ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待 (岩波科学ライブラリー)

著者 : 齋藤亜矢
  • 岩波書店 (2014年2月5日発売)
3.48
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  • 本棚登録 :105
  • レビュー :17
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296212

作品紹介・あらすじ

ヒトの子どもは円と円を組み合わせて顔を描く。でもDNAの違いわずか1.2%のチンパンジーにはそれができない。両者の比較からわかってきた面白いこととは?キーワードは「想像」と「創造」。旧石器時代の洞窟壁画を出発点に、脳の機能や言語の獲得など、進化と発達の視点から考察する。芸術と科学の行き来を楽しみながら、ヒトとは何かを考えよう。

ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待 (岩波科学ライブラリー)の感想・レビュー・書評

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  • 私は絵が下手である。
    それも結構なレベルの下手さである。
    普段はほとんど小説しか読まない私がこの本を手に取ったのは、絵を描くというのは人間に先天的に備わった機能ではない、と言われたかったからだったりする。
    ある人もいればない人もいる。
    私にはその機能がまるっとないタイプなのだ、だからしょうがない。
    そう思いたかったのだけれど、この本にはそんな私の浅はかな言い訳などをはるかに越えた話が書かれていて、大変面白かった。
    チンパンジーとの比較で、人間にとっての描くということ、更には認識の核にあるものなどを探っていく。
    文章もわかりやすく、科学的な話の苦手な私にも容易についていけた。
    幾つか、面白かった部分を抜き書きしたい。

    「わたしたちは言語をもったことによって、目に入るものをつねにカテゴリー化し「何か」として見ようとする記号的な見方をしている。つまり目に入るものをそのまま認識しているつもりでも、無意識に言語のフィルターを通して世界を見ているのだ。」

    「必要のあるものだけに目を向け、それを記号化してしまう。いわば本のあらすじだけを読んでいるようなわたしたちに、子どものときのように世界を新鮮に見せてくれる。それがアートを鑑賞するときの心の作用であり、おもしろさではないかという気がしてくる。」

    言語の功罪、美術のあり方。
    そんなものまで考えさせられる、良書だった。

    しかし書かれていたことを元に自分を省みると、一般的な人間が描く「記号的な絵」のために必要な、対象を記号として捉える機能が私にはまず欠けている気がする。
    どの部分を描けばその対象だとわかってもらえる、というその「部分」がわからないのだ。
    かといって、チンパンジーが描く「写実的な絵」が描けるわけでもなく。
    うううーん、私の絵は一体何の絵なんだ。
    早く人間か何かになりたーい!

  • 人間が生きていく上で、絵は描けても描けなくても良いものだが、何故人間は絵を描くのだろう?私自身もずっと考えていたテーマ。写真で事足りるのに何故?子供は何を認知して描いているの?この本を読んで少し見えてくる事もあった。

    絵は言語を使わないで表現できるツールでありながら、その背景は言語と無関係ではない。
    今ここにないものをイメージして補うという認知的特性…想像する力、見たものを描くのではなく、知っているものを描く。(子供の絵を描く行為)
    見たものを頭の中でカテゴリー化し、シンボルに置き換えていくと、情報として記憶から取り出したり他者に伝えることが容易になる。
    私達は言語を持った事で目に入るものを無意識に言語のフィルターを通して世界を見るようになった。
    ヒトの子供の「ふり遊び」「見立て遊び」など動作を介した想像力も言語が急速に発達する時期と一致。
    チンパンジーは細部、部分に惹きつけられ、ヒトは細部よりも全体で捉える傾向がある。サヴァン症候群は芸術家多い。
    言語能力は描く為に必要か、邪魔なのか?記号的な絵と写実的な絵の違い。
    子供の描く絵は記号的。写実的な絵を描くには記号的な見方を抑制して直感的な物の見方を身につける認知的な訓練がいる。

    アートとは新しい何かに出会わせてくれたり、すでに持っていた何かの概念(スキーマ)拡張したり、壊して作り変えたりする。何かを拒否する事で私達の記憶や情動を掘り起こしたり不安定なままにし、心をざわつかせるもの。

  • 著者:齋藤亜矢

    【書誌情報】
    刊行日:2014/02/04 
    9784000296212
    B6 120ページ 在庫あり

    円と円を組み合わせて顔を描くヒトの子どもvsそれができないチンパンジー.DNAの違いわずか1.2%の両者の比較から面白いことがわかってきた.ヒトとは何か? 旧石器時代の洞窟壁画を訪ね,想像と創造をキーワードに脳の機能や言語の獲得から考察する.芸術と科学の行き来を楽しみながら考えよう.【資料図満載,カラー口絵1丁】

    ■編集部からのメッセージ
     新進気鋭の研究者による「ヒトとは何か?」に迫る本の登場です!

     著者は,京都大学の理学部,医学研究科を経て,博士課程から東京藝術大学に飛び込んだ「変わり種」.専門を問われれば,自らの造語により本書の副題にもある「芸術認知科学」と答えるのだそうです.現在,京都大学野生動物研究センター特定助教として,熊本サンクチュアリーでチンパンジーたちと共同研究の毎日を過ごしています.

     本書のキーワードは想像と創造.ヒトの子どもとチンパンジーの行動観察を通して,芸術と科学の行き来を楽しみます.たとえばヒトの子どもは円と円を組み合わせてアンパンマンなどの顔を描きますが,チンパンジーにはそれができません.DNAの違いはわずか1.2%なのに…….
     本書は,ヒトが絵を描いた最古の痕跡――旧石器時代の洞窟壁画――にインスピレーションを受ける話から始まります.ヒトにとっては普遍的ともいえる「描く」という行為は,生存や繁殖と結びつきません.なのになぜ,ヒトは描くこと,描かれたものに魅了されるのでしょうか.この問いに,子どもの描画の発達という個体発生的な軸と,それをチンパンジーの描画行動と比較する系統発生的な軸からアプローチし,脳の機能や言語の獲得という観点から説明しようと試みます.
     そのためのヒトの子どもとチンパンジーの比較・観察ですが……,はてさて,そこから何が見えてきたでしょう.それは読んでのお楽しみ.資料図満載,カラー口絵付き.著者の個人的なエピソードを交えながら,やさしい筆づかいで,一気に読まされること間違いなしです.


    【目次】
    口絵
    目次 [iii-v]

    プロローグ 洞窟壁画を訪れる 001

    1 描く心の起源を探る旅の出発点 005
    クロマニョン人たちの絵筆/ヒトが絵を描き始めたころ/個体発生と系統発生の二つの視点

    2 ヒトの子どもとチンパンジー 015
    なぐり描きから表象へ/チンパンジーに絵筆/表象は描かない/シンボルを学習し,描かれた表象を理解するチンパンジー/チンパンジーはなぜ表象を描かないのか/チンパンジーの筆さばき/画竜点睛をかく/あいまいな形に具体的なモノのイメージを見立てて描く/洞窟壁画につながる

    3 「ない」ものをイメージする力 039
    石器製作や狩猟技術で磨かれた「イメージする力」/言語の獲得とイメージ/チンパンジーの子どもは,ヒトより記憶力がいい?/チンパンジーたちのモノの見方/木を見て森を見るヒト/動作を介した想像力/今を生きるチンパンジー/記号的な絵と写実的な絵/さかさまに描く子/さかさネコ耳図形に描く/見たモノでなく,知っているモノを描く

    4 なぜ描くのか 071
    ヒトはなぜ描くのか/描くことが「おもしろい」?/身体的な探索と内的なルール/イメージを外化するおもしろさ/イメージを共有する喜び/イメージと神話

    5 想像する芸術 087
    世界の見え方が変わる/概念を拡張するアート/概念をくつがえすアート/概念を拒絶するアート/想像から創造へ

    エピローグ 芸術と科学の間で 105

    謝辞(2013年11月 齋藤亜矢)[109-110]
    参考文献 [1-2]

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB14721511

  • チンパンジーに絵を描かせる実験を足がかりに、表題の疑問に迫る。幼稚園の頃、自分も描いた記憶がある顔から手足が伸びた人間の絵(頭足人と言うらしい)の例が出されていて、懐かしくなった。この頃から自分の絵描き能力は、大した進化をしていない。

  • 描画を切り口とした比較認知研究。絵を表象として描けるかどうかは言語獲得と関連している。言語獲得前,言語運用に障害があると,写真そのままのように(つまり表象化せず)覚えてい(られ)る。さすが科博認定サイエンスコミュニケータ,文章も読みやすい,というのは内輪の欲目か?なーんて。

  • 子供の頃には同じキャラクターをいくつも描いたり、様々な色のペンで模様を描いたり、今思い返してみると何が面白かったんだろうと思うような事がたくさんありました。あれらも脳や認知の発達に必要な過程だったということでしょうか。ヒトとチンパンジーの比較(絵を補間する能力など)の話題も面白かったです。

  • 7月新着
    芸術認知科学、というと堅苦しいが、まずは読んでみて!洞窟壁画やチンパンジーの絵などを起点にどんどん話が展開する! 本文中で紹介される京大の霊長類研究所のサイトも面白かった。チンパンジーのアイちゃん大活躍。

  • クロマニョン人が絵を描いていたが、そこに筆者が注目していることは今ここに「ない」ものを描いていることだが、私が思うに、ヒトの「ない」ものを想像することは、後にヒトの「形而上学」を成立する萌芽が隠されているのではないかと、深読みしてしまいますが、いかがなものなのでしょうか。今ここに「ない」ものを想起するヒトの宿命みたいなものを感じないではいられません。今後もよく考えなければならない課題です。

    5章「想像する芸術」では、概念を拒否するアートを主題に展開されているが、子どもは、概念から逸脱した絵を大人とは違って自由に描くことを主張している。概念や言葉の手前のイメージを想像する奔放さの可能性を指摘。わたしは、言葉によらないアートの特徴を今回改めて考えされられた。

    以上のことから、絵画は、「形而上学」からとらえた絵として、また概念を拒否するアートとして成立していることに改めて考えさせられた。

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