
感想・レビュー・書評
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借り物。寺田寅彦の名前に反応。
「読めた」とは言えないが、面白かった!
寺田寅彦の弟子である平田森三が、キリンの斑模様と粘土の表面に出来るひび割れ模様が似ていると指摘したことから論争は始まる。
動物学者の反撃。
(生物はそんな簡単なものじゃねーよ)
「平田氏の如き態度が時にきわめて危険なることがある」ばーん!
平田森三の反撃。
(ツッコみどころ、そこじゃねーだろ)
「これは何か印刷の間違いなのであろうと思う。」ぶさーっ。
からの、寺田寅彦。
「そう急いで否定するには当たらないものであろうかと思われる」
このお父さん的視点を持つ寺田寅彦の感覚の鋭さが、後半では強調されている。
また、斑論争についてもチューリングパターンを含め、現代における論文まで抑えられており、まとめとしての近藤滋氏の論は非常に分かりやすい。
とはいえ、生物学とも物理学ともおよそ縁遠い私が読むには「?」が頻出したけれど。
なので参考にならないレビューをだらだらと書いて、申し訳ない。
コンピュータの発展に伴い、実験の見通しは良くなったわけだが、それはあくまで解く方法であって、問う方法ではないのだと筆者は述べている。
確か数学者•岡潔氏も、問うことの重要性を説いていたことを思い出した。
そうして、その問い方を取り上げると、寺田寅彦の目は、そして彼等のグループが持っていた目は、面白い。
……と感じさせられる一冊であった。
問いとは、決して生活から離れたところにある神のようなものではないのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
キリンの斑点は要するに「ひび割れ」ではないか、という物理学者平田森三の仮説に、生物学者が噛みついたことをきっかけに起きるキリンの斑論争。結局ひび割れなのかそうではないのかはよくわからないのだが、科学的な議論とは関係のない「言い合い」になるところも含めて、なかなかおもしろかった。ぼくとしてはひび割れ仮説は面白いと思うので、ちゃんと反論してほしいところだが。
途中から平田森三の師にあたる寺田寅彦が参戦。参戦といっても一方的に平田の肩を持つわけではないが。夏目漱石の弟子でもあり、尺八や線香花火、猫の毛皮の斑点の研究をしていた文人科学者寺田寅彦のものの考え方はとてもおもしろい。寺田といい、平田といい、友達になれたら楽しいだろうな。 -
キリンの体のまだら模様は胎児期に皮膚が裂けて(?)できたものではないか、という、今考えれば謎の理論とその反論のお話しです。時代は 1933 年と言うのので、昭和 8 年の話しです。何と昭和 8 年!
今の感覚でいうと、そんな事は有り得ないように思えますが、でも、「有り得ない」と思われていたことが後で真実だと判明することもあるので、何事も冷静に、科学的視点で論理適に(←重要)判断することが重要ですね。
しかしそれでは、動物の体の模様はどうやってできるのか、そのメカニズムを説明する理論はまだないのですか? この辺の話しは第二部で出てきますが、今後の課題なのかも。
第2部の風紋の話しで、解決不能と思われる事象が出てきたときの対処として、
1.あきらめて別の解決できそうなものに取り組む
2.完全に解決することはあきらめ、できるところだけ解決することに取り組む
の2種類が挙げられています。解決不能と思われることは、そのように認識して、「一度あきらめる」というところが面白いですね。
キリンの体のまだら模様はまだ「1」なのかも。 -
物理的な話がたくさん出てきて、とても難しかった。キリンの斑のでき方を知りたいという論文に、当時の生物学者は見当違いの反論を市、大分腹が立っていたようだ。
チューリング波は生物的には成長すると模様が動く or 増えるということか。 -
キリンの体の文様が、どのように作られたのかを論争したことをネタに、今につながる科学の考え方を示す。
その根本的な考え方の部分に、寺田寅彦の強い影響があり、かつあの時代に今で言う複雑系に興味を示していた寺田の凄みを感じる。 -
6月新着
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勉強になりました。
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物理の素養がないので難し過ぎた。
が、話題の展開やその後の科学との繋がりなど、興味深いものもあった。
もっと関連書籍読んでから再挑戦したい。